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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
二章 最強も望まない
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第六十三節 御使い

新しい受付嬢参戦(?)





その日の夜、ノーチェと少しお話した後、神父様に呼ばれた。



昼食後も書斎に籠っていたから話し合いをしてたんだと思う。…因みに私は森への行き来が自由になったので適当にお散歩したり湖に行ってデューの群れに挨拶してきた。


あと水草を幾つか確保してデューのお気に入りの鉢に入れて飾ったりなんてして過ごした。…一日を無駄にした感じが否めないけど、たまにはこんな日も大事。明日はケーキとか焼こうかなぁ。




「神父様、呼んだ?」



「すまんな、寝る前に呼び出して……明日、手が空いてるか?」



「うん。アヴィリオもリムネルも暇だったら何か考えとくって言ってたけど、特に用事ないよ。」



「そうか。……頼みごとを、一ついいか?」




ぽんぽん、とソファを示すので隣に座り首を傾げる。…勿論フロウも着いてきた。他の皆はもう寝に入ってるのに君絶対離れないよね。…デューは鉢、クォーツ達は専用の巣擬きを作ったのでそこで寝てる。箱にクッションとか詰めただけなんだけどね。寄り添って寝てるのは微笑ましかった。


フロウも専用の大きいクッションあるのに…何故か私のベットに入りたがる。狭くなるけどフロウの毛並みよくて一緒に寝てるのは内緒だ。


頼みごとを、と言った神父様は書簡の入った筒を一つ私に渡すともう一つ、黒いヴェールを差し出した。



「このヴェールは隠蔽の魔術が込められたものでな、顔の認識が曖昧になる。…ほれ、こんな風にな。」



「……凄いね、なんか神父様って分かってる筈なのにぼやけて見える。」



「誰が着けてるか分かってればその程度で済むが…分からなければ誰かが居た、ということしか分からんようになっている。」




ヴェールの内側は勿論分からず、意識してなければ誰と話してるんだっけ?となる。…魔術の神秘って相変わらず凄いなぁ。よくわからん。




「でも、そんなもの持ち出してどうしたの?」



「……この書簡を、明日城へ届けてほしい。付き添いはディグラートに頼んである。」



「……え”。」




嫌なのが思いっきり顔と声に出てしまった。


予想通りだったのか、咎められることは無かったけど……え、なんで王宮に?神父様じゃ駄目なの?それかアルトゥールが取りに来るとかアヴィリオとか…




「お前さんを指名してきたんだ、陛下がな。」



「え………あ、もしかして昼のって…」



「あぁ、陛下の声だ。……主命で言われた以上、私とて断れん。…すまんな。」




成る程、『俺王様、お前家臣OK?』をやられたのか。流石に命令されては断れないだろう…立場的に。


いやまぁ、命令が命令だし、断れないこともないだろうけど……きっと駄々捏ねたんだろう。神父様が疲れた顔をしている。

国王様と会うのも十年ぶりくらいか……レーヴェディアとも三年くらいそういえば会ってないな。…いや、レーヴェディアってそもそも陛下付きの偉い騎士様だし、本来は陛下かナオの傍が定位置らしい。


…小さい頃は、私の見極めと保護も兼ねて来てくれてたそう。ただ暇だから巡回してる騎士だと思ってた。ごめんね。




「ギルドに寄って、ディグラートと共に行くことになるが……悪いがフロウを連れていくのはよしてくれ。」



「え……」




まさかの一言で固まってしまったが、足下で若干唸るフロウに気付いて撫で回した。すとん、とソファに上がって膝を独占してきたのでフロウとしても不服らしい…君ほんとに私にベッタリだよね?




