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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
二章 最強も望まない
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第五十六節 従魔契約5

生きてます、死んでないですゴリラ




フロウに乗ってゆっくりと湖へ向けて進む。……流石に彼らをフロウと同じペースで走らせるほど鬼畜じゃない。



何より、森の道に慣れていないのが一目で分かる。…整備された道や馬車での移動が彼らにとっては主だった筈だから当然といえば当然か。危険からは程遠く、自ら武器を手にする必要も基本的にはないだろうし。




「そういえば、リュエールも従魔にするんだってね?知識はどれぐらいある?」





「初めましてレベル。湖に居ることと……あと、予想だけど強い魔物。アヴィリオが吹っ掛けてくるくらいだから…うん、無理したら大怪我とかすると思う。」




「アンタねぇ……」




真横から呆れた様な視線が突き刺さる。…後方からもするけど無視だ、無視。こそこそ話すんじゃありません。




「あ、あの、リュエールって美しいけど初心者は挑んではならぬってお祖父様から聞いたんですけど……それくらい強い魔物なんですか?」



着いてきてた一人が手を上げ、ヴェセルに問う。ペイルウィングもだけど、この森って綺麗な魔物が多いのかな。


っていうか私よりもしかして彼らの方が魔物とかについて詳しいんじゃ…?魔術と体術とかの訓練しかしてないもん。帰ったらアルトゥールに相談しなきゃ。




「そうだねぇ……初心者が何人でパーティ組もうと大怪我は必須。よくて骨を少しやられるくらいか。…リュエールは群れで行動するし、それを統率してる上位種のソニード・リュエール…私達はソニードって呼んでるんだけど、その上位種に会ったなら真っ先に逃げな。それなりに経験を積んだ奴らでさえ大怪我、命の危険は有り得るからね。」




「ふぅん……やっぱり上位種って格段に強さが違うんだ……って、なにその顔は。」





群れで行動する以上、リーダー的なものは居るだろうと思っていたけど……同じリュエールじゃなくて上位種とは。リーダーになったから進化でもしたのか、あるいはリュエールの中から新たにソニードが産まれるのか。


そんな事を考えていたらまた呆れた顔をされた。特にヴェセルから。なんで?




深いため息を溢すと、ヴェセルは額を抑えて此方を…というか、フロウを指差した。





「アースフォクスも上位種。アースフォクスは番や家族以外の群れは作らないからこそ、単独でも圧倒的な力を持つし……何より賢い。森の奥にしか住まないから滅多にお目にかからないけど…いかにこの森には弱い魔物とかしか居ないと言えど、普通に会ったらまず死ぬ。アンタほんとに知らないんだねぇ…」





「……………え、そんなに危ない子だったの?」





うっそだぁ、と思ってフロウを覗き込むと、赤い目がちらりと此方を見て…くるる、と楽しげに喉を鳴らした。全然危険に見えない、優しく頭を撫でれば足取りが軽やかになった。……え?危ない子なの?



やっぱり危なくない、とヴェセルに視線で訴えてみるも鬱陶しいとばかりに手で払われてしまった……解せぬ…。




「………そろそろ湖に出るよ、どっちを先にするかはアンタが決めな。私達は森の中で見学させてもらうから、巻き添えは気にしなくて平気だよ。」




「こんなに離れてて平気?」




「アタシは守るのは苦手だからねぇ、咄嗟に全員を守りながらっていうのは流石に無理だ。だったら最初から安全地帯を取るし……何より、離れてでも見えるよう目を鍛えるのも大切なのさ。」




成る程。確かにアルトゥールにも目を鍛えるのは言われた事がある。…早く上達する人ほど、よく相手を観察してるそう。あと嬉々として瞳を覗き込んできたから見たかったのもあるでしょ。


