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誰か忘れちゃいませんかってんだ

「ぼくら、何か忘れてる気がするんだけど」

「ああその通りだ。お前らは忘れているものがある。」


目の前のガウラくんに言ったはずなのに、後ろから声がする。振り返ると急に視界が黒くなった。


「俺のこと置いて行きやがって…俺にも食わせろ。」


とリンドウはコンロから大きめの肉が刺さった串を取って一口で頬張る。


「あー!それ僕が食べたかったやつ!ひどいよリンドウ!」

「うるせぇ、カルミアだけ連れてって俺のこと置いて行きやがったくせによォ。」

「リンドウはここのことわかるから良いじゃん!」


ぎゃぁぎゃぁ言い合っているうちにこっそりコンロの上から魚の串を取っていく。2人は言い合いに夢中で気付いていないようだ。バレる前に食べてしまおう、と一口齧ろうとしたときだった。


奥のテントから誰かが出てきた。それを見た次の瞬間、一瞬だけビュン、と強い風が吹いた。あまりの強さに思わず目を瞑る。


どうにか目を開けると、テントのところには誰もいなかった。気のせいだったかな、と二人の方を見ると、いつの間にか二人の間に一人の女性がいた。


灰色の毛の、犬の獣人だろうか。身体の毛よりちょっと濃い目の灰色の髪が風に揺られ、なびいている。


突然の乱入者のことを二人は知っていたようで、リンドウはうへぇ、と嫌そうな顔を、ガウラくんはぱぁ、と花が咲いたように嬉しそうな顔をする。


「うげ、アイリス」

「アイリスおねーちゃんだ!」


アイリスと呼ばれた乱入者は、ガウラくんを見て満面の笑みを浮かべ、続いてリンドウのことを、子を守る母親みたいに強い気持ちを込めてキッと睨んだ。


「ガウラきゅんおはよぉ♡…で?お前は私の可愛いガウラきゅんに何してるの?」


あまりの態度の豹変ぶりに、ぼくは魚の串を持ったまま固まってしまった。リンドウって嫌われてるのかな、後で慰めてあげよう。


流石のリンドウも2対1では分が悪かったようで、結局俺が悪かったと認めた。


「それで...そこの子は?」


魚を食べているのがばれないよう物陰に隠れていたのに、気づかれてしまっていたようだ。

魚を背中の後ろに隠しながら、物陰からそっと出る。


先程の様子を見て、怒らせてはいけない人だということを直感したので、慣れないながらも一応敬語を使って自己紹介する。


「はじめまして、カルミア、です。よろしくおねがいする、ます。」


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