表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

無限図書館・第3話 本から抜け出した妖精

作者: 星野☆明美、chatGPT

無限図書館・第3話 本から抜け出した妖精


 静まり返った書架の間で、ふと一冊の童話本がぱらりと開いた。ページの隙間から光がこぼれ、そこから小さな羽音とともに妖精が飛び出す。


「やっと抜け出せた!」

 金色の髪を揺らしながら、妖精は両手を腰に当てて叫んだ。

「私、いつも脇役ばかりなのよ。森で迷子を助けたり、花びらを運んだり……地味すぎる!」


 その声に応えるように、ゆったりと足音が響く。姿を現したのは女性の館長だった。長いローブをまとい、柔らかな眼差しで妖精を見つめる。


「では、どんな役になりたいの?」

「決まってる! 戦うヒーローがいい!」


 妖精が叫んだ瞬間、近くにあった戦争の本がぶわっと開き、強烈な光に二人を飲み込んだ。



 気がつくと、そこは戦場だった。煙が立ち込め、叫び声と剣戟の音があたりに響き渡る。

 妖精は手にした剣を振り回し、「見てよ! 私だって戦える!」と胸を張った。


 しかしすぐに、彼女の目に飛び込んできたのは、倒れていく兵士たちの姿。焦げた匂い、涙に濡れた叫び。

 妖精の顔から血の気が引いた。


「これが……戦うってことなの?」

 震える声に、女性館長がそっと答える。

「戦いは栄光じゃない。多くを失う痛みのほうが大きいの」


 妖精は剣を落とし、両手で顔を覆った。

「もう嫌だ……私の物語に帰りたい……」



 光が再び二人を包み込み、気づけば無限図書館の書架に戻っていた。

 妖精は小さくため息をつき、恥ずかしそうに笑う。

「役回りは小さくても……平和な物語にいられるほうが幸せなんだね」


 女性館長は静かにうなずき、彼女を優しく本の中へと送り返した。

 童話本の表紙がぱたりと閉じ、再び書架に収まると、図書館には穏やかな静けさが戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