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12話 失踪

初めての連載作品です。

出血などの描写が今後出てきます。

自傷の描写も今後出てくるので、15歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

「どうして不知火くんと連絡がつかないの……」

 両手を口元で組んで表情の見えない法月に、瑞月は嘆くように尋ねた。

 法月の執務室は、煙たく、薄暗く、以前、時雨と来た時と同じ部屋なのに雰囲気がまるで違う。

 煙草臭い空気を吸い込み、瑞月は少しむせた。

 魔人との遭遇、そこで語られた手がかりについて時雨に伝えようと何度も連絡したが、それから1週間、彼に連絡がつくことはなかった。

 学校にも行っていない様子で、家を訪ねたところ一人でマンション暮らしだったらしく、誰も出てこなかった。

 

 ――私、不知火くんのこと、なんにも知らなかった。ご両親のことも、学校でのことも、ピアノのことも。


 だから、必死に探した。

 索敵魔法で痕跡を辿った。

 時雨の自宅近くの高架下で痕跡が途切れた。

 その周辺を走り回って、歩き回って。

 雨が降っても、探すことは止めなかった。

 それでも結局、時雨を見つけることはできなかった。

 

 時雨の行方について魔法公社に問い合わせたが、数日経っても連絡がなく、瑞月は法月の執務室に乗り込んだ。

 法月は、おもむろに顔を上げ、じっと瑞月を見つめた。ゆっくりと法月は組んでいた手を離し、天を仰いだ。

「わからない。公社も把握できていないのよ」

 困った、と法月は溜め息をつく。

「なら、精霊たちに探させて。

 人間に無理でも彼等なら探索できるでしょ?」

「とっくに依頼したわ。でも見つからないの」

「どういうこと?

 精霊におおよその場所すら掴ませないなんて。そんなことが可能なの?」

 精霊の力は人智を超え、魔法青少年を生み出すほどであり、荒事以外であれば、人類の力など不要な存在だ。

 荒事が苦手な彼等は、魔人たちとの戦闘に関して、人類に力を与える形で助力している。

 そんな彼等は魔獣の出現をいち早く察知し、魔法青少年に知らせたり、まだ見ぬ魔法青少年となる仲間の気配を探ったり、探索のプロでもある。

 魔法関連の人探しなら、すぐに見つかるはずなのに。

 

 ――なのにみつからないって。


「知り得る中での可能性としては、ひとつある」

 顔を上げて法月は続けた。

「異界とそのゲートよ」

「異界?」

「異界と精霊界は別の法則が働いている。だから、精霊の力が及ばない。

 だからこそ、異界からの地球・精霊界への侵略を人間と精霊が協力して対応している訳。

 精霊の探索能力も異界やその入り口であるゲートには届かない」

「なら、不知火くんは異界にいるということ?」

「あるいは、魔人の作成したゲートのすぐそば、といった可能性は否定できない。

 そうじゃないとみつからない説明がつかない」

「なんで、そんなところに不知火くんが」

「萌音を救う手がかりを探しに、でしょうね。

 あなたや私達から連絡を絶っている理由は分からないけど」

 異界を探ろうとする理由はわかる。

 だが、なぜ単独行動をする必要があったのだろうか。

 口数は少ないけれど、報連相を怠る人ではなかったはずだ。

「どうして、一人で」

「それをここで考えても埒が開かない。本人をみつけて聞くしかないわね」

 そう言うと、法月は机の引き出しから煙草を取り出し、紫煙を燻らせた。

「時雨を探す」

 疑問をグルグルと悩んでいる暇はない。瑞月は、踵を返して、執務室を後にしようとする。

「まあ待て。精霊たちが探知できなかった場所が複数ある。

 ゲートだ。そこに時雨がいる可能性は高い」

 顔を見なくても、ニヤリと法月が笑っているだろうことは予想がついた。

「それを早く言ってよ」

 法月が取り出した地図を、瑞月は素早く奪った。



 精霊と親和性が高いという理由で、公社では紙の地図が現役で使われる場面が多い。折りたたまれた地図を広げて、瑞月はじっくりと確認する。地図には、丸い印が複数書き込まれていた。

 一つ一つは離れており、公社からも距離があった。

 高層ビルになっている公社の屋上に立った瑞月は、地図に描かれた地点の一箇所を確認し、その方角を見据えた。地図をポケットに収めると、変身はせず、そのまま軽い動作で空中へと歩を進める。

 爪先に魔力を籠め、グッと駆け出すように、全身に力を入れる。

 そして美しい放物線を描いて、少し離れたビルへと飛び移り、飛び跳ねて舞い踊るように、一直線に進んだ。


 そうやって目的地を一つ一つ回り、時雨や魔人の気配を探る。

 地図に描かれた情報はここ24時間以内のモノと聞いたが、既に痕跡が全く無く、ゲートが既に撤去されてしまった場所が複数あった。


 ――もしかしたらもう、異界に行ってしまったのかもしれない。


 魔人としての能力をほぼ失っている瑞月には、そう易々と異界に行くことはできない。

 時雨が異界にたどり着いていたら、そう簡単に取り戻すことはできない。

 

 ――それよりも理由がわからない。

  本当に萌音のために、異界に行くと決めたの?

