選択肢:敵対・逃走・情報収集(ときどきボケ)
二話目です。
「……開拓者か?」
彼らは拓斗を見つけると警戒心を露わにし、武器を構えた。
「おい、そこのお前!どこの者だ!」
「……さあな。俺にも分からん。」
拓斗は軽く肩をすくめたが、男たちの視線は鋭いままだ。
「その格好……この近くの奴じゃないな…冒険者か?それに、その血まみれの剣……怪しいな。」
「はは、そう見えるか?」
拓斗は笑みを浮かべたが、頭の片隅で警戒を解かなかった。
いち早く町などに行って情報を得たいが…どこの世界でも信用を得るのは難しそうだ。
しかし、ここで敵対してしまうほど拓斗もバカではない。
「俺はただの迷い人だ。スマホの位置情報もうまく反応しなくてな。近くに国か町があるってんなら案内してくれないか?」
拓斗はポケットに手を入れ、電源がつかず機能が停止しているであろうスマホを取り出した。
しかし、男たちはそれを見て眉をひそめた。
「……なんだ、その板は?」
「マジかよ……スマホも知らねぇのか……」
これは想像以上に発展していない世界に来たのでは?と
拓斗は冷静に考える
このまま情報を聞き出してもいいが、一向に殺気を緩める気配がない相手
ただでさえゲームみたいな飛んでも展開で頭がショートしそうなのに…
拓斗はもう敵対する未来も視野に入れていた。
ポーン
突如スマホから音が鳴る
「アップデート…セイコウ」
次の瞬間スマホが拓斗の胸へと吸い込まれる
しかし、変化はそれだけではない
拓斗の目の前に文字が突如現れた
『選択…敵対関係の発生…逃げる or 戦う(戦えば余計に警戒されるが、力を示すこともできる。)
※逃げた場合、別の出会いが発生(孤児、商人、逃亡奴隷)。』
「わお…」
聞こえるのはさっきの機械音声
目の前の文字と頭に直接流れる機械音声、急に消えたスマホ、etc。
しかし拓斗は冷静に考える、その目の前にある文字の意味を
そしてすぐにひらめく。
拓斗は敵対することを考えるのをやめ、情報収集のことについて考える。
すると、目の前の文字が見る見るうちに変わっていく
『選択…異世界の情報収集…男たちと会話し、異世界の基礎知識を得る(国の情勢、通貨、職業)。
「ダンジョン」という概念があるか確認し、自分の元いた世界との違いを比較する。アーティファクト(付喪)がどこまで通じるかを探る。』
これはこれから先の経過を示す物
これがどういう経緯で現れたのかはわからない。
警戒するに越したことはないのだろう。
拓斗は、目の前の文字をじっくりと眺めながら、小さく息をついた。
「マジでゲームみたいな世界になっちまったな。」
現実離れした状況だが、今はこのシステムを受け入れるしかない。
拓斗は、男たちと敵対しないことを選んだ。
何より、それが選択肢の中で最も安全で有益な道であるように思えた。
男たちは依然として警戒を解いていない。
「……さて、どうするか。」
拓斗は、短剣を軽く回す。頭を回す。
そしてより多くの情報を得るために舌を回す。
「俺は本当に迷い人なんだが、ここがどこなのかも分からない。ここはどこなんだ?」
男たちは顔を見合わせ、一人がしぶしぶ答えた。
「ここは竜国、ドルディアラ竜国領だ。お前、本当にどこから来たんだ? そんなことも知らないなんて……。」
「ドルディアラ竜国……」
ドルディアラ?竜国?聞いたことのない名前だ。
当然といえば当然だが、それが異世界にいることの確定証拠とも言える。
「……俺のいた場所には『ダンジョン』があったんだが、こっちにもあるのか?」
「ダンジョン…フィールドや魔境のことを言ってんならあるが…」
「……お前、ほんとに何も知らないのか?今俺たちとお前がいる場所がフィールドだぞ?…おまえ冒険証は?」
男たちの視線がより鋭くなる。
どうやら「ダンジョン」なる言葉がこの世界にも存在しているらしい。
「あーそれな、なくしちまったみたいだ。」
フィールド?に入るために必要な証明証みたいなのがこっちにもあるってことか。
「……すくなくともこの場所で、そんな血まみれの剣を持った奴が一人でふらついてるなんて普通じゃねえ。お前、本当に何者だ?」
「言ったろ?俺はただの迷い人だって。だからそう睨むなよ。」
次に、拓斗は付喪について探りを入れてみる。
「そういや、お前らの世界には『アーティファクト』。ってもわかんねえか。特殊な武器とか防具の概念はあるのか?」
「……アーティファクト?」
男たちは戸惑いの表情を見せる。
やはり、『アーティファクト』という言葉自体は一般的ではないのかもしれない。
「アーティファクトってのが何かは知らんが、特殊な力を宿した武器ってんなら、『符刃』が近いかもしれないな。」
符刃。
それが、この世界での『アーティファクト』に相当するものなのだろうか?
「符刃ってのはどんなもんだ?」
「詳しくは分からん、上級、特級の連中が扱う特別な武器だろ。俺たちみたいな下級冒険者が手に入れることはまず不可能な代物だしな……。」
上級、特級…俺の世界で言う一級や真級ってとこか?まああいつらの使う付喪もバカみたいな性能の奴ばっかだったし認識は似たようなもんだろ。
「なるほどな。……情報感謝するぜ。」
拓斗がそう言って、胸あたりに短剣をしまう。
武器が胸に吸い込まれていったことに少々驚いたようだが、武器がなくなったことで、男たちの敵意は幾分和らいだ。
「それで、お前はこれからどうするんだ?」
「その国まで案内してくれると助かるが……。」
男たちは再び顔を見合わせる。
「まあ、怪しい奴ではあるが、悪人には見えねえ。……仕方ねえ、国まで送ってやるよ。」
「助かるぜ。」
……
二話目書いてみました。
これからもっと展開していきます。