9 訪問
ヒノタはすっかり引きこもり、3人の名前を呼びながら布団に籠って泣いて過ごす日々を送っていた。
「ゴリアン……! キザオ……! シズキちゃん……! ……うぅ!」
ノックの音ともに、姉裕子が声をかける。
「ヒノタ。入るわよ」
そして、布団に向かって裕子は話す。
「アンタに会って話が聞きたいって人が来られてるの。前に会った山下警部のご紹介よ。いいかしら?」
ヒノタは布団から出ると、涙を拭い床に座る。
姉の後から現れた白シャツの男は、ヒノタの前に座った。
「邪魔するぜ。君が日野ヒノタくんだな?」
呪道と名乗るその男は、ヒノタの突拍子もない話を聞いてくれるという。
身振り手振りで、ヒノタは必死にその日の様子を話し続けた。
「ゴリアンは! いい奴だったんだ! いつも虐められていた僕を友達にしてくれて! 毎日遊んでくれて! そんな奴を騙して連れてった奴を僕は許せないよ!」
「キザオは……! 本物の霊能者に作ってもらったっていう御守りを僕に持たせてくれたんだ……! 自分の事なんて気にせずに! そんないい奴を連れてったバケモノが許せないよ!」
「シズキちゃんも! 足を挫いたからって! 構わず逃げろって言ってくれたんだ!……情けないよ! 一人で逃げ帰ってきた自分が!」
わあわあ、と泣き出すヒノタを困ったように見つめながら呪道はその肩を叩き目を見つめる。
「わかった、わかった。坊主、友達を助けたいんだな?」
ヒノタはコクリと頷く。
「もう一度、バケモノに立ち向かう勇気はあるか? その為に努力や準備する覚悟も」
しばらくじっと男の目を見つめていたかと思うと、ヒノタは再び頷いた。