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第30話 エリスの帰還④

「はやとさんご無事ですか!?」

「助かりました!」

「なぜエリス様が剣を……」

「エリスの呪いがLv5になってしまったせいです」

「なるほどです。大体分かりました」


 呪いが発動しない範疇でセラフィーラさんへ端的に情報を伝える。

 土煙でさっきの雷で魔王がどうなったか分からない。できる手を打たなければ……。


「セラフィーラさんお願いがあります!」

「何でしょう!」

「魔法陣の効果の書き換えは可能ですか?」

「どのような効果でしょう?」


 天界には複数の課がある。天随課、異界転生課、そして輪廻転生課だ。セラフィーラさんは最も高度な能力を求められる異界転生課に所属していた。なら恐らく可能だ。ダメ元で提案してみる。


「魔王の魂をこの世界の輪廻転生に組み込む魔法陣にすることはできますか?」

「可能ですが、魔王の魂はどちらに……いえ、承知しました。やってみます」


 セラフィーラさんはエリスのいる方向を凝視する。恐らく魔王の魂に気づいたのだ。


 エリスを魔王ごと元の世界へ転移させるのではなく、魔王の魂を成仏させて引き剥がす。エリスの帰還は一旦先送りにする。


「それともう一つお願いが……」



 ◇



「ではその二つを早速お願いします」

「しかしそのようなことをしなくても、雷撃魔法で気絶中なのでこれにて一見落着ではありませんか?」

「あーまっずい」


 息を吸うように生存をフラグを立てられた。

 案の定、土煙が晴れ、エリス、否、魔王が姿を現す。


「というのは嘘でした。すみませんっ。魔法陣の書き換えが完了するまでエリス様の攻撃を凌ぎます!」

「お願いします!」


 セラフィーラさんは脇に槍を挟みながら無防備に手を合わせる。


 すぐさま魔王が距離を詰め、空気を切り裂き音すらも追いつけない速度でセラフィーラさんに剣を振り下ろす。

 しかし、セラフィーラさんは物ともせず、舞うように体を捻りながら槍で剣を弾いた。

 割れるような金属音が佐々木公園一帯に鳴り響く。


 魔王は剣撃を繰り出し続けるが、セラフィーラさんはそれらを全て払いのける。

 一見するとセラフィーラさんが優勢のようだが、それは魔法陣の書き換えを並行して進める余裕があるかによって変わる。こちらからは判断がつかない。セラフィーラさんに委ねるしかない。


「っ! やるな」


 埒が明かぬと見たか、魔王が攻撃を止め池のほとりに退いた。

 まさか、エリスが転移してきた日にセラフィーラさんへ発動した切り札を使うつもりか。


「我龍転生......」


 やはり。

 水飛沫と共に巨大な龍が形成され、セラフィーラさんへ猛突を始めた。


 しかし、セラフィーラさんは龍の弱点を知っている。前回の戦闘で既に逆鱗が弱点であることは把握済みだ。


 セラフィーラさんは冷静に直進してくる龍の顎下へ槍を……。

 突如、龍が旋回して槍が逸れた。


「......!」


 セラフィーラさんが右肩を龍に咬まれた。

 鮮血が宙を舞い、右翼が赤く染まる。


「セラフィーラさんっっ!」

「よそ見している場合か?」


 振り返ると、眼前で刃が一筋の光を描いていた。


「先に君を殺してセラフィーラの戦意を削ぐ」


 よし、かかった。


 魔王の剣筋が俺に触れる寸前、地面から電撃魔法が展開された。


「う゛っっっっ!!」


 魔王の体に電撃が浴びせられる。


 先ほどの二つ目の頼みがこれだ。俺の周りに電撃魔法を仕込んでもらっていたのだ。


「拘束に成功しましたね」


 何事もなかったかのようにセラフィーラさんが舞い戻る。

 右肩の布地が裂けて肌が剥き出しになっているが、傷がある様子はない。よかった。

 セラフィーラさんはわざと龍の攻撃を受け、口の中から槍で顎を貫いたのだ。先ほどの血はセラフィーラさんのではなく龍の物だった。


「魔法陣の書き換えは?」

「完了しました」


 流石セラフィーラさんだ。


「じゃあ、残りの課題はどうやってエリスを魔法陣まで連れていくかですね」

「まだだ……」


 魔王は電撃を喰らい続けて動けないはずだが、剣を構え直した。

 素直に従ってくれそうにない。


「いえ、その必要はございません」


 セラフィーラさんが目を瞑り、両手をかざす。

 すると、地面全体が光りだし紋様が浮かび上がってきた。


「えっ? なに? 何したんですか?」


 セラフィーラさんは得意げに言い放った。


「佐々木公園全体を魔法陣にしました!」

「はぁ!??」


 東京23区の都市公園で5番目に大きい佐々木公園を!?


「張り込みの意味ぃ!」

「それは破壊の犯人確保のためだったではありませんか」

「まぁたしかに……でもこんなに大きくする必要あったんですか?」

「私の趣味です!」


 セラフィーラ様のお言葉が公園にこだました。


 うわー。そうだったこの女神様。異世界転生の仕事で魔法陣を書き続けていたんだった。魔法陣を描く合間の息抜きに魔法陣を書くくらいわけないのか。


「もちろん2つ目が破壊されてしまった時の保険の保険でもあります。石橋を叩いて鉄にして渡るのです!」


 女神様はドヤ顔で語る。

 ちょっと良く分かんない。さらっと錬金術すな。


「っぐっ!」


 魔王は電撃による拘束を引き剥がそうともがく。


「そうはさせません! あなたの魂をこの世界の輪廻に送ります!」

「…………本当か?」


 魔王が動きを止める。


「俺を殺してくれるのか?」


 え?

大っっっ変お待たせしました!

魔王の性別に一ヶ月以上悩んでしまいました。男性です。

エリスの帰還は次回で最後になります。

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