15 天誅
『渇魂刀』
斬られた者の魂を削ぎ、それを吸ってさらにチカラを増す妖刀。
相手が手練れであるほど得られる魂は美味しいし、
勝てば勝つほど刀としての霊格を増す。
これぞまさに、対達人用必殺兵装。
いや、正確には必殺に非ず。
『殺しちゃうと、その人からは二度と魂をいただきます出来なくなるでしょ』
喋る妖刀は、ある意味優しいグルメさんでした。
これまでの持ち主のように完全に意識を乗っ取られなかったのは、
ジョウトさんの固有スキルのおかげ。
つまりは、パーティーメンバーとなった『渇魂刀』の躁心能力までデバフされちゃったから。
結局、何だか妙な感じでお似合いな、ひとりとひと振り。
稼業的にツワモノとの対峙には事欠かない用心棒として、
異世界ソロ活動の限界を感じていたジョウトさん。
相手がツワモノであるほどヤル気を増す妖刀のサガか、
かつて無いほど相性の良い持ち主と離れたくない『渇魂刀』
そんな、WINWINでらぶらぶなふたりに、ある日、訪問者が。
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『自国の利益のためだけに召喚行為を繰り返す悪虐非道な王国に天誅を』
異国からの訪問者は召喚者。
遥か西方、エルサニアという王国で行われている邪悪な召喚儀式の被害者のひとり。
打倒エルサニアのため、今はひとりでも多く一緒に闘ってくれる同士が必要、
是非仲間になって欲しい、と。
スカウトという仕事の関係上、今は本名を名乗れないとのことで、
コードネーム"ゼロノウン"と呼んでほしい、
なんて言われたそうですが。
あー、たぶん拗らせちゃった系……
そんな、いかにも怪しげな訪問者からの頼み事を、
一も二もなくふたつ返事で了承しちゃったジョウトさん。
同郷の士の頼み事は断れぬ、
っていうか、何せ自分以外の召喚者に会うのは初めてなので舞い上がっちゃった。
最近、身の回りに美味しい達人が少なくなったことがご不満だった『渇魂刀』も、
西方の達人たちに会える、と大喜び。
訪問者の『転送』魔法でこの国に連れてこられたのは、つい先日。
本拠地などには立ち寄らず、すぐに任務に回される。
これこれこう言う訳で、この街道を通る召喚者ふたりを説得して欲しい。
もし聞き入れられないのなら……
そして、俺たちと邂逅。




