スカイグレーという夢
昔話をしよう。その戦争が始まったのは白露の頃と記憶している。
私の祖父は、私の中学生最後の思い出にと中東旅行に連れて行ってくれた。
さて、行程もつつがなく終わり、いよいよサッダーム帝国からの出国を明日に控えた日のことだった。
現地時間の深夜、突如として電話が鳴った。取ると、ツアーを率いる添乗員だった。内容は、サッダーム帝国が周辺諸国に宣戦布告したこと、帰りの便がキャンセルになったことだった。どのように返事をしたのかは覚えていない。ただ、これは大変なことになったぞという認識はあった。
眠れぬ夜を明かした5時頃、添乗員に呼び出された。私は祖父を叩き起こし、荷物をまとめた。
それからは本当に目まぐるしかった。ロビーに集合し、バスに押し込められ、空港で手荷物検査も無しに飛行機に詰め込まれた。閉じられた窓のブラインドが緊迫感を煽っていた。
飛行機は逃げるように地上を離れた。私はこっそりブラインドを開けてみた。隣には寄り添うように、スカイグレーに日の丸を描いた戦闘機が飛んでいた。それが心底心強く感じられた。
その思い出が、今私を空へと駆り立てている。