11 気配
国境を無事に通過。
幌馬車道中は安全快適。
アンチさんが、いつも以上に気合を入れて広範囲守護結界してくれております。
もしかしてアンチさんって、歳上ナイスミドルに弱いタイプ?
『ホント嫌になるくらい鈍感だよね、おじさまって』
「それがノアルさんらしさなのですけど……」
……今日も慰めてね、スーちゃん。
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モリさんの娘さんたちが滞在しているのは、懐かしのオーバンの街。
ティルハシエル院長さんとは速達鳥で便りを交わしているけれど、訪れるのはあの時以来。
孤児院のみんな、おっきくなったんだろうな。
『おじさまっ、来たよっ』
はい、俺の広範囲『鑑定』にもビンビン来てますよ。
もうじきオーバンが見えるかという所まで来た頃、
街道の人通りが途絶えるのを見計らったかのように、
現れたのは怪しい気配、ひとつ。
『私の結界じゃ弾けないくらいの手練れ』
『これってたぶん、特殊スキル持ちの召喚者』
ふむ、エルシニアからの追手では無く、
脱走勇者絡みの刺客ってことかな。
まあ"低職"召喚者ふたりを一度にゲット出来る美味しい状況だし、
今がチャンスって考えるのも間違いじゃないよね。
おっさんふたりで悪いけどさ。
「あれは……只者ではないです」
「私の『深・鑑定』を阻害するほどの異常に強力なスキルか魔導具」
「皆さん、ご注意を」
ご忠告ありがとうございます、モリさんは絶対に幌馬車から出ないでください。
アンチさんとスーちゃんは、幌馬車のガード、お願い。
「私が先行します」
「ノアルさんは……」
はい、打ち合わせ通りですね。
マーリエラさんが対処出来ないほどの手練れなら、俺と交代。
もし怪我なんかして玉の肌に傷でも付けたら、
ケダモノみたいにペロペロ治療しちゃいますから。
絶対に深追い厳禁、ですよ。
「もちろん私にも行使する権利がありますよね、その治療……」
えーと、それじゃ、行きますか!




