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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
二章 最強も望まない
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第六十節 休息

まったり更新中、もう一つの物語も近々更新予定





目を開けると見馴れた天井で、とりあえず体を起こす。



……なんか、物凄く怠い。起きるのも億劫になるくらい怠いけど、お腹も空いた。



着替えもせずに寝てたのか……ってそうか、魔力尽きて倒れたんだっけ。




「フォゥ。」




「あ……ごめん、フロウ。おはよう。」




起きても微動だにしない私を気遣ってか、寝具に乗り上げてくるフロウ。


けれど何故か一瞬止まり、じぃと見詰めては何故かご機嫌になった。なんだなんだ、可愛いやつめ。でも今怠いからそんなに体を押し付けられると倒れちゃう。


ヴェセル達が運んで…というかフロウと共に来て、事情説明してくれたのはなんとなく記憶にある。


それ以降がぷつりと途切れてるのでそのままノーチェの所へ意識が飛んだのだろう……首を傾けると、違和感を感じて視線を下ろせばあの時のネックレスが首に掛けられていた。アーシェの仕業だろう。




「そういえば、なんか言ってたな……フロウ鏡ほしい…あれ、そういえば他の子達は?」



フロウ以外が部屋に居ないことに漸く気付き、鏡を強請りながら聞けば器用に咥えて持ってくるなり前足で床を叩いた。

床、というより階下に居る、と示してるのだろう。



契約は既に済んでるので危険があれば分かるが、そんな気配もない。神父様達と挨拶でもしてるのか、ご飯でも食べてるのか…呼び戻すのは別にいいかと鏡を見て驚いた。


瞳が、フロウと同じように深紅になっている。



いや、もっと不思議な色合い。多分ノーチェとアーシェの守りが混ざってるからか、角度によって揺らめく炎の様に色合いが変わる。暫くしたら戻ると言ってたが…どのくらい暫くなのか。


まぁ、気にしても仕方ないか。…それよりもお腹が好いた。フロウに階下に降りたいと言えば首根っこを咥えられ、背中に放られる。……あの、小さい頃ならまだしも、私大きくなった筈なんですけどね…

乗りやすいよう大きくなってくれてるとはいえ、中々複雑なのを顔に出してもフロウは笑うだけでのそのそと歩き始めた。



……君、私が背中に乗るの好きだもんね。




ぐでぇと木の上で眠るように体を預けてもフロウから落ちることはない。階段も器用に降りてくれるので大変楽。ふわふわの毛並みと程好い振動で何度か寝落ちかけてはフロウに声を掛けられを数回繰り返し…漸く階下にたどり着いた。


怠いせいで戸を開けるのも遅くなり……顔を上げたら視線が集中した。



そして見たことないくらいアヴィリオとリムネルの顔が緩んでてちょっと引いた。……わざとではない。




「……なに、その顔。」




「……あ、いや、何でもない。ちょっとな。」




「え、えぇ。本当になんでも…って、貴女その眼は…!!」




照れて恥じらうアヴィリオに微笑ましい顔を向け、驚きの声を上げるリムネルに視線を移す。

此方に来ようとしたのに何故か脚を止め、視線が空へ移っている。…あれかな、精霊の声でも聞いてるのかな。




「レン、体はどうだ?」




「物凄く怠い。あとお腹すいた…眼はね、大丈夫。暫くしたら戻るって言ってた。」




「ほう……言ってた、とは誰が?」




「アーシェ。」




眉を上げた神父様に必要な事を話、ネックレスを見せる。…信仰を歪めてるとか、創造神の話とか、なんで神が加護を与えるかとかは伏せておいた。…それらを伝えて神父様が危険になるのだけは避けたいから。



リムネルもアヴィリオも精霊から話を聞いたのか熱心にネックレスを見詰めてくる。……アルトゥールが居ない。




「アルトゥール、帰っちゃったの?」




「あぁ、なんでも王宮に緊急召集が出されたらしくてな。……っていうかお前、アーシェ様もノーチェ様もあんまり信仰してる人の前で呼び捨てにするなよ。怒られるぞ。」




「アーシェもノーチェも名前で呼んでいいって言った。いっぱい撫でてくれたし怒らないもん。」




「違うのよ。庇護と精霊を与えるほど気に入ってるのを私達エルフは分かるから咎めることはないけど…他の者は見えないでしょう?

