第7話 シリル 対 銀の剣
翌々日バステトの教会から離れた丘で、シリルと「銀の剣」が対峙していた。
「銀の剣」はリーダーのビンダジ、ズグニ、ブンザ、魔法使いモズク、神官ミルティエからなる銀等級でも上位の実力があるパーティーだ。
シリルは「銀の剣」を見回して、挑発するように笑った。
「また会ったね、オジサンたち。また奢ってくれるの?」
ズグニとブンザが顔を真っ赤にして怒った。
「今日こそは、吠え面をかかせてやる。うわばみエルフ!」
「やってみろよ!」
シリルも声を張り上げた。
神官ミルティエが『祝福』を唱えた。「銀の剣」の全員が薄く金色に輝いた。攻撃力、防御力、自己回復力を底上げする神聖魔法だ。魔法使いモズクが広範囲雷魔法を唱えた。
雷が落ちる瞬間、シリルは華麗なステップで回避し、「銀の剣」に迫った。
ズグニが突きを放ち、シリルは避けながら蹴りを入れる。
ズグニが吹き飛ばされるが、そこにブンザが斬り込む。
それをシリルが躱して蹴りを入れようとしたところに、ビンダジの剛剣が上から叩き込まれた。
決まった!とビンダジは思ったが、シリルの剣で受け止められてしまった。
ビンダジとブンザはすぐに離れ体勢を戻した。
神官がズグニを回復した。
「結構やるね、オジサンたち。ボクに剣を抜かせるなんて大したものだよ」
ビンダジは驚愕した。
「銀の剣」お得意の連携攻撃を躱し、ビンダジの会心の剣を受けきったのだ。
「甘くみてた。全力でいくぞ! 雷を叩き込め! もう一度祝福を!」
前衛三人が一斉にシリルへ斬りかかり、神官と魔法使いが詠唱を始めた。
しかしシリルは瞬時に抜けて、神官に襲いかかった。
「きゃあ」
神官は絶叫し、恐怖で『祝福』を唱えることができなかった。
そしてシリルに胸を斬られ、鳩尾を殴られ、気絶して倒れた。
「しまった!」
ビンダジは神官が攻撃を受けたことに焦りを覚えた。
魔法使いは神官を巻き込む危険があったので、詠唱をやめ、身構えた。
シリルは満足に笑った。
「殺してないから、大丈夫!」
ビンダジは、神官を助けるためシリルに体当たりをするように、大剣を横に振り回した。
それをシリルは後方に飛んで回避した。
すぐにズグニとブンザが神官の元に飛び込んだ。
ズグニが回復薬を持って、神官に飲ませようとし、ブンザが、二人を庇って防御体制を取った。
その時シリルはニヤリと笑い、威圧を放った。
その強烈な威圧に、「銀の剣」は皆動きが止まった。
シリルは瞬時に動き、回復薬を奪い、ズグニとブンザを切って、回し蹴りで二人を蹴りとばした。
さらに魔法使いも切って蹴り飛ばした。
仲間をやられ、ビンダジが激高した。
「このやろう! 剛波斬!」
ビンダジが自分の最強技を水平に叩き込んだ。
これは強烈な斬撃と広範囲に衝撃波を叩き込む技で、非常に強力だが、使った後に隙が大きかったので、ここぞとい時にしか使わなかった大技だ。
シリルが後方に吹き飛ばされた。
「決まった!」
と思った瞬間、シリルが目の前にいた。
バカな! と思ったときには、腕と足を切られた。
ビンダジは、さらに鳩尾に膝蹴りを喰らい、崩れ落ちた。
シリルが剣をビンダジの喉元につきつけた。
「ボクの勝ち!」
シリルは勝ち誇って笑った。そして神官の方へ歩いて行って、神官に手を伸ばした。
ビンダジが慌てて叫んだ。
「待ってくれ! 俺の命はくれてやる。そいつは助けてくれ! 頼む」
シリルはにっこり笑って、ポーションを神官に飲ませた。
「殺さないからよ。殺したら、ボクが姉ちゃんから殺される目に会うから」
このエルフが恐れる「姉ちゃん」って、どんな化け物なんだ?!
ビンダジは自分たちでは到底歯が立たないことを理解して去っていった。