冒険者パーティ、ただいま空中分解中
三話目です
男たちに、その国とやらに案内される。
四方向から囲まれながら移動している状況が少し癪に触るが、まだ、自分が危険人物の枠から出ない以上しょうがないなと納得する。
周りをよく観察しながら男たちについていく。
周りの草原や、森を見るとやはり自分のいた場所、世界ではないことを痛感させられた。
拓斗は歩きながらも情報収集、そして自分の疑いをはらそうと、コミュニケーションを取る。
「迷ってた俺が言うのもあれなんだが、あんたたちチームはこのフィールドで何をしていたんだ?化け物どもを狩ってたのか?」
「ああ、それが冒険者の仕事だ。初級だったら薬草探しやらだが、俺たちは、フィールドでの狩をゆるされたからな。」
「俺たちもちょっと前までは下積みばっかだったろうが。」
大柄の男が、得意げに話し、それを笑うようにもう一人の男が喋る。
拓斗は、その会話には耳を傾けない。
この世界でも化け物がいて、それを狩るための組織があるということ、それがわかるだけで、この会話の意味がなくなった。
どちらかと言うと、この世界の化け物が、どんな見た目をしていて、どんな能力を持っているのかの方が、興味があった。
階級についても、それなりに理解し、冒険者の組織についての情報も、探ろうと…
と、辺りを見ると、先ほどの荒野とは一転し、青々と茂った森のすぐ近くまで来ていた。
「おい、今から森に入るのか?」拓斗は森にはあまりいい思い出がない。
その思い出も、今や笑い話で終われるが、拓斗は、冒険者人生で培った感覚を忘れるほど、間抜けではない。
己の世界のダンジョン、第三ダンジョン深森部「グリースエンド」
初めての国連開拓で、死者、行方不明者、約5万を叩き出し、ダンジョンの恐ろしさを世界に刻んだ大規模ダンジョン
拓斗も、パーティメンバーと開拓に挑み、狩りをするときの環境の大切さを身をもって痛感した。
入り組んだ地形、じめっとした空気、そのせいでどこから襲われるかもわかりにくい。
自分の能力とあまりにも合わないのだ。
「ああそうだ、道に出るための最短ルートだしな。」
「なんだお前、森が怖いのか?あんな血まみれで、フィールドに寝そべってたくせに。」
大柄の男が、拓斗を小馬鹿にしたように笑う。
「あ?」
その悪党ズラに合うように、拓人は頭に血がのぼりやすい。
言葉を喋る前に、体が動くタイプだ。
だから、当然我慢できるはずもない。
「ぎゃっっ!」
大柄の男が、首を抑えてその場に倒れ込む。
そして、その前に、短剣を回してヘラヘラしている男
「ひひ、こうゆう事があるからだよ、バァーカ。安心しろよ、薄皮一枚で勘弁しといてやったから。」
「てめえ!」
大柄の男が、自分の獲物に手を伸ばす。
奴が攻撃した瞬間から奴は俺の"敵"だ。
敵は殺す。絶対殺す。障害物は蹴飛ばさねぇと。
拓斗はもうハイになっていた。付喪を、出した時点で拓人の頭は、その特有の興奮にやられていた。
大柄の男が大斧を持ち振りかぶろうとしたとき、パーティのリーダーらしき男が、割って入った。
「ジャズ、今のはお前が悪い。」
っ!大柄の男が動きを止める。それと同時に、拓人の動きも止まる。
大柄の男、ジャズが、少し間を置いて、武器を下ろす。
拓人の前に立った男は、それを確認して拓人と向き合う。
「うちのパーティメンバーがすまない。どうか許してやって欲しい。」
「ひひ、それは後ろの男次第だろ?」
そう言って、今にも暴れ出しそうな大柄の男に短剣の先を向ける。
「おい、お前マジでふざけ「ジャズ!」
ジャズをパーティリーダーが、制す
ジャズは、びくりとした後深呼吸をして、拓人の前に立つ
「すまなかった。」
ジャズが頭を下げる。まだ、肩をピクピク揺らしているから、本心ではないのだろう。
しかし、拓人はそれで終われるほどの聖人でもなかった。
「おーいジャズくーん、僕の故郷ではね、人に迷惑をかけたときは頭を地面につけて謝るのが常識なんだけど、頭の位置が高いんじゃないの?」
拓人が顔を近づけて囁く
ギリィ…奥歯が、噛み砕かれるような音がした
「すみませんでした。」
そこにあったのは、大の大人が土下座をするという光景
その場で唯一、ニヤニヤで笑っている一人の男
もう、あまりあってはいけない光景になっていた。
やっと満足したように、胸に短剣をしまう
「ところで、森の中を突っ切るのは反対なのかな?」
パーティリーダーであろう男が、声をかける。
「別にいいぜ、森の中に入るのに文句はねーし。」
そう言って拓人は男達と森の中に入る。
…………
今回のエピソードはいかがだったでしょうか?
主人公の拓斗くん「暴力的なコミュニケーションスタイル」ですが、あれでもだいぶ抑えてるんです。昔は「おはよう」で殴る男だったので(大嘘)
次のやつも考え中