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第45話 地下4階

「シリル姉ちゃん、4階に行きたいよ」

「ゼノア姉ちゃんから、ボア5匹を倒せるようになってからって言われてるから……」

「シリル姉ちゃんが一緒なら、グレイハウンド1匹、2匹でも大丈夫だよね」

「それはそうだけど」

「ね、お願い」「お願いします」


シリルは迷ったが、正直ラージボアに飽きてきていたし、自分がいれば大丈夫だと考えて、4階に行くことにした。

四人はみんな大喜びした。


「やった~!」

「お姉ちゃん、ありがとう!」

「まっ、いいか」


シリルたちは薄暗く広がる地下4階層を進んでいた。冷たい空気が肌に触れ、足元にはヒカリゴケが生い茂っていた。

グレイハウンドの影が、迷宮の奥から不気味に迫り来る気配が漂っていた。

緊張感が漂う中、四人組は息をひそめて歩を進めた。


最初はグレイハウンド1匹だった。

レイハウンドはラージボアより速かったが、攻撃力は弱く外皮も硬くなかったので楽勝だった。

メルの水壁がよく効いて、グレイハウンド2匹、グレイハウンド3匹、グレイハウンド4匹も何も問題なかった。


グレイハウンド5匹にも何とか勝て、彼らは大いに盛り上がった。

3階の魔物5匹ではなく4階の魔物5匹に勝てたのだ。


彼らは自分たちが強くなったと錯覚した。

しかしメルの水壁がハウンドに対して相性が良かったからで実力が上がったわけではなかった。

本来なら3階のボア5匹と再戦して、実力を再確認すべきだったが、シリルも考えが及ばなかった。


そしてグレイハウンド7匹から苦戦しだした。

勝てる時もあったが、危ない場面でシリルが最後のハウンドを蹴り殺すことも多くなった。

シリルに最後の良いところ持っていかれて、正直不満が募っていた。


「シリル姉ちゃん、手を出さないでよ!」


ダンは悔しげに唇を噛みしめ、拳を握りしめた。

彼の目には少しの怒りと大きな無力感が浮かんでいた。


「ボクたちだけで勝てるんだから!」


その声には、もう子供扱いされたくないという強い反感が込められていた。

しかしシリルも頑として引かなかった。


「ダメだよ。勝ててなくて危ないから手を出してるんだから」


お互いに納得できないまま月日は流れ、ゼノアがいなくなって2か月が過ぎた。





シリルたちはグレイハウンドを狩って4階を進んでいた。

ちょうど7匹いたので戦闘が始まったが、遠くから人の悲鳴が聞こえた。


「人が襲われている!」

「シリル姉ちゃん、助けにいってあげて」

「でも……」

「ここはボクたちで何とかなるから」


シリルは迷ったが、ダンたちなら怪我はしても勝てるだろうと考えて、悲鳴が聞こえた方に飛んでいった。

5名の冒険者がグレイハウンドの群れに囲まれていた。既にひとりは死に、もうひとりは重症で、他の3人も怪我を負っていた。


「チィッ、威圧は使えないか」


シリルはグレイハウンドの群れを瞬殺して、重症の冒険者に癒しをかけ始めた。

その時遠くから、メルの悲鳴が聞こえた。


「しまった!」


シリルは癒しを途中でやめて引き返そうとしたが、仲間のひとりに脚を掴まれた。


「おい、見捨てるのか!」

「うるさい!」


シリルは脚をつかんだ手を振り払って、急ぎ戻った。




シリルが襲われている人を助けにいった後、ダンたちの状況は一変した。

グレイハウンドが仲間を呼んだのだ。


グレイハウンドの群れは一瞬の隙をついて猛然と襲いかかってきた。

メルは必死に水壁を作ろうとしたが、追いつかない。

次の瞬間、牙が彼女の肩に食い込み、痛みに悲鳴を上げながら崩れ落ちた。

アルバとガダルも立ち向かおうとしたが、数の圧倒に押され、地面に叩きつけられた。


「まずい……!」


ダンの胸に冷たい恐怖が広がり、全身が硬直した。

その隙を狙われ、ダンもグレイハウンドに腕と腹を噛まれ倒され、踏みつけられた。


グレイハウンドの牙がダンの目の前に迫る。

その鋭い牙が光に反射し、まるで死神の鎌のように見えた。

死を覚悟した。


「ゼノア姉ちゃん……」


全身が震え、目をつむったその瞬間、突然目の前のグレイハウンドが崩れ落ちた。

何が起きたのか理解する間もなく、次々に倒れていく獣たち。

その中で、黒髪をなびかせた金の瞳の女性が立っていた。


「助かった……」


ダンはほっとした瞬間、意識が闇に沈んでいった。

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