「意地悪で言ってるわけではない。ヴェールの対象は着けているものだけ。フロウを連れていればお主が誰かなぞ分かるし……城には元老院だった者も居るし、今後の訓練所での生活に差し支えがあるのは避けたい。…分かってくれ。」




「…他の子もだめ?」




「あぁ。いつどこでバレるか分からんからな。服もリムネルが幾つか作ったもの…普段着として使ってないものを頼む。」




従魔なしで従魔術師が出歩く危険性は神父様も分かってると思うけど…まぁ、私は他の魔術も適正あったし鍛えられてるから良いんだけど、普通は有り得ない。


そもそも従魔術師は他の魔術適正があったとしても伸びにくく、扱いにくいし…何より魔力を従魔に分けてるのですぐに魔力切れを起こす。



私の場合は種族柄、元より魔力が多く、さらにノーチェの力でブーストされてるのでそこらの魔術師の二倍くらい魔力量はあると言われた。

ゆえに、フロウに魔力供給しながら魔術連発出来る。元の世界の知識も合わさって複合魔術…魔術同士を組み合わせたものまで使えるので正直魔術師と名乗ってもいいと思う。



まぁ、半分以上がエルフのスパルタ訓練のおかげだったりするんだけどね……加護なしで私よりチートなのが身の回りに居る人って中々自信なくすよね!諦めたけど。




「レンは私の義娘、ということになっておる…昔の騒動も、話題は収まると思っていたが……私やディグラートが復帰するにあたって話が蒸し返される事も増えてきた。」




「えぇ……他に話題ないの…」




「仕方あるまい。それほど後ろめたい奴が多いということだ……頼まれてくれるか?」



「……うん。一人はちょっと不安だけど…行ってくる。フロウもお留守番お願いしていい?お土産に美味しいお肉買ってくるから。」




膝上を陣取るフロウに声を掛けると、既に不貞腐れモードながらに鼻息で返事してきた。


……寂しがりやだよね。ほんと。


それから神父様に注意事項というか…道中気を付けろという話と、城で声を掛けられても返事はディグラートさんに任せろと言われた。


一応礼儀作法とかは完璧にしてあるけど、普段使いしてない分どこでボロが出るか分からないし頷いておいた。

あとは明日に備えて寝るだけ。……フロウがぐいぐい身体を押し付けてくるので全力で抱き枕にした。もふもふ、ふわふわ。最高。



























「はい、確認致しました。此方が通行証になるのでお持ちください。ヴォルカーノ神父様のところ使いの方が来たら渡すようディグラート様より伺っておりますので。」




「ん、ありがとうございます。」




街に入る前に簡単に取り調べ…犯罪者じゃないとか、名前とかを調べて貰い、何やら木の板を渡された。


先にディグラートさんが話を通してくれてたらしく、わりとすんなり入れた…昔よりちょっと検問が厳しくなってるように感じるけど、多分気のせいじゃないな。


まず、人の流れが多い。


並んで入るのとか久しぶり過ぎてちょっとびっくりした。並んでる人は獣人や人間ばかりだけど…小人、というかドワーフっぽい人も居たな。遠巻きにしか見えなかったけど。




だいぶ久しぶりに訪れた城下。いや、王都シュルゲンというべきかな。


王都が王都たる由縁、王城は門からでも充分見えるし、活気は相変わらず抜群…ちょっと耳がキーンとするのは普段ない喧騒だからだろう。

ちょっと程度で収まるのは成長したからか、爆発音になれたからか……魔術の暴発、しょっちゅうでしたが何か?




相変わらず人でごった返して居るが…ポーチの中を取られないよう気を付けなくちゃ。



人の合間を縫って、ギルドを目指す。



風に乗って聞こえる露店商の声や、串焼きの匂い。ちゃんと朝ごはんは食べてきた筈なのに匂いにつられてお腹が空きそうだ。…まぁ、魔力が万全じゃないから余計お腹すくのもあるけど。


そういえば初めて街に降りたとき、神父様と食べたピグの串焼き美味しかったなぁ…ピグ、森にも居るんだけど臆病だから滅多に出会えないんだよね。アヴィリオとリムネルみたいに狩人の経験がないと狩れないらしい。飼育されてるピグより肉厚でジューシーなのがまた美味しくて美味しくて…



うん、帰りに買おう。お金もあるし。



口の中に溜まった唾液を飲み干して足早にギルドに向かった。


ギルドの周りは特に人…というか、冒険者でごった返して居た。喧騒も一際大きい。

併設された飲食店では可愛らしいウェイトレスさん達が華麗な手捌きで客をあしらい、どんどん料理をテーブルへ運んでいくのが見えた。

冒険者だけに関わらず、老若男女問わず美味しそうに食べてるのを見ると串焼きからこっちで少し食べてくのもいい気がしてきた。


ずっと立ち止まってる訳にもいかず、取り敢えずギルド内へ。…基本誰でも入れるが、まぁ視線は浴びるよね。知ってた。




「こんにちは!ご依頼の方ですか?」



「いや、……アンさん…かディグラートさんはいらっしゃいますか?」



アンさん、といった瞬間またか、みたいな顔をした活発そうなお姉さん。なのでディグラートさんの名前も付け足した。……さてはアンさん色んなお姉様の心を射止めてるんだな?