そういう者らからしたら生意気、なんて捉えられちゃうかもしれないからね。」




……それはあり得そう。


人前では仕方無いけど様付けしよう。…なんて考えてたら三人からまじまじと瞳を覗かれた。フロウの上なので逃げ場がない。



見詰められること暫し、とりあえず満足してくれたのかご飯の時間になった。何時もよりずっと遅い時間のご飯だけど、皆起きるのを待っててくれたらしい。…あれ、ところで他のうちの子は?




「ペイルウィング達は?」




「風呂だ。ソニードが思っていたよりも賢い個体でな。綺麗にせねばレンと共に寝かさんと言えばペイルウィング達も引き連れて行きおった…様子を見て来たが特に問題はなさそうだったのでな。ついでに薬剤の使い方も教えたらペイルウィング達を洗い始めたのでそのままにしてきた。」




「はえ……うちの子すっごい…」




風の魔術も水の魔術も扱えるからか、どうやらお風呂でクォーツ達を洗ってくれてるらしい。…デューは元々水辺の魔物だからそこまで汚れてなさそうだなぁ。


スープにパンを浸して咀嚼し、飲み込む。リムネル特製、魔力回復に特化したこのスープはコーンスープみたいでお気に入りだ。…今日はフロウにも同じように与えられてるあたり、本当に魔力の消費が激しかった。

フロウも因みにお気に入りだったりする、小さい頃は顔を汚して食べてたっけ。




「ペイルウィングもリュエール…というか、ソニードも契約したし、過保護は程々にしてほしい。…まぁ、ソニードの方は助太刀をお願いしたけど…」




「……ヴェセルに会ったらしいな。腑抜けたと俺が怒られた。」




「えぇ、貴女は私達が思うよりずっとずっと賢く、強い子だったって確認させられたわ。…神父様だけは最初からのほほんとしてたけど。」




「ヴェセルがまた何時でも訪ねてこいと言っておったぞ。空間魔術の教えを乞うなら確かに相性がよかろう…どれ、予定が合えば今度会いに行くか?」




結果を出してる以上、諦めるしかないのか苦笑した二人に胸を張る。

…そういえばあの金髪の人、結局誰だったんだろう。今度ヴェセルに聞こうと神父様の提案にこくこくと頷いておく。


ともかく、これで鳥籠からは脱却した。訓練以外の時間、教会付近の森なら好きに探索してもいいと許可も貰ったし、万々歳である。



ご機嫌で食事を終え、食器を片していたらふよふよと視界の端で輝く鰭が見えた。

巻き付くように肩で安定したデュー。あれかな、そこ落ち着くのかな。ひんやりした鱗に頬を押し付けてお帰りとおはようの挨拶をした。




「そういえば…名前、聞いてなかったわね。なんて子なの?」



「この子がデュー。クリスタルペイルウィングがクォーツで、更に右からウーノ、ドース、トゥーレ、クーア、スィーン。」




名を呼ぶごとに羽を上げてくれたのでリムネル達にもよくわかった事だろう。…まぁ、各々尾羽の長さの違いやら羽の付き方、色合いが若干違うので分かるが。


それぞれが仲良く、特にウーノとトゥーレははしゃぎまわり、ドースとスィーンは逆にあまり飛び立たず、柱や椅子に止まってはウトウトしてる。クーアとクォーツは私の傍に寄りたいようで行き先に付いてくる。…皆可愛い。




