11 隠れ鬼との再戦
ヒノタは文句をぶつくさ言いながらも、三日間鬼ごっこ大会やパルクールの映像を見続けた。
「まったく…… あのおじさんは…… 3日で何が変わるってのさ」
しかし、友達を助けると決断した彼は今までと違い自分を奮い立たせ、頑張った。
そして、3日という余りにも短い時が過ぎた。
今日はあの場所へと向かう計画の日である。
途中までヒノタを送った呪道は肩を叩きながら彼を送り出す。
「大丈夫か? ヒノタくん。本当に申し訳ないが、おじさんはここまでだ。ヤツは大人がいると現れないんでな」
ヒノタは笑顔を作り、空元気で答える。
「大丈夫。今ならパルクールで優勝出来そうだよ」
「そうか、頼んだぞ」
危険ではあるが、呪道たちとしては早いところ、子どもたちを取り返さなくてはならず、ヒノタすらバケモノの退治計画に組み込むしかなかった。
ヒノタはリュックを背負い、あの日友人が鬼に連れ去られた秘密基地にやってきた。
「ここか…… ここでゴリアンたちを」
辺りを見回し、ヒノタはグッと恐怖を飲み込み大声で叫んだ。
「おーーーい!!! バケモノ! 出てこーーい! ゴリアンと! キザオと! シズキちゃんをかえせ!!」
これも呪道の指示通りの行動である。
すると、ヒタヒタと不気味な足音とともに黒い霧が辺りに現れる。
ヒノタは息を呑み、恐怖を堪えた。
やがてひょこと、木の影から、あの女の子が現れてヒノタを見ると屈託なく笑った。
「あら、逢いにきてくれたの? ヒノタくん? うれしいな!」
こうしてみると、普通の女の子にしか見えないのが、より恐ろしかった。
ヒノタは勇気を振り絞り、大声で叫ぶ。
「……バケモノ! 1時間だ! 僕がかくれんぼでお前から1時間逃げ切ったら、ゴリアンとキザオとシズキちゃんを返せ!」
女の子はニタァと笑いながら嬉しそうに手を叩いた。
「うふふふふ! いいわよ? 逃げられたら、ね!」
◇
呪道はペンダントを握り、呪力を探知し、ヒノタと鬼の隠れ鬼が始まったことを察知する。
「よし、かくれんぼが始まったみたいだ。おい! 急いで探さないと!」
作戦の概要としては、ヒノタが鬼を引きつけている間に鬼の本体を見つけ、調伏するというものだ。
「鬼ごっこ」をしている間は、鬼は遊びを中断してこちらに来ることも出来ない。
また、子どもに危害を加えることも出来ない。
呪道たちは被害区域の同心円上の中心と、その辺りの伝承を元に、隠れ鬼の本体の場所の見当を付けていた。
呪道、山下、裕子の3人は、鬼の今いる場所から三つも超えた山の中にいた。
「ヒノタ…… 早くいかないと!」
心配そうな裕子だが、既に息が上がっている。
嗜めるように呪道は裕子に歯を見せ笑う。
「わーってるよ。焦るな。おい、お嬢ちゃんももたついてたら置いてくぞ。悪いが人の命がかかってるんでね」
裕子はムッとしながらも必死でついて行く。
「……わかってますよ! ヒノタやその友達を取り返したい気持ちは私が1番ですから!」
山下警部はやれやれと思いながらも、裕子の背中を押した。
「よし、その意気だ。カクレオニの本体を探すぞ」