4 残酷な決断
すっかり日が落ち、辺りは鳥と虫の静かな自然音で満たされる。
バケモノの女の子に追い回され、彼らは森の深くまで追いやられていたのだった。
シズキはシクシクと泣きながら、しばらくうずくまっていた。
そんなシズキを励ますようにヒノタは肩を叩く。
「シズキちゃん、しっかりして! 歩かないと」
「わかってる! わかってるけど!」
バケモノに友達2人が飲み込まれたのだ。
平気でいられるはずがない。
しかし、このままでは自分たちが同様の目に遭うことは必定だった。
「ゴリアンとキザオの犠牲を…… いや、きっとまだ生きてる! 助けないと!」
「そうね…… 私も頑張る」
そうして歩き出そうとしたところ、またヒタヒタとあの足音が聞こえてきた。
2人は草原に潜み、かがみこむ。
「……! さがって! あいつだ」
「さっきは同じ状況で見つかった! 草むらを移動しながら逃げよう」
息を潜めて、隠れる2人に女の子の声が聞こえてくる。
「ひーのたくん! しーずきちゃん! どこかなーー? その御守り捨ててくれないかなあ? 匂いが辿りにくいんだよね」
その友達に語りかけるような何気ない声がますます恐ろしかった。
しかし、一つだけ良い情報は得られた。
「やっぱり…… 御守りは効いてるんだ」
そうして、隠れているとシズキがヒノタの肩を叩いた。
「ねえ、ヒノタくん」
「どうしたの? シズキちゃん」
その顔は悲壮感で溢れていた。
「私、もうダメ。足挫いちゃった。もう走れない」
そう言うとシズキは自分の紫色に変色した足首を見せた。
ヒノタは絶望と共に、2人のやられ方を思い出し、己の気持ちを奮い立たせる。
2人の為にも、シズキ1人を置いていくわけにはいかない。
「そんな…… おぶっていくよ!」
シズキは気丈にも笑顔を見せる。
その無理な笑顔がますます痛々しかった。
「声量下げて。私、大丈夫だから。私を背負いながらなんてあの子から逃げ切れないよ」
「……いやだよ! シズキちゃんをおいてけない! そんなの、捕まった2人になんて言い訳するんだよ……」
シズキはヒノタの肩を揺さぶりながら、言い聞かせるように嘆願する。
「ねえ、お願い。ヒノタくん。きっと最近子どもをさらってるのはアイツだわ。ここで私たちが全滅したら、真相が分からなくなっちゃう。誰も助からないばかりか、まだまだ犠牲が増えちゃうのよ!」
「……うう!」
ヒノタは涙を流しながら、その残酷なまでの提案に従うしかないことを理解する。
その時あの女の「みーつけた!」という声が聞こえてきた。
それは絶望を意味していた。
シズキは涙を拭きながら、ヒノタの背を押す。
「さあ、行って! アイツが気づいたみたいよ! 振り返らないで走って!」
ヒノタはグッと、拳を握りしめると泣きながらその場から駆け出した。
「……うわぁぁぁぁぁぁぁん‼︎」
残されたシズキは、震える体を押さえながら、足音の方を睨みつける。
「怖くない……! こわくないんだから……!」
恐怖を押さえつけるようにして、シズキは涙を堪える。
そして草の影から、あの女の子が顔を出した。
「シズキちゃーーん! いたわね? みっーーけっ‼︎」