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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
二章 最強も望まない
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第七十九節 戦の神

平安京、到達できなさそうなのでハロウィン断念




逆上せそうなほど、色んなことを二人で話した。



内容は乙女の秘密である。今は丁寧に髪を乾かし終え、冷えた果実水で休憩中。



何せこのあとノーチェを通じてシアレスの神様とも話をしなくてはならない…というか、ノーチェがずっと呼び掛けを無視してるのは珍しく、祈っても行けるかはちょっと不明だけど……少なくとも祈るということはムダにはならない。


精神統一に始まり、ゆっくり自己を見詰め直す時間にもなる。


私も別にノーチェとだらだら話すためだけに祈りを捧げてる訳ではないのだ。…ただ九割方はそっちなだけで。




「それじゃあ、一緒に祈ってみようか。なんか変な感覚してもびっくりしないでね。」



「わ、分かったわ。…こんな格好でいいのかしら?ちゃんとした服の方がいい?」



「気にしたことなかったなぁ……今までの様子も見てるだろうし、そのままでいいんじゃない?少なくとも私は怒られたことないし。」



「そう……なるように、なるわよね!ええ、大丈夫!」




緊張でテンションが変になっているシアレスを連れて、教会が教会たる証、祈りの間へ足を運ぶ。…ここは信仰する神様とかではなく大きな十字架があるだけのシンプルな教会。

守護の意味合いが強く、祈りに来る人は各々が信じる神様に祈ってるのだとか。


そもそも本場の教会とか見たことないし、馴染みもない。歴史では宗教が政治に影響を及ぼしたことある、とか程度の認識しかない……まだ神社とかお寺の方が馴染みあるけど、こんな世界で神社やらお寺があったらそれはそれで怖い。


とりあえず、何時もの場所で片膝を付けて、両手を前に組んでノーチェに呼び掛ける。隣でシアレスも同じ様な体勢を取っている。……ちゃんと呼び掛けられているだろうか。



何時もなら直ぐ様ノーチェの元に辿り着くのに今回は間が空き、首を傾げた瞬間、白い光に包まれた。




「レンー!!!!」



「へぷ。」



飛び付いてきた何か……半泣きのノーチェに巻き込まれる形で尻餅着いた。思いっきり打ち付けてしまった…




「だ、大丈夫?」



「問題ない。……ノーチェ、痛かった、何すんの?」



「ご、ごめんなさっ!いたたたた!!!」



「…仲がいいとは聞いてたけど、それほどぉ?ちょっと、狡すぎるんじゃなくて?」



ノーチェの蟀谷を片手で嬲りながら問い掛けて居たら、何処か色っぽい声が聞こえた。

瞬間、ぐい、と襟を何かに引っ付かまれ、足が浮く。……結構大きいものに引っ張られてるのは分かった。あと首絞まる。



「あ!駄目ですよ!シャルー!その引っ張り方は首が絞まってしまいます!」



「あらほんと?ごめんなさいねぇ、人間の扱い方っていまいちまだ掴めなくて。」



視線だけ動かして確認すると…下半身は蛇の、息さえ出来なくなるほどの美女が居た。……違う、息が出来なくなるのはこの圧と瞳だ。澱んでいるような、澄んでいる様な、そんな紫水晶のようなそんな眼。


全身の毛が逆立って、警戒音が頭でガンガン響く。


通じないと理解しつつも咄嗟に身体強化で反射速度と柔軟を上げ、摘まむように上げている腕をへし折ろうと四肢を捻る。



「あらぁ、やぁね。食べたりなんてしないわよ!」



「………。」



「レ、レン?!どうしたの?!」



ぽい、と投げ捨てるように放られ、受け身を取って瞬時に構える。身体強化以外、魔術が上手く反応しない。さっきから魔力を無駄にしてるようなものなので身体強化にだけ専念する。


威嚇する猫のように息が上がるが、疲労からなんかではなく、目の前の脅威に対してだ。……アレは危険。八尺様とか、その手の怪異みたいな、そんな感じがする。

私の2倍程もある全体。下半身はとぐろを巻いているので本来はもっと大きいのだろう。…ラミアなんかを思い浮かべてしまうほど、あの瞳が強烈で…シアレスの呼び掛けに反応する隙が作れない。隙を見せてはいけない。




「ストップ!ストーップ!…シャルー!!!私の子を苛めないで下さい!!!」




「…………やぁね。ほんの戯れじゃないのぉ…はぁい、シアレス。お久し振り。」




「え?あ、えっと……」




「此方の姿で会うのは初めてよねぇ、怯えさせないようにって迎えに行ったときは人の形を取ってたもの…ちょっと待ってくださる?………これでいいかしらぁ?」



這うように移動し、シアレスへと近付いたシャルーという神は、光に包まれるとシアレスより少しばかり大きいだけの女性に姿を変えた。酒場の踊り子のような衣に、瞳と同色の髪が白い肌を彩る。……先程のような威圧感は収まり、少しずつ、体の緊張が解れていく。…横でぷりぷりと怒ってるノーチェに空気が緩んだとも言えるけど。