「ペイルウィング達はそれで一つの群れでしょうね…ソニードの下に付いてた群れはどうしたの?契約はしてないんでしょう?」




「そういえば……群れに戻る?そしたら必要な時だけ君を呼ぶよ。」




従魔のあり方は様々だ。特に大きい従魔…それこそ龍種の契約なんかは必要な時だけ呼び戻す関係な事が多いそう。

確かに街中に急に龍が居たらびっくりするだろう。繋がりがあれば何処にいても己の従魔なら分かるそうなのでデューにも群れの皆が大切なら勿論そっちにしようと思う。



暫く考えるように私から離れ、ふよふよと漂ってたデューは鳴かぬ代わりに感情を伝達してくる。

…離れた隙にクーアとクォーツが両肩を独占したので今度は頭の上に乗っかられた。皆そこそこ重いって自覚ある?あとクーアとクォーツはあとで爪丸めようね。食い込むから。



「……え、いいの?」




「デューはなんて言ってるの?」




「デューの群れが私の配下に着くって。しかもデューを通さなきゃ指示できないけど、契約すると私の魔力持ってかれるから契約しなくても付き従うって言ってる。」




「あら、本当?…珍しくはあるけど、確かにそういう事例もあるのよね。良かったじゃない!それほど貴女が認められたってことだし、相性がいいってことねぇ。」




一人ずつ退かしながらリムネルに返答し、体を解す。


丁度よくアヴィリオがお風呂から上がってきた……毎度毎度思うが、はだけた胸元は眼福である。魔術師なのに程好くマッチョ。……そういえばいい筋肉って柔らかいって聞いたんだけど、触ったら怒るかな?




「上がったぞ、チビ……ってなんだその目は。」




「いや、アヴィリオの胸って揉んだら柔らかいのかなって。いい筋肉って柔らかいんでしょ?」




「はぁ?……あぁ、いいぜ。俺のを触るって言うならその代わりお前のも触るぞ?」




日頃の仕返しだろうか、色気を流して誘ってくるアヴィリオ。……ふむ。




「分かった。生で触るんだから私も脱いだほうがいいよね…」




「……は?!待て待て待て待て!脱ごうとするんじゃない!!止めろ!」




わざと自分の服に手を掛けて見せれば顔を真っ赤にしたアヴィリオに手を掴まれて止められた。

リムネルは因みに爆笑してる。だってアヴィリオならそうするの分かってたし。




「これ、レン。年頃の娘がその手の悪戯を仕掛けるでない。殿下に怒られるぞ…アヴィリオが。」




「はぁい。…でもアヴィリオもリムネルも、そういった感情を弟子に向ける人じゃないから大丈夫。」




「っ、ふふ……当たり前じゃない。弟子だって可愛い子供みたいなものなのよ?それに劣情を向けるなんてそれこそ三流以下。薬でも盛られない限り弟子に向けるなんてありえないわ!」




「人間や獣人がどうかは知らんが、そもそもエルフはただでさえ欲が薄いって言われてるからな。…だからってそういうことはするんじゃない!!」




食器を洗い終えた神父様に叱られ、結局触らせては貰えなかった。…代わりにフロウのお尻をむにってしたら病み付きになりそうな感覚がヤバかった。

お尻に顔埋めるなんて事は勿論しなかった…一歩手前で留まったとも!



まだ夜は明けず、私もお風呂に入って今日を終える。…何だか部屋が手狭くなった気もするけど、幸せな部屋になった。

今日はフロウに抱き付いて、そのまま眠ることにした。…ほんのり、お日様の匂いと石鹸の匂い。











ーーーーーーーー














翌日は私の体調も考え、お休みだった。何時もより皆少し遅く起き、神父様に珍しく起こされて下に降りる。


フロウ達にはお肉やお魚など、私達が口にするものに味付けがないやつを上げ、今日の朝はクロワッサンと目玉焼き。スープにサラダとデザートには私だけプリン。

昨日頑張ったご褒美だそう。




「お休みかぁ……クォーツ達の爪を丸めて、…その後どうしようかなぁ。」




朝食を済ませて自室でクォーツを膝に乗せ、リムネルから借りたヤスリで爪を整えながら一人言をぽつり。

今まで休みが無かった訳じゃないけど、今日は自主訓練も禁止の本格的なお休み。まったりだらだら過ごせと言われている。


……確かに、正直体を動かしたくないし、寝転んだら動けなくなる自信はある。

小さい頃のあの回復力はないし、そもそも魔力量が増えてるから万全になるまでは二日くらいは安静にしてろと言われてしまった。……まぁ、この空気が澄み、魔力が満ちた森な上に結界の張られた教会だから二日くらいで済むけど、普通は一週間程度は安静にしなくてはならないそう。



