2 正体を表した子
ゴリアンは、やれやれとため息をつくと嬉しそうな女の子を見つめる。
「隠れ鬼でいいんだな? 10数えるうちに鬼以外は森の中に隠れるやつ」
すると女の子は飛び跳ねながら、ニコニコと宣言する。
「うん! じゃあ、私が鬼ね!」
「ちょっと待てよ」
慌ててゴリアンが頭を横に振る。
「お前、何年生だ? 明らかに俺たちより年下だよな? そんな奴をいきなり鬼にする訳ないだろ?」
キザオは拳を突き上げながら、ゴリアンに賛同する。
「さっすが、ゴリアン! 漢気だぜ!」
女の子は顔を顰めながら、不満そうに呟く。
「私、鬼がいいのに……」
仕方なしにゴリアンは妥協案を提案した。
「わかった、わかった。それじゃあジャンケンで決めよう」
しかしジャンケンの結果、結局女の子が鬼となり、飛び跳ねて喜ぶ。
「やった! じゃあ、私鬼やるね!」
ゴリアンはその様子をみてため息をつく。
「仕方ない、じゃあやるか、お前ら」
女の子が木の方を向いて目隠しすると、秒読みを始める。
「はじめるよーー! いーち! にー! ……」
そして、隠れ場所を探すキザオはシズキとヒノタに愚痴をこぼした。
「まったく、ゴリアンのお人好しにも参るよ」
「ま、ゴリアンくんだしね」
ゴリアンを見ると、秒読みする女の子の近くで見つかりやすいところに隠れているらしかった。
「じゃあ、しばらく近くで隠れておこう」
3人も本気で女の子から隠れるつもりはなかった。
そして、秒読みが終わり、女の子が駆け出すと、間もなくゴリアンが見つかる。
「ゴリアンくんみーっけ!」
「あーあ、見つかっちまったなあ」
ゴリアンはわざとらしく自分の顔を抑え、悔しそうな声を出す。
女の子は嬉しそうにゴリアンの肩を掴んで、空を見上げて笑う。
「じゃあ、私の勝ちだからあなたを連れてくね!」
「ん? 何言ってんだ……? え?」
次の瞬間、3人は信じられないものを見た。
女の子の影から黒い腕のようなものが這い出し、ゴリアンの身体を掴んだのだ。
そして、悲鳴をあげるゴリアンの身体はズブズブと女の子の影へと飲み込まれていった。
その恐ろしい光景に3人は思わず叫ぶ。
「ゴリアン!」
「ゴリアンくん!」
そして、女の子はこちらを見て微笑んだような気がした。
「さあ、他のみんなも探しに行かないとね!」
急いで3人はその場から全力で逃げ出す。
「ひぃぃぃ⁉︎」
「シズキちゃん、しっかり!」
「あいつ…… バケモノだったのか!」