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4話 過去

初めての連載作品です。

出血などの描写が今後出てきます。

自傷の描写も今後出てくるので、15歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

 母は人間で、瑞月が七歳の時に病死した。

 父は魔人だった。

 どんな裏技か、怪しい戸籍を作成し、人を襲わず、人間に擬態して、人間として生活していた父は、あろうことか、引退した魔法少女だった母と出会い、何があったのか恋に落ち、結婚して、子供までこさえた。しかし、若くして母は死んだ。親戚とも疎遠だったため、父が一人で瑞月を育てることになった。

 母が死んでしばらくした後、父は関係を絶っていたはずの異界の住人たちと連絡を取り合うようになった。

 何かがおかしい、と瑞月が怪しんだ時には、父は地球を侵略しようとする異界側の魔人となっていた。

『お母さんともう一度会いたいだろう?』

 父が異界と通じていることを知り、知った事実が父にバレたとき、父はにこやかな顔でそう言った。

 母の死が、父の中で何かを変えてしまっていた。

 父を止めようと、助けを求めようとする前に、父に捕まり、不思議な部屋へ連れていかれた。

 8歳の時だった。

 抵抗できないように縛られ、冷たい石畳の上に放り出され、目に一杯の涙を浮かべた瑞月に、父は何でもないように笑顔で語りかける。

『怖がらなくて良い。時間はかかるけど、きっとお母さんに会える。これからするのは、そのために必要な手順だ』

 窓から差し込んでくる煌々とした月光に照らされた父の壊れた笑顔は、瞳に瑞月を映していないようだった。

 光の届かない夜の影に押し込められ、追い込まれた瑞月に、父の大きな手が伸び、瑞月の記憶はそこで途絶えた。


 気づいたときには、理由もなく、父の言葉はすべて正しいと思うようになっていた。

 父に言われるがまま、異界の技術を学び、習得し、魔人として様々な魔法を行使することができるようになっていった。

 13歳になり、父とともに、父が主と呼ぶ存在に従って、人間の感情エネルギー、すなわち魔力を集めるようになった。

 感情エネルギーを集めるようになってしばらくすると、今では友になった、ある魔法少女が立ちはだかった。

 召喚した魔獣と戦わせたり、時に自分と直接対決したり。

 邪魔をしてくるだけでなく、煩わしい言葉を沢山語り掛けてきて、心底面倒だった。

『友達に、なりたいんです』とか、『貴女のこと、もっと知りたいんです』とか。馴れ馴れしく、戦いの最中にも話しかけてくるのを止めなかった。

 自分は、父の言葉に従っているだけなのに。

 

 そして彼女と同じくらい、彼女の仲間だった時雨の存在も目についた。

 他にも何人かの魔法青少年が寄ってたかって戦いを挑んできたが、その一人目の魔法少女と時雨は特に目障りだった。

『こんなことをしても誰も幸せにならない』だとか、『こんなことをして、アンタは幸せなのか』だとか、時雨は戦う度に、そんな言葉を投げつけてきた。

 魔法少女と違って、時雨は、異界の魔人として相対する敵としてではなく、人間として、群衆に紛れて行動しているときにも、瑞月に近づいてきた。

『自分のことをどんな風に思っているのか知らないが、アンタはちゃんと人間だ』とか。

『人間を襲ってるとき、アンタ、悲しそうな顔してる。悪い奴には見えないんだ』だとか。

 とても、耳障りで、逃げようとすると、手を掴んできて、何故だか泣きそうになってしまったときは抱きしめてくれた。

 彼らにとって、瑞月は敵なのに。

 その場で攻撃してしまうことさえできたのに。

 結局、抱きしめられた時は、戸惑うばかりで、時雨を攻撃することはできなかった。

『俺たちが戦う理由は、無いんだ。頼むから、逃げないでくれ』

 そう言われて、怖くなって逃げて。

 そして、父の前で涙を流し、心が揺れないように強い力を分けてもらった。

 心に隙など作らないように、感情エネルギーは表出する前に魔力に変換されるように調整して、再度、魔法青少年たちを襲った。

 でも、ウザい魔法少女と時雨は、その心意気だけで、こちらの精神に直接干渉して、父の呪縛さえも解いてしまった。

 呪縛が完全に解け、父の異常さを指摘し、反発すると、あっさりと父に見限られた。

 そのまま殺されそうになった時は、頭が真っ白になって、へたり込んで動けず、『あぁ、このまま死ぬんだ』という思考だけが頭にあった。

 それを救ってくれたのが、時雨とその魔法少女だった。

 時雨は瑞月を庇って、背中に酷い怪我を負った。そうして動けなくなった時雨と瑞月を、魔法少女が他の仲間の力を借りて守りきり、最後に、父に反撃した。

 強力な攻撃に父が逃げ、瑞月は捨て置かれた。

 行く宛もない瑞月に、魔法青少年たちは手を差し伸べてくれた。

 そして、瑞月の強い魔力とその能力に気が付いた精霊が、契約をもちかけた。

『君の父親も操られている。その呪縛を一緒に解こう』

 父もまた呪縛により操作されていると知り、すぐに契約した。

 そこから、救ってくれた魔法少女に保護されて、一緒に生活する中で、義務教育を受けず、人間としての最低限の生活の仕方を知らず、自分がいかに普通の人間としての生活をしてこなかったか気づかされた。