それくらい、魔力切れはキツい。



見事にすっからかんになってどうやら倒れたらしい。…うーん、魔力配分、本当気を付けなくちゃなぁ。




でも唐突に休みを切り出されると何をしていいか悩む。…会社とかには常に休みたいとか思うのになぁ。



整え終わった子を部屋へ放ち、入れ替わりで別の子が来ればヤスリで整えを繰り返し……うん。すぐ終わった。暴れなかったから本当あっという間だった。痛いことする訳じゃないって分かるのか、拒否もしないいい子だもんね。




因みに神父様は書類仕事。リムネルとアヴィリオは私が休みになったし、昨日の事もあったので一旦ギルドに報告しに戻ってるらしい。定期報告しに私が休みのときたまに帰ってたりするから気にすることはない。


うーん……となると、本当にやることないな。お昼寝は少し早いし、神父様のところでまったりしてようかな。



私が出来ることはないが、好いてる人の傍に居るほうが落ち着く。だからアヴィリオやリムネルの私室に居ることもあるし、神父様の書斎に居ることもある。勝手にベットで寝てるときもあるのでそういうときは流石に起こされる…まぁ、神父様は寝顔眺めてたりするけど。



ともかく、思い立ったら行動。



部屋で寛いでる皆には好きに過ごしてて、というとペイルウィング達は窓から飛び立っていった。居場所は離れててもある程度分かるし、人に襲われたら逃げるよう言ってあるので問題ない。

デューに関してはインテリアとして窓辺に飾ってた水草入りの金魚鉢モドキが気に入ったらしく、中に収まって日光浴してた。……結構大きい器だけど、デューが入るとなんとなくみっちり感がある。余裕はあるだろうけど、デュー専用にしよう。



で、フロウはというと、着いてくる気なのか足許を引っ付いてくる。

そもそもフロウは滅多に傍を離れたがらないので諦めた。でもそんなに引っ付かれると転びかねないからちょっと離れ……あ、受け止めてくれる気で居るの?でもそもそも転びたくないから離れてね。



のっそり、のんびりと階下に辿り着き、神父様の書斎にノックを三回。間髪いれずに返事が来たので私が来るのを見越してたのかもしれないなぁ。




「ソファは空けておるぞ。」



「ん。」




適当に本を選んでソファにぐってり。


獣人は仰向けに寝ると尻尾の付け根が居たくなるので横向きか俯せ。私も俯せでよく寝てるしこっちの方が本が読みやすい。


神父様達が寝転ぶと足がはみ出るのに何故か私だとぴったりサイズなのに不満を抱きながらも未だ成長期なのを信じて本を開く。

床では既にフロウが眠る体勢に入ってるのでフロウもそこそこ魔力を消費してるのだろう…片手で撫でながらほんの少し魔力を渡せばふわりと尻尾が揺れた。……まぁ、私もそんなに回復してないからほんのちょびっとだけなんだけどね!



それでもフロウ自身である程度魔力が回復出来るのでこれ以上渡す必要がない。というかお前も休め的な視線が下から突き刺さるので撫でる手を引っ込めて本に集中する。


適当に選んだから、全然面白くない本だった。……国の成り立ち、今までの政治。近隣にまつわることが書かれた書物…案外この国は広いことを知ったのと同時に欠伸が一つ。



面白くない本ってなんでこんなに眠くなるのだろう。



書物を捲る音とペンが走る音を子守唄に、誘われるまま意識を落とした。…本は落とさぬように抱えたのだけは褒めて欲しい。


お昼寝には早いけど、お休みなさぁい…





のんびりする日も大事

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