14 素浪人
蹴芽石 錠斗 (ケルメイシ ジョウト)さん。
やはり、召喚者でした。
"天災召喚"で呼ばれたのだそうです。
誰かに召喚されるのではなく、無作為な自然災害的にこちらの世界に迷い込んでしまうというやたらと迷惑な召喚。
いや、普通の召喚だって充分に迷惑なのですが。
東方の某国に、ある日突然来てしまったジョウトさん。
まさに異世界ひとりぼっちだったそうですが、
あちらの世界での武術の経験と、
授かった固有スキル『素浪人』がバッチシ噛み合ったおかげで、
どうにかフリーの用心棒として暮らせるように。
召喚されたのが東方でも特に和風文化な地域であったことも幸いしたのでしょうね。
固有スキル『素浪人』
いろいろと制約が多いそうですが、
正々堂々、1対1の果たし合いでは負け知らずだったほどの強さを誇るスキルだとか。
えーと、俺の"スイッチ"は邪道だから、ノーカンってことで。
ちなみに、制約とは。
その①:武器は日本刀特化。
正確には、武器も防具もバフが掛かるのは和風の装備のみで、
洋風だと逆に弱体化しちゃうそうです。
で、刀に素浪人姿。
その②:ソロ専門。
パーティーを組むと、メンバーを増やすほど弱体化。
しかも、本人だけじゃなくメンバーにもデバフが。
で、孤高の素浪人。
そういう制約こそあれど、幼い頃からの武術の経験と相まって、
単騎無双の素浪人な用心棒稼業が出来たジョウトさん。
そこまではまあ、異世界召喚モノならこんなもんかなって感じだったそうですが……
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とある町の質屋さんで、掘り出し物を探していたジョウトさん。
その頃、腰に差していた相棒も、質流れで手に入れたいい感じな業物。
二匹目のドジョウで柳川鍋ご馳走さま、
なんてことを考えながら店内を物色していると、
店のオヤジが妙に意味ありげな態度。
さては訳アリの秘蔵品でもと問いただすと、
奥から慎重に持ってきたのは厳重に梱包されている長物。
遥か昔から数多の使い手が手懐けようとしてきたが、
どうにも手に負えないじゃじゃ馬の一振り。
いや、手に負えないどころか手にするのも危険な極め付きの妖刀、とのこと。
自身の固有スキルに絶対の自信を持っていたジョウトさん。
刀と名の付く武器なら使いこなせぬモノ無し!
と、厄介払いプライスで譲ってもらい、
いざ試してみると……




