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第51話 教会総本山

迷宮都市ザーランドは、50年ぶりのダンジョン階層突破にお祭り騒ぎとなっていた。


今日は、偉業を達成した「金の木漏れ日」の凱旋パレードが行われる予定だった。

周辺の街からも、その勇姿を観ようと観光客が集まっていた。

街はお祝いの旗や飾り付けが並び、多くの露店や出店が所狭しと立ち、そこら中で祝杯が上がっていた。


祝砲が鳴り、ラッパのファンファーレが鳴り響くと、人々は中央大通りに並んだ。


本日の主役「金の木漏れ日」が豪華な馬車に乗って現れると、拍手と大歓声が沸き起こり、紙吹雪が舞い上がった。

「金の木漏れ日」のメンバーが手を振ると、さらに大きな歓声が沸き起こったが、誰もがひときわ輝いて見える二人のエルフに目が釘付けになっていた。


一人は男のエルフでリーダーのブリオニーだ。

100年この街で過ごしていたので彼を知らない者はいなかった。

エルフ独特の端正な顔立ちと威厳溢れた姿に女性たちはうっとりとしていた。

そして「金の木漏れ日」を金等級にまで育て上げ、今回偉業を達成したことに、誰もが彼を「英雄」と呼んでいた。


もう一人は、隣で笑顔を振りまく美少女エルフだ。

金髪に翠の瞳、スラリとした体に細長い手足、白地に金の織り込みが施された服に身を包み、銀のティアラをつけた姿は、エルフの王女のような気品に満ちて、その笑顔を振りまく可愛らしい姿に誰もが魅了された。


メルはシリルを見てうっとりしていた。


「綺麗、まるで王女様みたい」

「喋らずに笑っていればね」


ダンが笑って言うと、みんなが頷いて笑った。


「本当にそうなよね。あの言葉使いどうにかならないかしら」

「120年もあのままじゃ、もう無理じゃない」


ゼノアがため息をつき、アルバが追い打ちをかけると、また笑い声が起こった。

四人が笑っているのを見つけて、シリルが両手を大きく振って、こちらに向かって何か叫んでいた。

その声はまったく聞こえなかったが、それを見てガダルが言った。


「やっぱ、無理だね」


みんな一斉に大笑いして、シリルに手を振った。




街が歓喜に包まれていた時、行政庁の会議室は重苦しい雰囲気に包まれていた。

冒険者ギルドのマスターからの報告に驚愕し固まっていた。


ダルマリオ商会の会長は怒声を上げた。


「ゼノア殿が魔物とは聞き捨てなりませんな」

「ブリオニーさんがはっきりと言ったのです」


ギルドマスターはゼノアの事をずっと悩んでいたが、街の命運に関わる一大事だったので街全体で共有した方が良いと判断し議案として出したのだ。

彼はゼノアたちと敵対しないよう情報を共有しようとしただけだった。しかし会長は命の恩人を魔物呼ばわりされ激怒した。


「ブリオニー殿も間違われることはあるでしょう?」

「彼がヴァンパイアを一掃してくれたことは、みなさんご存じでしょう?エルフは魔物を見誤らないと彼は言っていました」

「彼はハーフエルフですが、シリル殿は本物のエルフです。彼女が信頼している人が魔物などありえないでしょう」

「そ、それは……」


ギルドマスターは言葉に詰まった。そこに大司教が手を挙げた。


「総本山から専門家を呼んではいかがでしょうか?」

「それはいい案ですな」

「確かに第三者しかも総本山なら間違いないでしょう」


ギルドマスターは真っ青になった。


「待ってください。相手は金等級を子ども扱いする化け物です。しかも、もうひとりのエルフの少女も48階層を単独で破ったのです。彼女らと争うと街が滅ぶかもしれません。彼女らと共存するための方針を考えてもらいたく議案を出したのです」


「化け物とは! 言語同断、訂正と謝罪を求めますぞ!」

「魔物と共存などありえん。それほど恐ろしい魔物なら、街の安全のためにも討伐すべきでしょう」


会長がさらに激怒し、大司教も怒り出したので、議長は制止した。


「静粛に。本当に魔物か確かめるのが、まずすべきこととでしょう。決を採ります」


圧倒的多数で、総本山に調査依頼を出すことに決まった。

ギルドマスターは良かれと思ったことが裏目に出てしまい途方に暮れた。一方大司教はゼノアを捕え秘宝を奪うべく策を考え始めた。


大司教はすぐに総本山に、緊急議案の手紙を送った。

それはヴァンパイアハンターと聖騎士団の派遣要請だった。





一か月後、総本山では緊急会議が開かれた。

噂を聞きつけたヴァンパイアハンターたちは、すぐに準備を始めた。


「20年ぶりのヴァンパイアの出現ですね」

「滅ぼしたと思っていたのに、まだ生き残りがいたとは」

「いや、新たにやってきたのでは?」

「封印の地から来たと?どうやって?無理でしょ」

「どちらでも同じこと。出来るだけ早く芽を摘むのが肝要」

「金等級を超える力だとか。侯爵クラスでしょうか?」

「子爵の討伐記録は読みましたが、伯爵、侯爵のはないですよね。楽しみですね」

「何を呑気な。史上始まって以来の大戦になるかもしないのに」


会議は紛糾した。

ヴァンパイアが本当にいるのか調査するのが先だと主張する者、ヴァンパイアなら早急に対処すべしと訴える者、金等級を超えるのが本当なら十分な戦力を整えなければと主張する者が一歩も譲ずらず、なかなか結論が出なかった。

そこに緊急の報告が届いた。


「女神の神託です! 迷宮都市ザーランドに危機有りとのこと」


そのひと言で、ヴァンパイアハンター、聖騎士団、神官、聖女からなる精鋭部隊の派遣が満場一致で決まった。

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