  教えてもいない情報をどうやって手に入れたの?


 考えてもどうしようもない。

 そして、印の付いていた最後の一箇所、偶然にも、時雨と再会した神社に瑞月はやって来た。

 午前から飲まず食わずに探し続け、もう黄昏時だった。

 茂る草木は春よりも鬱蒼としていて、夏の始まりを感じる。

 葉の擦れるざわめきは、以前よりも冷たく感じられた。

 鳥居を抜け、境内に入ると、視界が一瞬歪み、肌のひりつくような感覚が襲った。


 ――間違いない。結界だ。


 瑞月は唾を飲む。

 目に映るものは普段と変わりないが、ここが異界と繋がっているという感覚があった。


 ――不知火くんはここにいる。


 ひりつく感覚と期待と緊張で、手が汗ばんでいる。

 そんな手のひらの湿り気に気を取られた時、本殿の裏手から魔力が伝ってくる気配があった。

 ハッとして、ゆっくりと呼吸を整え、砂利の音が立たないように、そっと裏手に近づいた。


 そこには、期待通り、予想通り、そしてそうであって欲しくなかった通り、時雨がいた。

 瑞月に背を向ける形で立っており、表情が読み取れない。

 そして、時雨の肩越しに、一人の男性が立っているのが見えた。

 男性と形容したが、実際にはよくわからない。

 それは黒い何かを羽織った何かであり、それでいて表情がある。

 ただ、漏れ出る声は男性のそれであり、随分と慕わしそうに時雨に話しかけている。


 ――魔人の首魁だ。


 瑞月は直感でそう感じた。

 かつて自分の主だった魔人、そして最後に萌音と一緒に倒した魔人。あの底しれない雰囲気。

 この黒い何かも、かつて戦った魔人の首魁と同じ雰囲気があった。魔力を全く感じないのは逆に探知させない高度な技術を裏付ける。

 すぐにでも飛び出して、時雨と会って話をしたいが、何故、戦いもせずに魔人と思しき存在と話をしているのか分かるまで、不用意に飛び出すのは危険だ。

 逸る気持ちを抑え、魔力と気配を押し殺して、様子を伺う。


「やっと会えたな」

 魔人と相対しながら、時雨はいつも通り淡々とした物言いだ。

「君の居所が、すぐに魔法公社の方に嗅ぎつけられてしまってね。

 異界に行く前に連中に見つかっては君も困ると思ったんだ。

 公社から一番遠いこのゲートも、そう遠からず見つかるだろう。

 手早く済ませよう」

 魔人は飄々と答える。顔が無いのにニヤニヤと笑っているのがわかる。

 魔人の背中に真っ黒い渦が生まれ始めた。

 瑞月も魔人として活動していた時代、よく使っていた異界へのゲートだ。

 生まれた、と言っても実際には隠されていたゲートが出てきただけ。

 だが、それが時雨の目の前に現れたことに、瑞月は目を見開いた。


 ――本当に、異界へ行くつもりなんだ。


 恐らく、間違いなく萌音のために。

 

「君は百瀬萌音を救う方法を知る。僕は君からその白い魔力を得る。

 君の力さえ手に入れば、地球はこれ以上襲わない。異界の内乱を収めるのに力が必要なんでね。

 君のような白い魔力が異界には存在しない。そして強いカウンターになる。

 異界の内乱が収めることができれば、僕はこれ以上地球へ魔人や魔獣を送り込むような真似はしない。

 先日したこの約束は、必ず守るよ」

 

 ――どんな悪夢だ。

 

