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第56話 ドラゴン

ドラゴンと数十体のレッサードラゴンが、ゼノアとシリルの前に現れた。


ドラゴンは、人の数十倍はあろう巨体で、赤い鱗に覆われ、ドス黒い霧を纏っていた。

巨大な翼が動くと強風が舞い上がり、腕を振り下ろすと地面が揺れた。

目が赤く燃え上がり、牙をむき、鼻と口からは蒸気を噴き出していた。

棘のある長い尻尾を振り回しながらドラゴンは、ゼノアとシリルを見下ろしていた。


ドラゴンから目を離さずに、ゼノアはシリルに話しかけた。


「シリル、みんなを守って。ここは私が……」


ゼノアが言い終わる前にシリルがドラゴンに突撃した。


「このやろう! よくもじっちゃんの仇を!」

「シリル!?」


シリルは仇討ちを横取りされと勘違いして、暴走してしまった。


暴風を纏いドラゴンに直撃したが、その巨体と硬い鱗に弾かれてしまった。

そこにドラゴンの尻尾で薙ぎ払われて、地面に激突して、何回もバウンドして止まった。

立ち上がろうとしたが、血反吐を吐いて、よろめき倒れてしまった。


「シリル!」


ゼノアはドラゴンとレッサードラゴンの群れに最大威圧を放った。

ドラゴンは動けずに止まり、レッサードラゴンは地面に打ちつけられ意識を失った。

その隙にゼノアはドラゴンに体当たりし、ドラゴンとレッサードラゴンの群れに向かて叫んだ。


「ドレイン」「ドレイン」


ドラゴンは絶叫し、横倒しになり、レッサードラゴンは次々に消滅していった。

ゼノアはシリルに駆け寄り、回復薬を飲ませた。


「ここはシリルに期待するしかないわね」


そして額の銀色のティアラを外した。

それは「戒めの冠」、シリルの魔力を抑える魔術具である。シリルの魔力が膨れ上がってきた。

シリルの意識が戻ったが、まだぼんやりしていた。


「ね、姉ちゃん?」

「シリル、思いっきり暴れていいわよ」


シリルの意識がはっきりしてきた。


「ほ、ほんとう?」

「ええ、私はみんなを助けに行かないといけないの。独りで頑張ってくれる?」

「うん、分かった」


シリルが起き上がると、ゼノアは「身代わりのペンダント」をシリルの首にかけた。

そして、もう一度ドラゴンに最大威圧と「ドレイン」をかけて、出口へ向かって飛んで行った。


「まかせて、姉ちゃん」


シリルはドラゴンにやられ、屈辱に怒り燃えていた。

さらに今まで戦ったことのない強敵、伝説の魔物と戦えることに、かってない程の興奮が起こり身震いしていた。

怒りが興奮を増幅し精霊たちが喜び、シリルに魔力を与え、その魔力の増加がシリルをさらに興奮させていった。


やがてドラゴンに匹敵するほどの魔力が集まると、シリルの体全体が金色に光り、神剣もかってないほど輝きを増した。

シリルの周りには台風を上回る暴風が吹き荒れ、炎、雷、水、氷、土が暴れまわっていた。


「ふう、今度はこっちの番だ。いくぞ!」


ドラゴンが起き上がろうとしたところ、ドラゴンの頭にシリルが体当たりをした。


「どりゃ~!」

「グワ~!」


ドラゴンは一瞬気を失い、再び倒れた。

そこにシリルが追撃をかけ、ドラゴンの首を斬りつけた。

黒い霧は神剣の光に霧散し、剣が鱗に届いたが、傷が少し入るくらいだった。


「くそ! なんて硬いんだ」


シリルがさらに斬りつけようとしたところ、尻尾が襲ってきた。

回避したところ、今度はドラゴンが首を振り、頭でシリルを狙った。

それも回避したが、ドラゴンは左腕を既に振り上げていて、シリルに叩きつけた。