 時雨に対する想いが、恋だと知ったのも、しばらくしてからだった。

 そして、父を取り戻すために、普通の生活を手に入れるために、魔法少女として戦った。

 戦って、戦って、戦って。

 結局、父は呪縛から解放された直後、瑞月を庇って、最後の最後で瑞月の目の前で事切れた。

『瑞月、愛してる。生きて、前を向いて走れ』

 そんな言葉を最期に、父は瑞月の腕の中で死んだ。

 地球では、魔人や魔獣は遺骸さえ残らず消えていく。

 亡骸は冷たくなっていくより先に、光の粒になって、舞って、瑞月の元から去っていった。

 前を向いて走れ、と言われた。

 そこで止まる訳にはいかなかった。

 瑞月は、最後まで仲間とともに戦い、かつて主と仰いだ、首魁である魔人の王を滅ぼした。


 戦いが終わって、魔法少女の家に身を寄せていた瑞月の元に、数ヶ月して魔法公社の人間が訪ねてきた。

 魔人とのハーフである瑞月を確実に保護するために。

 正式に、義務教育、必要であれば高等教育を受けさせるために。

 と同時に、仲間を含め、精霊との契約は解除された。戦いが本当に終わったのだと実感した。


 公社の近隣で生活していくため、瑞月は仲間たちと別れた。

 時雨と言葉を交わしたのもその時が最後だった。

 瑞月が、元魔法青少年たちが14歳、中学2年生の終わりのことだった。


 ――――――――――――――――――――――――――――――


 そんな経緯があった。

 魔人として、敵として戦った過去がある以上、信頼できない、再契約できないというのは、仕方ないかもしれない。

 けれど、これまで戦ってきたことも、自分の存在も、すべてが否定されているようで悔しかった。


「そう。わかった。まあ、予想できていたことだけど。

 でも、どうしようか。

 君の力を借りる形でだけど、私また魔法少女になったみたい」

「そのことは、申し訳ないが、公社に連絡させてもらう。もちろん、観羽根に落ち度はないし、俺を助けてくれたせいだ。

 しっかり説明してくる。

 観羽根に何か迷惑をかけることはしない。と言いたいが、こうやってケーキや洗濯をしてもらってる時点で、思いっきり迷惑をかけてるな」

 そう言う時雨の顔は、恐らく申し訳ないという気持ちなのだろうが、不愛想が極まっていて、中々表情が分かりづらかった。昔から変わらない。

「迷惑だなんて思ってないから。大丈夫。

 それよりも、公社への連絡は、お願いする。

 私が言うより、不知火くんから言った方が良いでしょ?」

「そうだな、わかった。

 公社の連中がどう動くかは分からない。

 今回の任務は、かなり厄介な案件だ。命の危険もある。そういう意味では、あまり、観羽根には魔法少女を続けてほしくない」

 真顔で時雨が言うものだから、瑞月は少し驚いた。

 普通の人間になったことを証明し続けなければいけなかった瑞月だが、先の自力で魔法少女になった件でそれは難しくなった。

 ただの魔力持ちなら、精霊と関わらない限り無害だった。

 しかし恐らく、魔人の血筋が作用して、魔法青少年から力を借りる形で魔法少女になることができると分かってしまった。

 魔法青少年を捕まえることができれば、容易に悪用できる。

 悪意のある存在ではないと証明するためには、積極的に魔法少女として雇用される他無いと予想できた。

 ただ、それでも、時雨は瑞月に危険なことをしてほしく無いのだろう。

 そう願ってくれる時雨の想いが、ただ、嬉しかった。一人の人間として生きてほしいという願いが、有り難かった。

「心配してくるんだ。ありがと。

 でも、大丈夫。勿論、戦いは大変だけど、不知火くんとまた戦えるなら、嬉しい」

 14歳の頃よりは、素直に好意を伝えられるようになった。

 笑顔も上手くなったと思う。

 瑞月の気持ちを知らないであろう時雨は、瑞月の思いがけない笑顔に、目を僅かに見開いた。


 制服が乾き、日付を超えた頃、時雨は瑞月のアパートを去っていった。

「また連絡する。それと、改めて。今日はありがとう。助かった。

 でも、夜は一人で出歩くな。

 任務になれば、迎えに行くから」

 連絡先をゲットした上に、再会を約束する言葉までもらった。

 時雨が去った後、食器を洗い、風呂に入る。

 初恋の人と、連絡先を交換してしまった。しかも、また、会えるらしい。

 あの時は、皆の事、時雨の事は忘れようと思って、皆の連絡先を聞くこともなく別れた。その方が、彼らは幸せになれると勝手に思い込んで。

 今思えば、思春期的な気の使い方だったし、もっと素直になれば良かった。

 だが、結果的にまた時雨と出会って、今度は間違えること無く、繋がりを作ることができた。

 

 ――夢じゃないよね。夢みたい。


 ベッドに潜り込んでも、瑞月は中々寝付くことができなかった。

次回長いですが、区切りが良いので、今回は短めです。

土日は朝8時ごろ投稿予定。


できるだけ毎日連載の予定です。

面白いと思っていただけましたら、ブックマーク、ご評価を頂けますと幸いです。

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