それに他に気を使わなくていいのは助かる。被弾させたらとんでもないし……うん、絶対怒られるだけじゃすまないな。




ヴェセルに感謝しつつ森を抜け、湖へ顔を出す。



水面には羽を休めてるのかさっき見た鳥の魔獣……多分、ペイルウィングだ。



一応遠距離から鑑定も出来るけど……契約してからでいいか。此方からか手を出さない以上は襲ってこないらしいし、近付いてみる。


すると、水浴びをしていた殆どが離れてしまったけど……6羽、逃げることもなく此方を真っ直ぐ見てくる個体が居た。特に一際蒼い個体から熱烈な視線を感じる。




「フロウ、下がって。一人で試してみる。」




フロウを頼ってばかり居ては身にならないし、何より一人で戦える証明をしたい。

力を示さなくてはいけない、と言われたけど…具体的なやり方は分からないので、とりあえず契約を試してみる。


1羽ずつなんてしたら確実に逃げられるので6羽同時に。



成長と共に魔力もだいぶ増えたし、魔力的には問題ない、……けど、6羽同時は意識が削がれて難しい。



反発されるかと思ったけど、何故か暴れることもない…ノーチェのおかげかな?…でも契約の難易度が変わるわけじゃない。

フロウの時は最初から刷り込みがあったから簡単に出来ただけで、今ですら繋ごうとした魔力のパスがいくつも千切れてる。


此方の魔力を手加減しすぎたか。



なら、普段の魔術より多く、激しく。向こうの魔力ごと呑み込む様に一度繋ぐ。恐れたのかバシャバシャと暴れは多少したけど……魔術を撃ってこないし、断ち切ろうとしてこない。

まぁ、一度完全に繋がってしまえばあとは程好く調節するだけなので此方のもんだけど……この完全に繋ぐ、っていうのが中々難しい。



今のだって、並みの魔力量じゃ足りなかった筈。……持ってるからこそ出来る荒業だけど、この際目を瞑ろう。


あとは繋いだパスが強固になるようにフロウの時みたいに何重にも魔力を重ねて………契約完了。




「………よし、従魔鑑定。」




一羽一羽に手を翳し、確認する。従魔術師が使える従魔鑑定は、名前だけでなく使える魔術系統だったり病に掛かってたら病の名前まで分かる優れもの。普通の鑑定は石とか、死んだ魔物にしか使えないからね。


鑑定しながら宜しく、と頭を撫で……最後の一羽を鑑定したとき首を傾げた。




「クリスタルペイルウィング…?氷の魔術も使えるの?」



確かに、陽に透ける羽根は蒼くてキラキラしてる。…氷の魔術はこの世界だと高度な魔術だったりする、水辺がないと使えないもの多数だけど……私は空気中に水分があるの知ってるからね、全然簡単に出来たし、被害がそう出ないから使いやすくていい。


でも滅多に使わないようにアルトゥールから言われてる…基礎属性以外で使える魔術師がこの国では少ないそう。



それはともかく、問い掛けたからか、目の前に氷のつぶてを出してくれた。拳ほどの大きさで、勢いを付けて当たったら骨は軽く折れるだろう……成る程。こういう個体も居るのか。



全員のステータスを確認し、優しく愛で、フロウを呼び戻す。森の付近で待機してたフロウはあからさまに不機嫌だったのでめいっぱいぎゅーってしといた。




「あ、……ヴェセルー!!とりあえず一旦終わった!!ちょっと聞きたいことがあるんだけど!」




茂みへ向けて声を掛ければ、何故か顔を抑えてヴェセルが出てきた。ちらほら着いてきた人たちも見える。


そのままやってきたヴェセルになんでか頭を鷲掴みにされた………え?なんで?




「ヴェセル、痛い。」




「アンタねぇ……規格外にも程がある。実力を見せずに契約なんて、普通不可能なんだよ!一体何をしたんだい?」




「何をしたって言われても……あ、もしかしたらアンさん見付けたときに魔術使ったから、それを見てた子達かもしれない。でも魔力ごっそり持ってかれたから…こんなもんじゃない?」




「あぁ、そういうことか……アタシは適正ないから分からないけど、使うだけでも相当魔力持ってくんだろう?魔力不足の症状はないかい?だるいとか吐き気は?」




「特には。このままリュエールの契約に行きたいんだけど…どの辺りに居る?」




魔力がごっそり持ってかれはしたけど、少し休めば問題は無さそう。契約出来ずとも、最悪魔力がつきる前に退去すればいいし……アヴィリオに色々言われるだろうから本当に最後の手段にしよう。


