10 バケモノ対策
ずっとテレビに映し出される映像を見ていたヒノタは、呪道を振り返る。
「ねえ、おじさん……」
「なんだ、坊主」
バリバリと煎餅を齧りながら呪道は、リビングに寛いでいた。
胡散臭そうな目を向けながらヒノタは問う。
「本当にこれは必要なの?」
「おいおい、俺が信じられねえか? 時間がねえんだ。聞き分けよくしてくれや」
「でもさあ…… 何なのこれ」
ヒノタは映像を指差しながら、不満そうに頬を膨らませた。
そこには鬼ごっこの世界大会やパルクールのチャンピオンの競技の模様が映っていた。
呪道は涼しい顔で答える。
「バケモノと鬼ごっこするんだろ? お前さんには粘ってもらわなきゃ困る。その為の準備だよ。鬼ごっこのチャンピオンたちの動きを真似るんだ」
「わかったよ…… 見ればいいんでしょ? でもこの藁人形はなんなの?」
渋々と了承したヒノタはさっきから彼の隣に鎮座している藁人形を指差した。
「そいつも一緒に見てもらわないと困る。じゃあおじさん準備あるから、頼んだぞ。三日後までに全部見ることな」
「うぇぇ……」
そう言うと呪道は日野家を後にする。
落ち合った先の警察署の一室で、山下が呪道に尋ねた。
「おい、呪道、変なことやってるが勝算はあるのか?」
呪道はいつになく真剣な表情で答えた。
「ヤッベェな。霊障がついてるぞあの小僧。相当タチの悪い悪霊に憑かれてるみてえだ」
ヒノタはせっかく帰還した1人ではあるが、隠れ鬼と関わった事でマーキングされていた。
呪道に言わせれば、いずれ鬼に見つかり同様の目に遭うのは時間の問題という。
「お前がそこまでいうほどか…… 祓えるのか?」
「祓うさ。まあ、あの小僧にも頑張ってもらうがね。彼次第さ」
「まったく…… 心許ない話だな」
山下はタバコを吹かしながら、頭を振った。
そして、ボードに貼った地図を眺める。
バケモノの被害が出た場所がマークされ、地図で見ればそれはちょうど円のように広がっている。
地図をじっと睨みながら呪道は呟く。
「……さて、バケモノの正体を見つけないとな」