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第57話 迷宮都市、危機一髪

聖女は顔を赤らめていた。

気づいたらイケメンのエルフにお姫様抱っこされていたからだ。


「お目覚めですか? 聖女様。私は『金の木漏れ日』のブリオニーです」

「あの……私……確か金髪の人に剣で切られそうになって……」


「その方はエルフのシリル様です」

「どうしてエルフの方が私を?」


「ちょっとした行き違いです」

「???」


「今は魔物の大群に追われています。スタンピードが起こりました」

「えええ!」


聖女は意識を後方に集中すると、確かにもの凄い魔物の気配を感じた。

思わずブリオニーにしがみついた。


「必ずお守りいたしますので、ご安心ください」

「は、はい。よろしくお願いします」


ブリオニーたちはダンジョンの外に出た。

そして結界が消えていることに気がついた。

続いて、次々と聖騎士団がハンターや神官を抱えて出て来た。

魔物はすぐそこまで迫って来ていた。


ブリオニーは聖女に向かって叫んだ。


「聖女様。すぐに結界を張ってください」

「でも、まだダンジョンの中に人がいます」


まだ逃げ遅れている者が見えたのだ。

大神官と神官を抱えた聖騎士だった。

魔物が三人を踏み殺そうとした時、黒い女が三人を助け出した。

そして出口に飛びこんできた。


しかし黒い女が出口へ到着する前に、ドレイク、ケルベロス、マンティコアが外に飛び出してしまった。

黒い女は三人を外に放り投げると大声で叫んだ。


「早く、結界を!」

「今です、結界を張ってください!」


二人の言葉に、あわてて聖女は出口に結界を張った。


「あの黒い女の人は、確か……」


聖女が「ヴァンパイア」と言い前に、ブリオニーが彼女の唇に指を押し当てた。

そして彼は後方を指さした。


「全員戦闘開始!」


ドレイクは飛び去り、ケルベロス、マンティコアが目の前にいた。

聖女は言葉を飲み込み、自分の為すべきことを自覚した。


「聖域!」


聖域は聖女だけが使える神聖魔法で、その中では魔物は力や動きは半減する。

一方、人間は攻撃力、防御力、回復力、魔力が倍増し、怪我や毒、麻痺なども治ってしまうという、奇跡の技だった。

金色の光の空間の中でケルベロス、マンティコアが苦痛にもがき、動きが遅くなった。


「今だ雷と炎を叩き込め!」


その時無数の弓矢が降ってきた。

近くにいた冒険者たちがやってきたのだ。

ブリオニーも弓を放った後、大声を上げた。


「聖騎士団はマンティコアをお願いします。我々はケルベロスを叩く。聖女様は聖域を維持してください」

「おう!」

「聖騎士団、突撃」

「分かりました」



ケルベロスの頭から吐き出される炎が冒険者たちの足元を焦がし、熱気が彼らの顔に迫った。

しかし、誰一人退くことなく、次々に攻撃を仕掛けた。

剣士たちが素早く脚の関節を狙って斬りかかり、一撃を加えると素早く離脱し、その直後に魔法や弓の遠隔攻撃をした。


マンティコアは毒を吐き、聖騎士団を襲った。

聖騎士団は自分自身に神聖魔法「聖なる盾」を使い、毒を物ともせず立ち向かった。

ミスリル盾を並べ、マンティコアの攻撃を防ぎ、盾の隙間から槍でマンティコアを攻撃した。


さらに多くの冒険者たちが加勢に駆け付けた。

やがてケルベロス、マンティコアは力尽き、倒された。

怪我人は多数出たが、幸いな事に死者は出ずにすんだ。




一方、その頃――ドレイクは街の中央広場で「金の竜爪」と大勢の冒険者と戦っていた。

「金の竜爪」はドレイク討伐で金等級に昇格したパーティーなので、ドレイクと互角に戦っていた。

ただ街中で大規模広範囲魔法が使えず、剣と弓のため時間がかかっていた。


「くそ! 街中でドレイク戦なんて最悪だ」


ベルハルトは尻尾の攻撃を回避して、上手く右肘を斬りつけた。

大剣が深く右肘に食い込んだ。

しかし振り切れなかった。


「しまった。剣が抜けない」


ドレイクは痛みに右腕大きく振り、ベルハルトは投げ飛ばされてしまった。

気がついた時には、ドレイクが自分を噛み殺そうとしていた。


「くそ!」


死を覚悟した次の瞬間、ドレイクは地面に倒れ、消滅していった。

目の前に、黒髪黒服の女が現れた。漆黒の魔女ゼノアだ。


「大丈夫ですか?」

「ありがとう。助かったよ」


ゼノアが笑って手を差し出すと、ベルハルトも笑って握り返し、周囲は歓声に包まれた。




ゼノアがダンジョンを脱出し、ベルハルトの元に駆け付けることができたのには、訳があった。

ケルベロス、マンティコアとの戦いが終わった時、ブリオニーが聖女に結界を解くように頼んだ。


「魔物が出てくるのでは?」


聖女は心配したが、ブリオニーは笑顔で応えた。


「もう片付いていると思います」

「本当ですか?」

「ええ、信じて下さい」

「分かりました」


命の恩人のブリオニーに、そこまで言われるとダメとは言えず、聖女は結界を解いた。

中から例の黒髪黒服の女が出てくると、大司教が叫んだ。


「その黒い女を捕まえろ!」


その時上空から男の声が響いた。


「その女性はヴァンパイアではありません」


その声の主は、20年前パールアルティ公国のヴァンパイアの捕獲一掃で功績を上げたダニエトロだった。

今は総本山のヴァンパイアハンターのトップになっていて、後発隊を引き連れ、今到着したところだった。


「ゼノア殿、お久しぶりです」

「ええ、お久しぶりですね。申し訳ないのですが、まだドレイクが街で暴れているようなので行ってもよろしいですか?」

「はい、よろしくお願いします」

「では、失礼して、行ってまいります」


そう言ってゼノアはドレイクに向かって飛んでいった。

大司教は激怒してダニエトロに迫った。


「あなたが作ったヴァンパイア発見装置、それが反応したのですぞ!」

「その装置、故障していたのでしょうね」

「な、なにを仰る……」


ダニエトロには大司教に近づき、誰にも聞こえないように耳元で囁いた。


「禁書に記された魔王討伐の漆黒の魔女ゼノア……と言えばお分かりいただけますか」

「……禁書……魔王討伐……漆黒の魔女ゼノア……!」


大司教は禁書庫で読んだ勇者の手記を思い出し、冷や汗を流し始めた。


「ま、まさか……そんな……」

「彼女には手出し無用でお願いします。さもなくば、あなたが処分対象になりますよ」


大司教はワナワナと震えだし、地べたにしゃがみ込んだ。

秘宝を手にいれるという野望が潰ただけでなく、触れてはいけない者に敵対してしまい、絶望に崩れ落ちた。



その頃、迷宮都市で魔物が暴れているのを望遠鏡で覗いていた男がいた。

帝国軍のドナシェル隊長である。


「魔物が冒険者を片付けてくれたら、楽できたのだが……まあ良い。当初の作戦を実行するのみだ」


彼はドレイクに乗ってゼノアの所に向かっていった。

迷宮都市から離れた山中には、帝国軍第一軍団総勢3000名が出撃の合図を待っていた。魔人の危機は乗り切ったが、新たな脅威が迷宮都市に迫ろうとしていた。

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