第5話: 宿場の酒場と、噂の真実
【第2部 第5話 更新!】
バジリスクに転生したおれは、もはや危険じゃないらしい
でも、冒険者たちはまだ知らない
酒場大騒ぎ! ギルドが「保護対象」に指定!?
「石化しないバジリスク」の噂は、ついに公式に——
#ハイファンタジー #転生 #モンスター主人公 #コメディ #勘違い
街道を進み、俺とリナは宿場町に着いた。
木造の建物が立ち並び、酒場の看板が軋む。
夜の灯りが揺れ、酔っ払いの笑い声が漏れる。
……人間だった頃、会社の飲み会を思い出すな。
あの頃はビール1杯で満足だったのに。
リナは俺の背から降り、杖をついて歩く。
「ねぇ、おれさん……ここ、賑やかだね。」
「……(ゴロゴロ)」
俺は尻尾で地面に**【酒場】**と書く。
リナが笑う。
「酒場か! みんなに、おれさんのこと話そう!」
……おい、マジかよ。
酒場って、噂が一番広がる場所じゃねぇか。
俺たちは酒場の裏口からこっそり入る。
厨房の匂いが漂い、料理人のおっさんが驚く。
「お、おい! バジリスクが!?」
「逃げろ逃げろ!」
だが、リナが叫ぶ。
「待って! おれさんは危険じゃないよ!」
「石化もしないし、優しいの!」
料理人は俺を見て、目を丸くする。
「……石化しない?」
「確かに、俺の目を見てても平気だ……」
俺は視線を逸らし、何も固めない。
ただ、じっと耐える。
酒場の客たちが厨房に集まる。
「なんだなんだ?」
「バジリスクが少女を連れてるって噂の!」
「ほら、石化しないらしいぞ!」
……噂、もうここまで来てるのか。
リナがカウンターに立ち、声を張る。
「みんな、聞いて! おれさんは石化をコントロールできるの!」
「危険じゃないって、証明するよ!」
客たちはざわつく。
「ガキが何を言う。」
「でも、確かに石化してねぇ……」
「試してみるか?」
一人の酔っ払いが、俺に近づく。
「おい、怪物! 俺の目をじっと見ろ!」
……マジかよ。
俺は視線を合わせ、完全に力を抑える。
何も起こらない。
酔っ払いが笑う。
「ほら! 石化しねぇ!」
「こりゃ本物だ!」
他の客も試しに目を合わせる。
「……本当に、何もしねぇ!」
「伝説と違うぞ!」
リナが笑う。
「ほら! おれさん、無害だって!」
だが、その時——
「待て待て! ギルドの最新情報だ!」
酒場の扉が開き、冒険者ギルドの使者が入ってくる。
「バジリスクは石化を完全に制御! 無害と判断!」
「討伐依頼は取り消し! 代わりに、保護対象に指定!」
客たちがどよめく。
「保護対象!?」
「怪物が保護されるって!?」
「こりゃ歴史に残るぞ!」
料理人が俺に近づき、頭を下げる。
「すまねぇ、誤解してた。」
「酒、奢るよ! ……って、飲めるか?」
……飲めねぇよ。蛇だから。
でも、尻尾で**【感謝】**と書く。
リナが俺の鱗を撫でる。
「よかった……おれさん。」
……少し、進展したな。
でも、まだ冒険者ギルドの本部に行かなきゃ。
公式に、無害を証明する。
酒場の客たちが俺を取り囲み、質問攻め。
「なんで石化しなくなったんだ?」
「少女と旅してるって本当か?」
「名前は?」
俺は尻尾で地面に**【俺】**と書く。
リナが読み上げる。
「『おれ』さん!」
客たちが笑う。
「『おれ』!? 面白い名前だ!」
「よし、乾杯だ!」
……乾杯って、俺は飲めねぇけど。
夜が更け、酒場は大盛り上がり。
「石化しないバジリスク」の噂は、宿場中に広がる。
俺はリナを背に乗せ、酒場を後にする。
ギルドの本部へ、急ぐ。
リナが呟く。
「おれさん……みんな、わかってくれるよね?」
……わかってほしいな。
でも、噂が広がるってことは、チャンスでもある。
俺は尻尾で地面に文字を書く。
【本部 急ぐ】
リナが笑う。
「うん! 一緒に、証明しよう!」
——こうして、
噂と誤解が広がる旅は、続いていく。
(つづく)




