終
呪道たちがバケモノを調伏し、まつろわぬ神を新しい神社に移して間もなく、子どもたちは全員街へと帰ってきた。
隠れ鬼から全ての子どもたちが解放されたのだ。
今日も帰り道に、悪ガキたちの楽しそうな声が響く。
「ヒノター! サッカーやろうぜ!」
「ふふふ、僕も新しいスパイク買ってもらっちゃった。いいだろ! ヒノタ」
「ヒノタくんー! 遅いよー!」
「わかった! いまいくー!」
それを見ていた裕子は、隣の呪道に頭を深々と下げた。
「子どもたちがみんな戻った上に、ヒノタも元気を取り戻しました。呪道さん、あなたにはなんとお礼を言っていいか……」
「いいんだよ。対価はある人に貰ってるんでね。これも仕事さ。じゃあな、姉ちゃん」
そう言って呪道は手を振って、裕子の前を去っていった。
迎えの車に乗り込み、呪道は息をつき、愚痴をこぼす。
「……はあ おい、死にかけたし、100万じゃ釣り合わねえんだが?」
山下は車を運転しながら、眉を顰める。
「そう文句言ってくれるなよ…… 俺だってそうさ。なあ、奉仕って素晴らしいと思わないか?」
無表情で呪道は肩をすくめた。
「全く思わんね」
舌打ちしながら、車を止めると山下は分厚い封筒を呪道に手渡した。
「はい、確かに受け取ったぜ。毎度」
「もう、会わねえことを祈るよ」
そして、呪道は車を降りると最後に尋ねる。
「ははっ! じゃあな。そうそう、アンタ煙草やめたのか?」
「娘に煙草くせえって言われたの思い出してな」
「会って話してみなよ。今のアンタ、いい顔してるぜ」
「ふん! 余計なお世話だ」
呪道は片手を上げて雑踏に溶け込むように去っていく。
そして山下は夏の夕空を見上げた。
「そうだな、たまには娘に会いにいくのもいいかもな……」
〈了〉
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