19 パーティー
あれからしばらく、孤児院のご厄介となっております。
プチ世直し旅の方はひと休み。
実は俺たちのパーティーに、巡回司法省の正式な特務部隊として動いてもらおう、
なんていう話しが、司法省の上の方で動いてるそうで。
正直、困るよね、そんなの。
マーリエラさんのためなら、たとえ火の中水の中ですけど、
いかに世のため人のためとはいえ、うちのみんなを揉め事荒事に積極的に関わらせるのは、家長として断固反対。
はっきり言って、これ以上無理強いしてくるようなら、
司法省とは袂を別つ覚悟アリ、です。
「……ごめんなさい」
いや、マーリエラさんは謝っちゃダメ。
現場が全力で任務を果たすことに集中出来るよう、
所属組織のやらかしで頭を下げるのは、上に立つ人たちの仕事。
「流石はノアルさん、それでこそ我が終生のライバル」
よせやい照れるぜ、
って、ジョウトさん!?
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例の、司法省特務部隊とやらになっちゃったそうです、ジョウトさん。
もしかして、俺たちの身代わりに……
「いえ、『渇魂刀』が、是非に、と」
あら、そっちですか。
せっかくはるばる西方まで来たのに、戦争当事国のエルサニア国内は微妙に平穏。
かといって、戦争に首を突っ込むわけにもいかず。
ならば積極的に狩り場を探すべし。
ツワモノたちの美味しい魂は、揉め事荒事ひしめく場所にこそアリっ。
てな感じの『渇魂刀』さんの強い要望で、巡回司法省特務部隊に。
まあ確かに、そういうのをガツンと解決するのが司法省のお仕事ですけど、
ジョウトさんはそれでよろしいのですか?
「巡回司法省の"全てにおいて中立"という立場は、今の自分の立ち位置を見極めるのにふさわしい居場所かと」
「もちろん、自身の能力を全力で活かせる職場でもあるのです」
でも大変でしょう、これからの慣れない国でのソロ活動は。
「実は、案内役の方とパーティーを組んだのです」
「正確には、お目付け役なのかもしれませんが」
あれ? 大丈夫なのですか、
固有スキル『素浪人』の、パーティーメンバーデバフの制約とか。
「初めまして、ではありませんね」
「ジョウトさんの相棒 兼 お目付け役の、特務司法官ミュンシェラです」
おっと、あなたでしたか。
やっぱり覆面姿よりも今の方が素敵ですね、当たり前ですが。
えーと、ご無沙汰しております。
その節は、あれだけお世話になったのにご挨拶も出来ませんで。
「それはかまいません、仕事ですから」
「ですが、もしマーちゃんを泣かせるようなマネをしたら、私が直接ノアルさんを処します」
マーちゃんって、マーリエラさん?
「ミュン先輩、うちの人をいじめちゃ駄目です」
「でも確かに、先輩ならジョウトさんとも問題無くパーティーを組めるかもしれませんね」
どういうこと?
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ミュンシェラさんの能力は、ズバ抜けた隠密・隠蔽能力。
それを活かした潜入捜査活動でのお手柄の方も数知れず。
おっと、つまりは……
「正式なパーティーを組んだのに、メンバーとしてカウントされないのです」
「つまりは『素浪人』の能力を上回るほどの、俺よりも遥か高みにおられる方なのです」
そりゃスゴい、あの強烈な固有スキルすら欺くとは、流石は司法省イチの隠密の達人。
「武術の方も『渇魂刀』が一目置くほどの達人」
「独り身での用心棒稼業の頃と比べて、学ぶことばかりなのです」
それもスゴい、まさにお似合いのふたり、
いや、3人パーティーでしたね。
「先輩のこと、くれぐれもお願いしますね、ジョウトさん」
「仕事の方は司法省でも指折りの猛者ですが、私生活の方は……」
「マーちゃん、それ酷くない?」
頑張れ、ジョウトさん……