だが、それでも警戒は緩められない。それほど強烈な恐怖と呼べるもの。




「あ、あのシャルー様…」



「シャルーでいいわ。なぁに?シアレス。」



「どうして、レンはあんなに…」



「……………。」



「んもう、ちょっと揶揄っただけじゃないの。……いえ、それほど獣人として優秀ということかしら?貴女、先祖返り?」



ほんの少し間延びした口調に色気を纏う流し目。潤い、真っ赤な唇も全てが目を引く。応えるべきか判断がつかず、妙な沈黙が続き…気付いたらノーチェに抱き締められていた。


やっと、息が出来た。それくらい体が強張っていて、水面から顔を出したときのように、急に取り込んだ酸素に肺が悲鳴を上げる。



暖かく、優しいノーチェの匂いと体温。早鐘を打つ心臓に手を当て、生を実感する。




「レン、レン。大丈夫ですからゆっくり息をしてください……シアレス、と言いましたね。私はノーチェ、この子を加護する神です。どうぞノーチェとお呼びくださいね。」



「は、はいっ…だ、大丈夫ですか?!レンは…!」



「はい、シャルーの圧に当てられたのでしょう…シャルーの言う通り、この子は先祖返りの気があるので特に今のは堪えましたね。瞳孔、開いてましたもん。」



「悪気はなかったのよぅ……しかもその子、魔眼持ちじゃない?一瞬凄まじく魔力を感じたんだけどぉ。」



「えぇ。まだ発現はさせてませんが保有してますよ。……レン、落ち着きました?」



「…………なんとか。…でも、もうちょっとギュッてしてて。今日は此処に居る。」



「ええ!勿論!」




鬱陶しいほど、ベタベタとノーチェはくっついてくるから普段はある程度距離を空けてるのだけど…今は無理。離れるのが恐ろしすぎる。ノーチェの腕の隙間から顔を出して、シャルーを見る。……うん、さっきよりかはずっとマシ。


無意識に尾や毛が逆立ってしまうが、制御できないのでそのままにしておく。



「嫌われちゃったかしらぁ……ま、いいわ。改めて、私はシャルーよ。司るのは戦。戦いの神のシャルーよ。シアレスには特別に私の権能の一部を貸してるのよぉ、凄いでしょ?」



「え?!そうだったんですか?!」



「えぇ、守護と治癒は本来は私の管轄と微妙にずれてるから…ほんのちょこっと、魂に私の力を注いであるの。でも使いこなせてないわねぇ、難しかったかしら?」



「いえ、彼女の場合はそもそもこの世界に馴染んでないからかと。魔力の流れも今日知ったのでしょう?……レンは教えるのも上手な気がしますから、きっと今後は上手く扱えるようになりますよ!」



「…ちょっと、憶測で物を言わないでノーチェ。流石に神の力とか知らない。管轄外。そっちでなんとかして。」



「私も出来るならそうしたいんだけど…シアレスってば、私の声全然届かないんだもの。今すぐは無理ねぇ。流行り病の時には無理矢理声を届けたのだけど……アレが限界。シアレスが神託スキルを獲得して落ち着くまでは貴女と一緒に来てくれると助かるのだけど、どう?」




顔を近付けてきたシャルーに勝手に体が強張るが、言ってることはまともなので頷いておく。…満足そうな顔をしたシャルーは手を伸ばしてくるが、体を全力でノーチェの方に押しやり、断固拒否。



「やだぁ、嫌われちゃったわぁ…シアレスのこと大切にしてくれそうだから、私もちょっと目に掛けてあげようと思ってたのに。___でもまぁ、貴女の態度は正解よぉ。私達って基本的に加護した愛し子以外ってどうでもいいから、鬱陶しく纏わりつかれても困るもの。私の一番はこの子、それが分かってるってことでしょう?」



子を慈しむようにシアレスに触れ、抱き締める姿はノーチェと重なる。

……本人は嬉しいやら驚いてるやらで目を白黒させてるけどね。



シャルーの言ったことを言われる前に気付いたわけではないけど…ただ、本能的に恐怖した。絶対的な力を持つ者として。…ノーチェやアーシェのように好意を向けるわけでもないその存在を、恐怖した。


嫌われちゃった、なんて泣き真似は本心ではないのが見え見えだったし、私が気付いてる事を分かってておちょくってるのだろうシャルーは。




「いいこねぇ、貴女。好きよ、今のところシアレスの次くらい。あのガルシアって男に吼えたのもいいわぁ。」



「……その好きってさ、シアレスの盾的な意味ででしょ?嬉しくない。」



「あら、残念。…でもま、暫くは顔を合わせることになるでしょうし……そうツンケンしないで頂戴な?気に入ってるのは本当よぉ?それに、この子を助けてくれたお礼に、特別にその眼の使い方教えてあげるわぁ。」



「っ………!それ、本当?」



「ほんとよぉ。これから先、私もこの子と話せるなら安いものだわぁ。」



「あ、えっと……しゅ、修行頑張りますね!私!」




うっとりとシアレスに頬擦りする姿は愛しいものを抱き締める女そのもので、シャルーの言葉が本当なのだと理解出来た。シアレスも照れつつもやはり嬉しいようでシャルーの腕に柔く手を添えていた。


実際、この眼……恐らく千里眼のスキルの使い方を彼女は知っているのだろう。その辺り、ノーチェは役に立たないので本当に助かった。癖は強いが、シャルーの神としての在り方は理解できる。愛し子は絶対、後は適当。恐らくそんな感じだろう。


……流行り病の時、さぞ焦っただろう。なるべく早くシアレスにも神託スキルを会得してもらわなくては。




「落ち着きました?」



「ん……何となく、シャルーの在り方が掴めてきたから大丈夫。………ちょっと、誰が離して良いって言ったの。ちゃんと抱き締めてて。」




勝手に抱き締める力を弱めたノーチェの頬にぺしりと尾を押し付け、体を預ける。……シアレスが手をわきわきさせてたのは見なかった事にした。シャルーも愉快そうに見るんじゃない。





DOMAN Puお待ちしてます

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