しかし、それさえも躱して左腕を斬りつけ、ドラゴンの腕に傷をつけた。


ドラゴンは起き上がり、シリルは離れて身構えた。


速度ではシリルが勝っていたが、破壊力と防御力ではドラゴンが圧倒していた。

シリルとドラゴンが睨み合うと、空気が張り詰め、周囲の空間はまるで凍りついたように静まり返った。

シリルは心臓の鼓動を抑え、呼吸を整えた。


「あはは、面白くなってきたな!」


シリルが飛び出した時、ドラゴンは羽を大きく羽ばたかせ風を起こした。

その風にあおられ体勢が崩れた時、ドラゴンが咆哮し威圧を放った。

シリルは一瞬固まってしまい、その隙を狙われて尻尾がシリルに襲いかかった。

シリルは吹き飛ばされてしまった。

しかし強力な風の守りのおかげて致命傷にはならず、女神の癒しで回復した。


「くそ、やりやがったな!」


ドラゴンが炎のブレスを吐こうとした時、今度はシリルが威圧を放った。

ドラゴンは一瞬動けなくなり、ブレスは中断された。

すかさずシリルはドラゴンの右目めがけて体当たりし、神剣を右目に突き立てた。


神剣が目に刺さると、ドラゴンは絶叫し、頭と首を振りシリルを振り払った。

怒り狂ったドラゴンは怒涛の如く、首、腕、尻尾を振り、シリルを追い立てた。

シリルは何とか回避したが、反撃できなかった。


そして再び対峙した。


同時に動いた時、同時に威圧を放った。

そしてお互いに動けなくなった。


「ちくしょう!」


もはや威圧では勝負をつけられないと悟ったドラゴンは、じりじりと間合いを詰めていった。

そして大きく体を起こした時、シリルは威圧を放ってしまった。

固まったドラゴンが、そのままシリルに覆いかぶさるように地面に倒れ込んだ。

シリルはそれを回避し脱出した。


「危ねぇ」


シリルも威圧を使えないことを悟った。

ドラゴンは、また大きく体を起こし、シリルを押しつぶそうとした。

シリルは回避しようとした時、ドラゴンは炎を吐きながら倒れてきた。


「あち~!」


炎に煽られ、シリルはドラゴンの頭めがけて回避した。

炎を吐きながらドラゴンは、首、腕、尻尾は縦横無尽に攻撃を仕掛け、シリルは回避し続けた。


それが何度も繰り返された。

どちらも手詰まりではあったが、シリルの方が疲れてきていた。


「ふう~! どうしたらいいんだろう」


いつもの暴走エルフは消えていた。

冷静だが闘志だけは燃えていた。

その時シリルは、以前ゼノアがドラゴンと戦った時の話を思い出した。


「確か、ブレスを吐くとき、首の赤くなった部分が弱点だったよね」


シリルは首にかかった「身代わりのペンダント」を撫でた。そして覚悟を決めた。


ドラゴンが体を起こし、ブレスを吐こうとした。首のところに赤く膨れ上がっていた部位を見定めた。


シリルは威圧を放った。ドラゴンは固まり、そのまま倒れてきた。


ドラゴンの弱点に当たるように、神剣を両手で構え、全魔力を神剣に集中した。

ドラゴンがシリルを巻き込んで倒れこんだ。


輝きを増した神剣が首の弱点の鱗を一気に溶かし、シリルは首にめりこんだ。

「身代わりのペンダント」が割れ、シリルの周りの暴風がシリルを守ると同時にドラゴンの肉を削り、さらに神剣の光が焼き尽くしていった。


やがてドラゴンは絶叫することもできず、消滅していった。


「姉ちゃん、やったよ……」


疲労困憊と魔力切れでシリルは、意識を失って倒れた。

シリルはダンジョン最下層のボスを単独で倒したのであった。

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