 瑞月は目が回る思いだった。

 萌音を救うために、時雨が犠牲になってしまっては何の意味もない。

 どこまでもどこまでも自分勝手な感情だが、でも、萌音も時雨も失いたくない。

 そして、時雨は選ぶのだろう。

 凛と真っ直ぐに立つ時雨の背中は、魔人の言葉を聞いても揺れ動くことはなかった。 

「わかった」

 瑞月は悲鳴を上げそうな口を必死で押さえた。

「別に死ぬわけじゃない。僕と一緒に異界に来てもらうだけだよ。

 進むべき道が分からなくなっている君には、ちょうど良い選択肢じゃないかな」

 ニコニコと嬉しそうな魔人は腕らしきものを時雨に差し出した。

 一瞬間があったように見えたが、時雨はその手を取ろうと腕を伸ばした。

 もう、我慢する必要はなかった。


「勝手に独りで決めないで!」


 気づいた時には、時雨の腕を掴んでいた。

 感情のままに魔力が膨れ上がって変身し、瑞月はその力のままに瞬間的に時雨たちの傍まで移動していた。

 自分でも無意識の行動だった。

 ハッと気がつくと、魔人はその腕から魔法を放つ瞬間であり、反射的に空いている手でそれをいなした。

 そのまま掴んだ時雨ごと、魔人から距離を取る。

「おやまあ、やはり辿り着かれてしまっていましたね」

 魔人はそれほど残念でもなさそうな物言いだ。

 魔人は両腕を広げて、小首を傾げる。

「あなたも稀有な存在だ。半分魔人のあなたは地球に居づらいのではないですか?

 時雨くんと一緒に、異界に来ませんか?

 萌音さんも救える。時雨くんとも一緒にいられる。

 息のしづらいこの世界から解放される。

 そして、君達の力があれば、魔人の襲来を永劫収束させることもできる。

 何も悪い話では無いと思いますがね。

 いかがでしょうか、観羽根瑞月さん」

 その言葉が瑞月の解釈通りなら、殆んど耳触りの良いことばかりだ。

 では何故魔人は瑞月にとって都合の良い事が何か知っているのだろう。

「この魔人の言うこと、不知火くんは信じるの?」

 瑞月は魔人ではなく時雨に問うた。

 掴んだ手に自然と力が入った。

「あぁ。

 こいつは、俺に真実を教えてくれた。

 萌音の真実も。俺達の真実も。

 こいつらだって、被害者だ。

 だから協力することにした。

 これで萌音も皆も助けられる」

 時雨の瞳孔の開いた瞳に、瑞月は悪寒を感じた。

「真実って何のこと?

 魔人が被害者って何の話……?」

 時雨が何を言っているのか分からない。

 混乱と、恐怖で身体がすくむ。

 時雨は、そんな強張った瑞月の掴んだ手を振り解いた。

「不知火、くん?」

「お前は何も知らないんだな。

 知っていて、黙っているのかと思っていた。

 それが観羽根なりの優しさだって、思ってた。

 けど、違ったんだな」


「知ってるって……一体何を?」

 全く見当がつかなくて、問い返す瑞月に、時雨は呆れたようにため息を付いた。

「俺たちは役者で舞台に揃えられたただの役者だ。

 俺たちの人生はあいつらが演劇を楽しむだけに準備されたものだってことだよ。

 魔人だって俺たちと同じだ。

 あいつらも俺たちもみんな、精霊が用意した人形だってことだ。

 魔人たちにも人生があって、俺たちにも自由な人生がある。それを精霊たちに勝手にいじくりまわされることが、どれだけ不快か。

 だから俺は、異界に行って全部をひっくり返す。 こんな、作られた世界、みんな俺が壊す。

 そうすれば、萌音だって、救える」


 萌音と同じような話を、時雨がしていた。

「ねえ、それってどういう事?

 精霊が私達を操ってるの?

 そうだとして、魔人と手を組んで、本当に萌音は助かるの?」

 

「それ以外に、萌音を救う手立てがあるのか?

 それは一体いつだ?

 いつまで待てば良い?

 そうしている間にも萌音は静かに死に向かっていくかもしれない。

 それを黙って見ているなんて、俺も、依子も、誰より碧斗が我慢できない。

 何かを犠牲にしてでも、萌音を目覚めさせられるなら、俺達は誰だって、自分を犠牲にできるはずだ。


 観羽根は違ったんだな」


 吐き捨てるような言葉が、瑞月の胸を差し貫いた。


 ――私が、傷ついた顔なんてしちゃいけない。

 ――だって、不知火くんが、きっと正しい。


 言葉が続かない。


「ちがう」


「いや、いいんだ。観羽根の意見はどうでも良い。俺は、俺の為すべき事を為す」


 冷たく、鋭い言葉が、降ってくる。

 それは、瑞月の歩みを止めるのに十分に重い言葉だ。

 だが、同時にこう思った。

 

 ――不知火くんは、こんな風に、私を蔑ろにする人だったろうか?

