第7話: 王都の新生活と、初めての“友達”
王都の東区、ギルドが用意してくれた「保護獣用住居」に俺たちは住み始めた。
石造りの広大な庭付きで、屋根には「バジリスク注意」じゃなく「ようこそおれさん」の看板。
……照れるな、これ。
朝。
俺は庭の中央で日向ぼっこ。
リナは俺の背中で寝転がり、空に向かって手を広げる。
「気持ちいいね、おれさん! 風が優しいよ。」
「……ゴロゴロ」
俺は尻尾で地面に【最高】と書く。
リナが指でなぞって笑う。
「最高か! 私も同感!」
すると、門がガチャリと開く。
小さな影が三つ、恐る恐る入ってくる。
「ほ、本当にバジリスクが住んでる……!」
「でも、石化しないってギルドが言ってたよね?」
「話してみたい!」
王都の子どもたちだ。
リナがぱっと起き上がる。
「いらっしゃい! おれさんの友達、募集中だよ!」
子どもたちが俺の周りをぐるぐる回る。
「でっかい!」
「鱗キラキラしてる!」
「触ってもいい?」
俺はゆっくり頭を下げる。
子どもたちが恐る恐る鱗に手を伸ばす。
「冷たくてツルツル!」
「気持ちいいー!」
一人の男の子が俺の顔をまじまじ見て言う。
「おれさん、目が優しいね。」
リナがくすっと笑う。
「でしょ? 私もそう思う!」
……俺の目が優しい?
人間だった頃は「死んだ魚の目」って言われてたのに。
午後。
子どもたちが持ってきたおもちゃ(木のボール)で遊ぶことになった。
俺が尻尾で軽くボールを弾くと、子どもたちがキャーキャー喜ぶ。
「すごい! おれさんパス上手い!」
「次は私に!」
リナも一緒に走り回る。
俺がゴロゴロ鳴くと、彼女は正確にボールの方向へ。
「こっちだね!」
……完全に俺がナビしてるけど、誰も気づいてない。
夕方。
子どもたちが帰る時、男の子が俺の鼻先に小さな花冠を置いた。
「おれさん、ありがとう! また明日来るね!」
門が閉まり、静かになる。
リナが花冠を指で触って微笑む。
「おれさん……友達、できたね。」
俺は尻尾で地面に大きく書く。
【俺 初めて 友達】
リナが俺の鱗に頰を寄せる。
「私もだよ。」
夜。
王都の空に花火が上がる。
祭りの準備らしい。
俺とリナは屋根に這い上がり、花火を見上げる。
リナは目が見えないけど、音と風と俺の気配で楽しそうに笑う。
「おれさん、花火ってどんな形?」
俺は尻尾で地面に描く。
大きな丸。
真ん中にハート。
リナが指でなぞって、ぱっと笑う。
「きれい……! 私にも見えた気がする。」
……俺の目を通じて、少しだけ世界を共有できたのかな。
花火が終わると、リナがぽつりと言った。
「でも……まだ、世界のどこかで、おれさんを怖がってる人がいるよね。」
俺は静かに頷く。
リナが俺の鱗を握る。
「だから……次の旅、行こう?」
「今度は、私がみんなに教えてあげる。おれさんが優しいって。」
俺は尻尾で地面に書く。
【行く】
【どこまでも】
リナが笑う。
「約束だよ、おれさん。」
——王都での穏やかな日々は、
新しい旅の準備期間に変わった。
俺はもう、危険じゃない。
でも、世界はまだ知らない。
だから、
俺とリナは、また旅立つ。
(つづく)




