02 やらかし
エルサニア南部の街道沿いにある小さな村、コルメゾ。
ここはエルシニア王国との国境の街ブラウペンに一番近い村。
マーリエラさんたちが戻ってくるまではお行儀良く待機、
のはずだったのですが、ちょいとやらかしちゃいました。
事の発端は、村の仮設ギルドで職員さんから聞いた最新情報。
アルセリア王国のシルメイア王妃様が第二子御出産、っていうビッグニュース。
命名:ユイメイア姫。
ゼルサニア王子の妹君となられるそのお姫さまは、
それはそれは可愛らしい女の子ちゃんだそうですよ。
えーと、もしかしてあのお別れ会の時、すでに……
まあ、何はともあれ、めでたい。
てな訳で、あれだけお世話になった方々に何もせんのは流石に不義理だよなってことで。
実はこの辺りの森は、ミリオネアうさぎの生息地。
その圧倒的滑らかさを誇る毛皮と捕獲難度の高さ、
1羽でも狩れれば大金持ち間違い無しの希少性から、
付いた名前が、ミリオネアうさぎ。
そしてそのしっぽは、幸運のお守りとして霊験あらたかこの上無し。
いや、異世界なので、本当に効果アリのお守りなんですって。
まさに、生まれたばかりのお姫様の健やかな成長をお約束する神アイテム!
えーと、例の放置神じゃない神さまだといいですね……
最近は採取依頼以外にもそこそこ冒険者らしいことが出来るようになっていた俺は、
広範囲『鑑定』があればワンチャンイケるんじゃね?
などと調子に乗ってミリオネアうさぎ狩りに向かい、
今まさに最強の魔うさぎに狩られそうになってますよ、と。
ホントどうしよ、スーちゃん……
---
『メタルっぽいスライム』の分体であるスーちゃんは、
本体のアンチさんからいろいろと教わったおかげで、かなりの芸達者さん。
まだカタコトだけど、ちゃんと意思疎通出来る『念話』とか、
相手を即効で眠らせる『睡眠結界』とか、
威力はさほどではないけれど、かなりの精度を誇る水弾とか。
もちろんプルプル感もめっちゃ可愛らしい、我がパーティーのマスコット的存在。
ただ、スライムお得意の丸呑み攻撃は実は苦手。
以前、悪党な若造にテイムされていた頃、
食べたくもないモノを無理やり食べさせられる羽目になり、
そのせいで丸呑み関連はトラウマな、小食スライムさんなのです。
アンチさんと融合して美味しい食事を味わう楽しさに目覚めたので、
食事としての捕食行為は問題無いそうですが。
つまりは、俺たちが普通に食べ物と認識しているモノ以外は食べられないよってこと。
そもそも、俺の頭の上でプルプルしている可愛いスーちゃんに、
無理強いの無茶喰いなんてさせたくないですし。
で、このピンチな状況。
魔法耐性もハンパ無しというあの魔うさぎには、
スーちゃんご自慢の『睡眠結界』での奇襲も効果無し。
やっぱ家長でリーダーの俺が何とかせねば。
でもなあ……見てくださいよ、アレ。
俺たちのことを狩る気満々ですよ、あの最強魔うさぎ。
ってか、何であんなに殺意満々な眼をしていらっしゃるのですか、うさぎさんなのに。