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かいしんのいちげき

「ぐっふ…!?」


ぼくが放った一撃は、リンドウの大きい体を1メートルくらい吹き飛ばした。


「えっあれっ?」


「なんでお前が驚いてるんだよ」


「だってまさかこんな威力が出るなんて思ってなくて…」


「はぁ?」


だって、元々運動は得意な方じゃなかったし、筋トレだって全然やったことない。なのに2メートル近いリンドウを吹き飛ばすくらいの威力のパンチが出たらびっくりするでしょ。


なんで急にこんな力が出たんだろう、なんて考えていると、ガウラくんがこっちに走ってくる音が聞こえた。


「カルミアくーん!」


「わぁ!?」


振り返ったらもう目と鼻の先にいた。速すぎる、なんてことすら思う暇もなく抱きつかれる。体が傾いて倒れそうになったけど、砂まみれにはなりたくないから全力で踏ん張ってなんとか体勢を立て直す。


「危ないよ…」


「えへ、ごめんごめん!」


謝りながらも楽しそうに耳をぴょこぴょこさせている。こいつめ、頭をわしゃわしゃしてやる。


「うわわっ、やめてよ〜!」


なんか可愛いからわしゃわしゃはやめない。


「も〜〜、おかえしだ!」


わしゃわしゃ仕返される、と思ったけどガウラくんの手はぼくの後ろへ伸びる。そこには何も____



もふっ


「ふにゃぁ!?」


は?え?なに?なにされたの?


何もないはずの空間に伸びた手はがっしりと僕の後ろにある何かを掴んでいる。


お尻の方がなんかびりびりして、全身鳥肌がすごいことになってる。

どうやら掴まれている"何か"はぼくから生えているらしい。

恐る恐るお尻の方を見ると、黒くてふわふわで細長くて、そこにあるはずのないもの.......

尻尾があった。

もしかして、と頭を触る。本来耳があるはずの場所には、しかしふわふわとした感触があるだけだ。頭の上の方を触ってようやく耳を発見した。自分で見ることはできないけど、多分今のぼくは半分獣人みたいな感じなんだろう。


色々思うことはあるけどそれよりもまずは、


「はにゃして...」

「わわ、ごめんごめん」


離してもらった途端、腰が抜けちゃったみたいに立っていられなくなり、ぺたりと地面に座り込んでしまう。あーあ、結局砂まみれじゃん...怒られちゃうかな。

いやそれより気にすることがあるだろ。この尻尾と耳はなんで生えてきた?自由に動かせるのかな?

もう一度尻尾を確認するため後ろに目をやる。しかし、そこには砂まみれのズボンがあるだけだった。


「消えた...?」


さっきまで確かにそこにあったはず。ちゃんと触られている感覚もあったんだ。気のせいだった、なんてことはないだろ。


誰かの魔法だったのか?でもこんな魔法を使う人に心当たりはない。万が一いたとしても海岸は開けていて隠れる場所もないからすぐに見つけられるはず。なら、あのブローチに何か秘密があるんじゃないか?

ポケットからブローチを取り出す。しかし、くすんだ銀色は光を跳ね返すばかりで、何も変わりはなかった。小さくため息をつき、ポケットにしまい直す。


なんだかよくわからなくなってぐるぐる考えていると、不意にリンドウの声が耳に入る。


「さぁ、続きやるぞ」


「まだやるの...?」


「当たり前だ、今日はまだまだこれからだぜ。魔法も使っていい。2人まとめてかかってこい」


「へぇ、余裕だね」


「後悔しないでね!」


砂と困惑を払い落として立ち上がり、戦闘態勢に入る。きっとリンドウは本気で来る。でも、ぼくとガウラくんなら勝てるはず。


風に舞う木の葉が地面に落ちたのを合図に、魔法の光が辺りを塗りつぶした。


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