ポロッポーさんとボクの捜査
「なるほどジュースが……そりゃぁ大変でございました……。なんとしても解決して、ジュースを取り戻さないといけませんね。」
「ポロッポーさん、どうしますか?」
「はじめにレストランを調べましょう。事件が起きたのはレストランなんですから、調べないとはじまりませんからね。
ウッキーさん、犯人を捜すためにレストランを調べても良いですか?」
「はい、お願いします。」
「ではヒヨコ刑事、一緒に捜査を始めましょう。ウッキーさんも皆さんも、協力をお願いいたします。」
「ハイッ!わかりました。」
「「「「わかりました。」」」」
《レストラン・キッチン》
「うわぁ、ピカピカだあ。」
コンロ、シンク、食器棚、包丁にまな板、おなべ、みんなキラキラして鏡みたい映っている。
「ヒヨコ刑事、手は洗って手袋をしましたか?」
「ハイ!しっかり洗ってきました。羽がとばないように帽子もしています。」
手袋と帽子を見せる。
「じゃぁ、先ずは冷蔵庫を調べてみましょうか。」
「そうですね、冷蔵庫の中のジュースが盗まれたんですからそこを調べないと……で、冷蔵庫はどこですかね?」
「あぁ、それは……」
「あぁウッキーさん、冷蔵庫の場所は言わないで下さい。ヒヨコ刑事、冷蔵庫を探してみてください。」
ポロッポー刑事が何かを考えている顔をしていた。
「え?わかりました。」
冷蔵庫なんて見ればすぐにわかるのに……
「ヒヨコ刑事、見つかりましたか?」
「うぅ……見つからないです。冷蔵庫はどこにあるんですか?」
冷蔵庫がどこにもない。食器棚も、お鍋も、コンロやシンクの下も探したのに、みつからなかった。
「うーん、あとちょっとで見つかると思ったんだけれどね。」
「あとちょっとだったゾウ。おしいゾウ。」
「中もちゃんと見るのはよいと思った。だが足りなかった。」
常連さん3人はボクが探しているのを楽しそうに見ていた。
「常連の皆さんは場所を知っているんですか?」
「そりゃぁ、常連だもの。」
「ボクらほどになると知っているゾウ。」
「知っているのはワガハイたち3人くらいだろう。」
「ヒヨコ刑事、ありがとうございます。じゃぁ答え合わせをしましょう。
ウッキーさん、お願いします。」
「え?ポロッポー刑事は探さないんですか?」
「アタシは、どこにあるかだいたいわかっていますから……」
「えー、どこですか?」
「あれをごらんなさい。」
羽を上に突き上げる。
「……あっ!」
見つけた。ボクが探していなかった場所。
「はい、冷蔵庫は、ここにあります。」
ウッキーさんがピョンと飛んでキッチンの天井に手を伸ばす。
「天井につかむところがある!」
ウッキーさんがつかむと天井の板が外れて上から冷蔵庫が出てきた。
「この冷蔵庫にバナナジュースは入れてありました。」
「うわぁ、全然気付かなかった。ポロッポーさんはどうやって見つけたんですか?」
「あぁ、それは簡単ですよ。ヒヨコ刑事があれだけ探して見つからないのなら、ヒヨコ刑事が探した場所には無い。なら、まだ見ていない場所にあるんじゃないかってね。」
「……ほめられています?」
「ものすごくほめていますよ。あとは見る場所を変えるだけです。」
「わぁい。」
「さぁ、冷蔵庫の中を見てみましょう。」
「見えないです!」
ボクは全力でジャンプしたけど届かなかった。
「あの高さだとアタシも見えないですね……」
ポロッポーさんが背伸びをしたけど見えない。
「私もよ。飛べば何とかなるけど、流石にキッチンで飛ぶのはね……」
ミス=コウモリーさんは上を見上げた。
「ボクもだゾウ。」
アフゾウさんの鼻は長くて、伸ばせば天井まで届く。けれど、鼻だけ伸ばしても見えない。
「ワガハイは……彼ほど身軽じゃないからな……」
杖をカツンと鳴らした。
「あぁ、ごめんなさい。キッチンはボクしか使わないからつい……」
冷蔵庫は天井から出てきたけど、高い場所にあって手が届かない。だから見えない。