「失礼ですが、紹介状はお持ちですか?…紹介状がないと恐らく会うのは難し…」




「待った。その子はいいんだ、アリベル。」



奥から声を掛けられた。…カウンターで何やら作業してたアンさんだ。そして目の前の彼女はアリベルさんというらしい。二十歳前後かな、茶色のポニーテールが眩しいお姉さんだ。


二人揃って手招きされたのでアンさんの元へ。…勿論暇そうにしてた冒険者からは揶揄う声がしたが、無視しろって言われたので気にしないことにした。ボード見てる人らなんかはこっち気にしてないしね。



「話は聞いてるよ。今書類仕事させてるから少しだけ待って。…一昨日ぶりだけど、魔力切れでぶっ倒れたわりに元気そうだね?」



「うん、あそこは回復しやすいから。…それに回復しきってないけど、普通の人なら満タンレベルには落ち着いてるから。」



「そ。ならいいや。……アリベル、この子がレン。滅多に此方には来ないけど来たら俺かギルド長…最悪アウリル辺りに声を掛けて。」



「あぁ!この子が!…こんにちは、私アリベル!アンさんの仕事の補佐してるの!……此処だけの話なんだけど、私も一応貴族なの。専門のギルドが軌道に乗るまではこっちでお手伝いしてるの。皆には内緒よ?」



こそこそと耳打ちしてきたアリベルさん。…成る程、ギルドが立ち上がったらアリベルさんが受付嬢になるのか。


…ふと思ったけど、このギルドって受付の人少ないな。漫画とかだともっと居たイメージだし…



「…受付って普通一人?」




「いや。規模にもよるけど五人以上が基本。依頼人対応や仕事の斡旋なんかも仕事のうちなんだけど……ああ、もしかして受付が俺だけだと思ってる?」



「アリベルさんも居るけど……違うの?」



「他の皆さんは奥で対応してるの。統括がアンさんだからずっと此方に居るだけ。

王都のギルドですもの、田舎の村とかなら兎も角、ここは常に人でごった返してるでしょう?一人なんてとてもじゃないけど無理よ!」




からからと笑うアリベルさんは今度はにんまりと笑うと一つ付け足した。



「そ、れ、にぃ~…アンさんってばしょっちゅう女の子に呼び出されたり、貴族のお嬢様が押し掛けたりでそっちに時間割いてるのよ?」



「あぁ……さっきの反応見たときそうだと思った…」



「アリベル、余計なことを言うな。……そんなに仕事が欲しいようなら上げるよ。昼前に仕上げるように。」



「げっ…!……はぁい、またね。レンちゃん。今度はゆっくりお喋りしましょ!」




制服だろうか、腰のリボンを揺らして去っていくアリベルさんに手を振って見送る。…ギルド、大きいなぁとは思ってたけど奥にまだ部署みたいなのがあったのか。


確かにアンさんが一人でここ全員を管理するなんて難しいだろう。



「アリベルはあれで優秀だから、何かあったら頼るといい。」




「そうなんだ…アリベルさん抜けたらアンさんの負担大きくならない?大丈夫?」




「問題ない。元々アリベルに流してる業務はすぐ終わるものばかりだから。……強いて言えば引っ付いてくる輩が増えるくらいか。」




「そっかぁ……彼女、いないの?」




「必要ない。今はな。……さて、そろそろ頃合いかな。」




今は、って事は作る予定はあるのか…もしやもう好きな人が居たり?もう少し踏み込んで聞こうとしたらほっぺを引っ張られた。……痛い。



最近更新ペース早くてめちゃくちゃいい子のゴリラなので感想、評価お待ちしてます

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