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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
二章 最強も望まない
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第七十七節 拾った小鹿

小鹿、調べたら鳴き声面白すぎて文字に出来なかったので異世界産の小鹿だと思って





「……と、いうわけで拾いました!可愛いよね!!」




「ほいほい拾い物をしてくるのは止めろ!!」




現在私は仁王立ちで立つアヴィリオの前で正座している。


勢いで誤魔化そうとしたけど駄目だった。



シアレスはリムネルにちゃっかり馴染んでて美容について話してるので此方は無視である。悲しい。



物凄い勢いで帰ってきた私が抱えてきた小鹿…ジュエライトという名の魔獣。実は国が保護するレベルの魔獣なんだとか。そんなの知らなかったもん。


ジュエライトの子供は未だに私の膝に頭を乗せて意識を飛ばしている。ちょうどいい重さでどんどん痺れが蓄積されていく。




「私が拾い物したんじゃなくて、フロウが拾い物した。無実!」



「それはそうだが……それにしたってジュエライトは本来北の大陸にしか居ないんだぞ!」



「それも知らない!奴隷商から逃げてきたってフロウが言ってたし嘘じゃないよ!」




きゃんきゃんと二人で捲し立てること暫し。手を叩き乱入してきたリムネルに止められた。




「はいはい、落ち着きなさいアンタ達。…アヴィリオ、どう考えたってこの子に非はないでしょうに。心配だからって突っ掛かるのは止めなさい。

レン、足緩めて良いわよ。その子もそろそろ起きるんじゃないかしら?」



「っ…だが…!!」



「だがも何もないったら!…それより、奴隷商がまだ森に居ることが問題よ。レンを見られてないとも分からないし……少なくともその子は保護すべきだと私は思うわ。」



「私も、そう思います。ジュエライトは本来とても温厚で、王家とも繋がりがあったって村では言われてたし……奴隷商って私の国から来た可能性がすごく高いと思うの。…ガルシア殿下に報告した方がいいと思うわ。」



シアレスの援護射撃もあって漸く解放された。……もうちょっと早く言ってくれても良かったよね。口にはしないけど。…フロウはフロウで端で寝たフリを決め込んでるし。


そして足を崩して座った時の小さな衝撃のせいか、ジュエライトの子も意識を戻した。…見下ろす三人に怯えるようにすり寄って来たので抱き締めながら指差す。




「大丈夫、ここに居る人たちは危害を加えないから。足、治して貰おうね。…シアレス、お願いできる?」



「任せて。このくらいなら完璧に治せるわ!…ごめんなさいね?ちょっと触るわよ。」




シアレスの指先にほんのりと温かい光が灯る。なぞるように動かすだけで完璧に治った。……見事というしかない。流石加護持ち。


ジュエライトも嬉しそうに跳び跳ね、シアレスの手の甲を一つ舐めた。お礼のつもりなんだろう。……メロメロになってるシアレスは可哀想だから視界から外しておいた。レーヴェディアと同じなにかを感じなくもない。




「……神父様には?」



「聞いておるよ。…お前さんはまた珍しいものと巡り合わせがいいというか、目立つというか。…陛下にも連絡はしてある。明日訪ねてくるそうだ。

何せジュエライトの角を彩る宝石は、生え変わると落ち、それはそれは最高品質の魔石になるからな…大方それを狙われたんだろう。」



「いつの間に。……じゃあ奴隷商が捕まるまでは保護だね。うちか、王城かは分からないけど……まぁ、それは置いといて。ご飯にしよう。ご飯。お腹すいた。ぺこぺこ。

勿論君のもあるよ。…ジュエライトって何食べるの?」



「そうね…一般的には雪山に生える草だとか、弱い魔物だとか言われてるわ。」



「そっかぁ……ピグ食べれる?」



「えぇ。問題ない筈だわ。…村を収めるお婆様の言葉だから間違いないと思うけど……少し与えてみて、駄目そうだったら止めたらいいんじゃない?」




「それもそうだねぇ。シアレス、お夕飯温めておいてくれる?他の子達のご飯用意してくるぅ。」




シアレスが居てくれて助かった。地元民の知恵に勝るもの無し。


アヴィリオからは深いため息が聞こえたけど、手伝ってくれるらしく三人で台所に向かった。神父様たちは食器を出すのとクォーツ達を呼びに行ってくれた…ちなみにデューは元の湖に居たらしく、勝手に窓から帰ってくるのをジュエライトを運んでるときに目撃した。…結構高く飛べるんだね君。



フロウ?フロウは勿論また私の後を着いてきてる。ついでにジュエライトも。…君さ、服を食むのは止めて貰ってもいいですかね?




「そうだ、シアレスに紹介してなかったね。この子はフロウ。種族はアースフォクスで、私の一番の相棒。ちなみに本当のサイズはもっと大きい。

子供のときからずっと一緒に居た特別な子なの。よろしくね。」



「まぁ!身体収縮を使えるのね?村の蟷螂もそうだったけど、身体収縮が使える個体って凄く強いって聞いたわ。

私はシアレス。今日から暫くレンにお世話になるの。どうぞよろしくね。」




膝をつき、目線を合わせたシアレスを気に入ったのかフロウが鼻を鳴らす。気に入られたよ、と伝えたら熱心にフロウに触ってもいいか聞いていた……うん、そういう反応すると思ったよ。熱心に見てたからさ。



