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第三章:連勝と歓声
この作品はノンフィクションです。
5月、誰も予想しなかったことが起こる。
カープが勝ち始めたのだ。
決して派手な野球ではない。送りバント、犠牲フライ、盗塁……地味なプレーの積み重ね。だが、それが得点に結びつき、勝利を呼び込んだ。
投手陣では、ベテランの外木場義郎が要となり、若手の北別府学が台頭してきた。守備でも三村敏之が身を投げ出して球を止め、勝利に貢献した。
広島市民球場には、次第に観客が戻ってきた。かつて閑散としていたスタンドに、赤い帽子がひしめく光景が広がった。
子どもたちが叫ぶ。「山本ー!」「衣笠ー! うてー!」
その声援は、選手たちの背中を押した。