 

 時雨は萌音だけでなく、瑞月に対しても、依子に対しても、決して粗雑な扱いをする事はなく、邪険にすることもなかった。


「不知火くん、萌音を救うのに、私達に相談も無いなんてどうして」

「そうしなければ、萌音を救う方法を教えないと言われたからだ」

「それでもあなたなら、何かメッセージを残したはずでしょう?」

「こんな切羽詰まった状態で、そんな事をする余裕なんてない。

 もう、いい加減にしてくれ」

 その声も、理由も、何もかも、瑞月にとって違和感の塊だった。

 何より、この問答を黙って静観している魔人の視線が痛い。

 

 ――それはつまり、

 

「あなた、不知火くんに何をしたの?」

 静かな怒りを、瑞月は魔人にぶつけた。

 魔人は悪びれもせずに言う。

「ふむ。何かしたとするのなら、急ぎ私達と合流していただくため、多少視野が狭くなる暗示はかけさせて頂きましたよ。

 ですが、彼が嘘をついているわけではない」

「別に、俺は操られているわけじゃない。

 全て、自分で選択したことだ」

 魔人の言葉を、時雨が後押ししたが、瑞月にはその魔人の言葉だけで十分だった。

「嘘じゃなかったとしても、不知火くんは、たった一人のために、全てを投げ出して、独りになる人じゃない。

 だってそれは、みんなのこれまでを、これまでの努力を裏切ることになるから」

 萌音が一人一人仲間を集め、独りで戦って負けそうになって、仲間で助け合って、ここまでやってきた。

 5人はそれぞれに個性が強く、それぞれがそれぞれの孤独を抱えて生きてきた。萌音が楔になって仲間になって、お互いの孤独を埋めあって、分かち合って、ここまで戦い抜いてきた。

 一人で決断して、魔人の根城に乗り込んで瀕死の怪我を負ったとき、怒ってくれたのも助けてくれたのも時雨と萌音だった。元々敵だった瑞月は、仲間からの信頼を得るために成果をあげようと、かつての同僚だった魔人達を倒そうとした。同時に、仲間を信頼できず、単独行動で魔人の根城に忍び込んだ。そういう、独りでできるという妄執が、固執が、瑞月にはあった。けれど、魔人達は瑞月の想像以上に手強く、実力を隠していた。嬲り殺されそうな状況に追い込まれ、精神も肉体も擦り切れそうになった時、萌音が敵に向かって飛び込み、飛来する絨毯爆撃から時雨が必死に守ってくれた。

「瑞月のバカ!なんで独りで背負い込もうとするんですか!

 仲間じゃないんですか!?どうして相談してくれないの……」

 そんな風に叫ぶ萌音に、瑞月は答えを窮した。


 ――信じてほしいのに、自分は他人を信じられないなんて、そんなの、言える訳ない。


「観羽根。俺達の事を信頼できなくても良い。

 だけど、失望はしないでくれ。

 俺達の事を諦めて欲しくない」

 いつか心を通わせたい。けれどそれは、瑞月に魔人の血が流れている以上無理だと思っていた。萌音達は憐れみと魔人を倒すという目的遂行の為に、瑞月に手を差し伸べたに過ぎない。そう思っていた。

 時雨はその卑屈を、最初から見抜いていた。

 だからこそ、『諦めてほしくない』なんて言葉を選んだのだと、瑞月は感じた。

 爆風から瑞月を守った時雨は、瑞月を力強く抱きしめていた。

「今までも、これからも、俺達は一人で戦う訳じゃない。

 誰かに助けられて、誰かを助けてここにいる。

 観羽根もその中の一人なんだ。

 俺の、俺達の手を取る勇気を、持ってほしい」

 普段、口数の少ない時雨の強い言葉に、心臓が脈打つのを感じた。

 あの時、瑞月は恋に落ちた。

 時雨は、独りになろうとした瑞月に『独りになるな』と手を差し伸べた。

 そんな時雨が、今独りになろうと行動するなんて思えない。

 魔人の悪意が、時雨を操っている。

「不知火くん、せめて、私を連れて行って」

 たとえ、魔人の口車に乗せられる事になっても、時雨を一人にすることだけは避けたかった。

 振り払われた手に、もう一度縋ろうとする。

 けれど、今度は魔力障壁で遮られた。

 見えない壁に瑞月の手がぶつかり、火花が散る。

「どうして……」

「観羽根。君は連れて行かない」

 酷く冷めた声が聞こえる。時雨のいつもの淡々とした声なのに、拒絶の色がはっきりと見えた。

「理由は……」

 会話さえ閉じられそうで、瑞月は必死に言葉を紡ぐ。

 けれど、時雨はにべもない。

「必要ないからだ」

 そのとき、時雨の瞳は真っ直ぐに瑞月を見ていた。

 魔人による霞がかった瞳ではない。本来の時雨の瞳。

 心からの言葉。

 そして、何も言い返せなくなった瑞月は、ヨロヨロと数歩下がった。

 時雨は瑞月に歩み寄ることも、声をかけることもなく、魔人の元へ進んだ。

「お話は終わりでよろしいですか?」

 にこやかな魔人に、時雨は頷いた。

「あぁ。話は終わった」

 時雨は、ゆっくりと前へ進み、魔人と共にゲートの中に消えていった。

 一度も、瑞月の方へ振り返る事は無かった。

 時雨が消えると、ゲートは収束し、最後は砂のように散る。

 瑞月は、立ち尽くす他なかった。 

できるだけ毎日連載の予定です。

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