ところで、一つ気になった。



「アヴィリオ、身体収縮を使える魔獣って強いの?」



「…いや、俺も初めて知った。北の大陸には行ったことが無かったから…その土地で伝わることと、此方で伝わることは違うんだろう。

フロウはちなみに強い。種族としての限界値が他の個体より高い、…と俺は思ってる。」



「アヴィリオでも知らないことってあるんだねぇ……なんか親近感湧くぅ。アヴィリオって基本完璧だからさ。」



「………うるせぇ。師匠として当然だろ。」



「…………見た?シアレス。あれがツンデレ。」



「えぇ!ばっちりよ!きっと多くの女性をその気にさせて泣かせてきたんでしょうね…!!」




師匠として、初弟子にカッコつけたかった。なんて思いが筒抜けで、耳を染めて顔を背けてしまったアヴィリオを放置してきゃいきゃいと二人ではしゃいでいたら拳骨が落とされた。勿論シアレスにも。


……全然力入ってないんだけどね。照れ隠しなのがバレバレで二人で笑う。




「みにゅぅ。」



「あ、ごめんごめん。お腹空いたよね。……って、なんか宝石大きくなってない?」



「……あ、そういえば………伝承なんだけど、ジュエライトが幸福を感じたとき、宝石は美しく大きくなり、夜空を切り取ったような輝きを放つ…なんて伝わってたわ。…幸福を感じたのかしら?」



「いまの空気が?……不思議だねぇ、君。専門家が居たらいいんだけどリムネルも北は専門外だし…ガルシアなら知ってるかな?

でも本当に綺麗だよね。君自身も、宝石も。……お手入れしたい。」



「分かるわ、その気持ち。」



固い握手をシアレスと交わしていたら、何か考えていたアヴィリオが頭に手を置いてきた。……いいサイズ感なんだとか。チビじゃないやい。



「従魔にしないのか?」



「なんで?だってこの子無理矢理連れてこられただけだよ?親元に返してあげるべきでしょ。」



「…契約したら魔力で食事は事足りるし、多少の意志疎通も出来るだろ?」



「しないよ。…この子は人間が無理矢理連れて来て、虐げ、歩行さえ痛みを伴うものにしたんだよ。

保護した責任は最後まで果たす。この子を元居た場所に返すのが私の責任だし、なるべく自然に在るままに返して上げたい。


もし、従魔契約をした関係で群れから外されたら…凄く嫌。人間の臭いは勿論するだろうから、群れのボスとかにちゃんと頭を下げるよ。……責任ってそういうことでしょう?」



「レン……貴女がそこまでやる必要は…だって奴隷商が悪いんでしょう?」



「そりゃあね。…でも自然と共に生きてる彼らにとって、誰が悪かなんて関係ないだろうね。だからせめてちゃんと返して上げたい。…子供は大人に守られるべきなんだから。」




契約をした方が楽なのは分かってるが、それはなんか違うと思う。


この子はなるべく自然な状態で返して上げたい。…本来居ない場所に居るんだからストレスとかはあるだろうから、それのサポートとかは別として。



きょとりと不思議そうに見上げてくる小さな頭を擽り、ピグの調理に戻る。



「………今思ったんだけどさ、痩せてるのを見ると顎の力弱くなってたりしない?生より火を通した方がいい?」



「あー………有り得るな。もともと骨を噛み砕く程の力も無いだろうし、胃腸もどうか…」



「ミルクとかの方がいいのかしら?…でも飲むかしらね?」




…自然のままとかなんだかんだ言いつつ、やっぱり世話を焼いてしまう。…いやだって子供!可愛い!過保護にならないほうが無理だって!

フロウも分かってたのか喉を鳴らしてご機嫌に脚へまとわりついてくる…あ、こら!だから服をモシャモシャするのはダメだってば!砂埃がついててばっちいよ!



「とりあえず火を通して細かくしてみる。ほら、フロウ退いて、運べない。」



クォーツ達には果物、デューは水草。フロウもジュエライトと同じく火を通したピグ。それぞれを専用の器によそって食卓の近くに作った従魔達用のスペースへ運ぶ。


既にクォーツ達は止まり木に佇んでて、後ろをとことこ着いてくるジュエライトに興味を示していた。デューは我関せずとばかりに気儘に首に絡み付いてくる。今日もひんやりしてる。



「…色んな子が居るのね。」



「フロウ以外は最近なんだ。ご飯の後で紹介するね…皆、ご飯。おちびさんもね。……食べれそう?」



それぞれ食べやすい位置に器を置いて、ジュエライトの前に一つピグの焼いた肉を摘まんで差し出してみる。熱も取ってあるので問題ない筈……お、食べた。


よほどお腹が空いていたのかほんの二口で食べてしまった。



「食べれるなら良かった。誰も君の分は取らないからゆっくりお食べ。……ってフロウ、重い重い……分かったよ。君も手から食べたいんでしょう?一個だけだよ?」



のし掛かってくるフロウを宥めながら、フロウ分のピグを差し出す。…盛っておいてなんだけど、一番フロウが食べる分多いよね。当然なんだけどさ。

人間が美味しくない部位もフロウにとっては充分美味しいのか不味そうな顔は今のところ見たことない。…ミントの匂いはちょっと嫌ってたけど。



フロウのを食べさせ終えたら、今度はデューも引っ付いてきて……結果皆のおねだりに負けてそれぞれ一つずつ手ずから食べさせた。嬉しいなら良かったよ、後方から生暖かい視線を物凄く浴びたけど。





生暖かい視線、神父、リムネルは《愛いなぁ、うちの娘/弟子》。アヴィリオは《可愛いとも思うしただあの優しい空間が愛おしい》。シアレスは《もふもふがいっぱい!可愛い!》という具合

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