ウッキーさんはキッチンのあちこちを木登りするように登って、冷蔵庫の開いた扉に片手で張り付いて中のものを手に取っていた。
「ここの中にジュースは入っていたんです。」
「これは、犯人は多分ものすごーく大きい人なんでしょうね!」
「……ははぁ、そうかもしれませんね。ちなみに、冷蔵庫の中には紫色のものって入っていますかね?」
「いいえ、入っていません。」
「バナナジュースにフタはしていましたか?」
「フタはしました。うっかりこぼれない様に冷蔵庫の奥にしまっておきました。」
「なるほど……これじゃむずかしいな……あぁ、ありがとうございます。
じゃぁ、犯人はどこから入ったか考えるとしましょう。」
「あれ?ポロッポーさん、何かわかったんですか?」
「ははあ、サッパリです。」
「あらぁ、残念。」
「犯人は一体どんなやつなんだゾウ?」
「…………ふぅむ。」
「昨日帰るとき、カギは閉めましたか?」
「ハイ、しっかりとドアも窓も閉めました。」
「ははぁ……ヒヨコ刑事、どうかしましたか?」
「……ウッキーさん、気になったんですけど、今日レストランに来てから窓は開けましたか?」
「いいえ。ボクが入るためにレストランの裏口だけ開けて、冷蔵庫のバナナジュースを確認してすぐにどうぶつ警察に電話したので開けていません。どうかしたんですか?」
「いや、さっきから風の音が聞こえるんです。どこだろう?こっちかな?」
キッチンを出て、お客さんの座るテーブルの方に行く。音が近づいてきている。
けど、どこの窓を見ても全部閉まっている。
こういう時は……見る場所を変えて……
「あ!ポロッポーさん、ウッキーさん、来てください!」
「どうかしたんですかヒヨコ刑事……ははあ。」
「ひよこの刑事さん、どうしたんですか。あれ、なんで?」
お店の入り口、扉の上に窓があった。お昼に明るくするための小さな窓。
それにはカギがついていたけれど、窓ガラスがわれていた。
すぐにレストランの灯りをつけて、調べることになった。
「ウッキーさん、心当たりは?」
「いいえ。昨日見たときはあんなものなかったはずです。
今日、あそこにモリアーキーさんにお願いしていたバナナジュースの看板をつけようと思って見たから間違いありません。」
「じゃぁ、犯人はあそこから入ってきたってことですか?あんな小さな窓だと、入れる人なんてそんなにいるわけが……ボクなら入れそうだな。あ、でもボクは犯人じゃありませんよ!昨日の夜は早くに寝ていたのでアリバイ成立です!」
「ひよこの刑事さん、大丈夫です、疑ってないですよ。あんな小さな窓から、入って、冷蔵庫を見つけられる人なんて、そういないですし……」
「ははあ、確かに、ヒヨコ刑事くらいの大きさならあそこを通り抜けるくらいはできそうですな。」
「けどボク、ひよこで飛べないからあの高さまで届きませんよ。」
扉の前に立ってジャンプしてみる。けど、割れた窓には手も届かない。
「ああ、危ないから離れてください。割れたガラスは包丁みたいに切れるから危ないんですよ。
足元に散らばったガラスだって踏んだら危ないんですから……」
「えっ、そうなんですか?気をつけます。でも、足元にはガラスは落ちてないですよ。」
「ははぁ、そいつは不思議ですね……あれ、ウッキーさんはどこに?」
「あれ?さっきまでそこにいたのに、どこでしょう?」
2人でいなくなったウッキーさんを探していると、キッチンの方から大きな声が聞こえた。
「ワタシじゃないわ!」
「じゃぁだれがやったんですか⁉」
「やめるんだゾウ、おちつくんだゾウ。」
「刑事さん、すぐに来てほしい。このケンカはワガハイたちではとめられない。」
2人で顔を見合わせた。
「大事件です!」
「ははあ、急ぎましょう。」
カニマール警部、すまない。何かの弾みでシリーズが出たら物凄く活躍させるから。(文字数の関係でリストラしたキャラのお話)




