突き付けられた現実
目が覚めた……。
戦闘で気を失ってから救助されたのだろう、それにしても救護されたにしてはやたら豪勢なベッドだ、ここはどこかの高級なホテルの寝室だろうか……。
上半身を起こして自分の体を確認してみる、既に変身は解除されており男性の体、元の体に戻っていた、ついでに体の傷らしい物もなくなっているので治療も行われたのだろう、それか変身を解除すると怪我とかも全快するのだろうか。
その疑問に答えてくれそうな妖精は枕元で気持ちよさそうに呑気に眠っている。
体の不調は特に感じないので起き上がって部屋から出てみる、流石にベッドしかない部屋にいると情報がないのでせめてテレビがあるであろう部屋に移動する。
「あ、起きたみたいね体調は大丈夫?」
「え、アレ?」
部屋を出るとホテルの一室ではなかった、明らかに人が住んでいる空間で1人の女性が過ごしていた。
「えっと……、高橋さん、だよね?」
「うん、久しぶりやね」
高橋さん、同じ中学と高校だったが、話をした記憶はないが6年同じだったので一応の知り合いではある、もちろん連絡先の交換もしていないので高校を卒業した後は全く知らなかった。
「……助けてくれた感じですか?」
「そうだよ、それと魔法少女をやってる事は知ってるからね、というか今は魔法局は働いてるから事情についても分かってるからね」
「あの、自分が気を失った後はどうなったんですか?」
「特級の魔法少女達が到着する頃にはエンシェントサキュバスには逃げられてしまったわ、周辺は大きく壊滅している中であんた達は服は見るにも無残な状態だったけど体は無傷な状態だったわ、気を失っていたあんたは一般の負傷者として外傷はなかったから私の家で休んでもらってる感じ、あ相棒の方は魔法局の医務室で休んでると思うよ」
「そうなんですね、わざわざありがとうございました」
「あ、待って今出前とったからさ、食べてから帰ろうよ」
自分を確認するなりスマホを操作していたのは出前を注文していたようだ。
引き留められたので高橋さんの家を眺める、高級感がありつつも成金のような悪趣味な感じもなかった、それにホテルの一室と思っていたのはどうやらタワーマンションの部屋だったようだ。
「あぁ……」
思い出してしまった……、前回の人生では裕福とは無縁だった、自分の身の丈だと言い聞かせて質素に趣味や友人付き合いを続けていた、同じ歳の配信者が大きな金額を稼いでたとしても絵空事で済ませた、同じ歳のスポーツ選手が何か大きな賞を取ったとしても驚きはしなかった、年下の実業家が何億と稼いでいたとしても他人事で済ませた、元クラスメイトが結婚して家族で楽しそうにしていても別の世界の事だと逃げてきた……、ずっと劣等感から目を背けてきた。
それが目の前でフラッシュバックして自分ではどうしようもない位に暗い気持ちなってこの場に居られなくなってしまった。
「いやぁ、帰るよ、そこまで迷惑はかけられないし、それに親が心配しているし」
何も通知が来てないスマホをチラ見して玄関に向かう、幸いにも複雑な構造をしていないのでまっすぐに向かう事ができた。
「待って!」
高橋さんもいきなり帰ると言われてワンテンポ行動が遅れて追いかける形になった。
魔法少女に変身できるようなったおかげで運動神経が上がったのか腕を掴んでくる手を回避して振り返る。
「ありがとう、助かったよ」
「あっ、まって……」
静止の声を無視して玄関を飛び出して速足でタワーマンションから脱出する、高層階だったのもあって気分はどんどんと沈んでいった、ただの嫉妬と僻みだというのも分かっているのだが……、あのままだとどうしても自分を抑える事ができそうになかった。
「憎らしい程の晴れ渡る青空ってこんな感じかな……」
タワーマンションから抜け出すと雲一つない青空にでさえ嫌気がして自分がそんなとこまで堕ちてしまったのだと自己嫌悪になる。
そういえば妖精が何か言っているような気がするがわからない。
「ずいぶんわかりやすくしてくれるなんて、もしかして誘ってる?」
「な……」
暗い気持ちのまま歩いているとエンシェントサキュバスが目の前に堂々と歩いてきた、反射的に魔法少女に変身する、生身でいるより多少マシだと考えたためだ。
「ねぇ、そんなネガティブだとわざわざ食べて下さいって言っているような物なんだけどねぇ!」
エンシェントサキュバスが一瞬で距離を詰められて目の前まで詰められてた。
「ホラこうやって……えっ、アレ」
先ほどまで余裕の表情でこちらを撫でるをようにしていたエンシェントサキュバスの表情がよくわからない物を見て困惑しているようだ。
自分が何か特別だとは思っていないのでこちらも同じように困惑してしまう。
「見つけた! 新人そいつを取り押さえておきなさい!」
2人して困惑しているとエンシェントサキュバスを探していたであろう見知らぬ魔法少女達が強襲してきた。
「あぁっ、もう!」
エンシェントサキュバスからすればイライラを発散するように強襲してきた魔法少女達に衝撃のような物を飛ばして一掃する。
「ねえ、貴女!」
「あ、はい!」
エンシェントサキュバスは誠実にまっすぐとこちらを見る、その姿はサキュバスなどの魔物ような雰囲気もなく、1人の女性としてこちらに向かって来ている。
「私の子孫みたいね!」
「………えぇ?!」
軽い気持ちが書きだしたら結構難しいですね。
他の方と比べて頻度は落ちますがゆっくりと更新していきます。