問題があるとするならば、リュエールとは戦うはめになるだろうからフロウを前線に呼ばなくてはいけないことぐらい。流石にそろそろ本気で拗ねそうだし。




「す、少し休んだ方がいいんじゃ…?黒猫族の魔力が高いのは知ってるけど、君まだ子供だし…」




「そうだよ、リュエールと戦うなら万全の方がいいよ。」




なんて考えてたら、ヴェセルの後ろに居た男女が声を掛けてきた。フィートとメリーラではない。


男の人は虎の獣人だ。体格が大変逞しい。女性の方は犬、かな?狼にも見えるけど。



別に問題はないけど……そういえばそろそろ昼時を過ぎる頃だろうか。…お昼食べてない。

しまった、と思ったときにはぐぅぅ、と小さくお腹が鳴った。……魔術師はよくお腹が空くんです、そんな微笑ましい顔をしないで。




「お昼まだだった。特に持ってきてないし一旦帰る。」



「なら、折角だから一緒に食べるかい?幸い根性なし共が帰ってったから食材はたんとあるし…リュエールについてもその時教えて上げるよ。」




返答をする前に勝手に歩き出してしまったヴェセル。…折角のご好意だから受け取ろう。ぐうぐぅなってるのは勿論聞こえない。こら、フロウ笑うんじゃありません。


ペイルウィング達も着いてくるの影でを確認しつつ、フィート達の後ろを行く。……名前、着けなきゃなぁ。











◇◇◇◇◇◇








「それ、何。」




「あれ?アンタ、アイテム袋を知らないのかい?まあ森から出てないなら必要ないだろうけど…


これはアイテム袋。名前の通り食料だったり素材だったりを入れるための袋さ。容量は刻まれた刻印によって異なる。高ければ家、安ければ魔物死体が数体程度。…ま、空間魔術を使えれば要らないんだけどね。」




各位で調理してる間、ヴェセルが作ってくれるというので横で控えてたら何やら麻袋を漁っていたので見ていたら…明らかに容量以上が出てきたので思わず声を掛けた。

アイテム袋に空間魔術。知らない言葉が出てきた。……まぁ、なんとなく予想がつくけど。




「空間魔術習ってないのかい?…まぁ、あれは上級だし……ほら、これが空間魔術。“アイテムボックス”。」



「……簡易詠唱?」



「いや、詠唱がこれしかないのさ。容量は使い手の魔力量によるけど、通常のアイテム袋に比べて劣化が遥かに遅いし、何より使い手以外取り出せないのがいい。盗難が減る。

…空間魔術も使い手が少ないが“アイテムボックス”と視界の端まで一気に移動できる“ワープ”はアタシも使えるし、なんなら登録した魔石同士の場所へ行ける“テレポート”も教えて上げられる。」



ヴェセルの手の上に何だか白い靄がある。…空間魔術というだけあって、もしかしたらその靄が空間を歪めてるとかかな。


そんな便利な魔術が在るなら教えてくれればいいのに、アルトゥール使えないのかな。……それか意図的か。


曰く、癖がつかないようにとの事らしい。だから私が知らない魔術の方が多い。

まぁ、その分基礎の基礎は完璧なんだけどね、我ながら。




「でも、使えるのになんでアイテム袋を?」




「今回アタシは監督役で来てるからね、アタシ達の行動を見て、野営の準備をするのも課題の一つなのさ。


知らないことを聞けるか、聞けずとも見て学べるかっていうのも試験の一つになっててね。なにせ、アタシらのギルドは討伐が主、見つかるまで野営はしょっちゅうだから準備くらい誰でも出来る。」




「そっか、討伐対象とか採取対象が見つからないこともあるんだ……野営、したことない。」




「ま、そりゃそうだろう。でも魔術師が一人居れば野営準備はすぐ終わる。基礎魔術は出来るんだろう?

火を起こしたり、水を生み出したり、雨が降れば簡易の土小屋を作ったり……出来ることは山ほどある!いつか、アンタもパーティを組むだろうからその時役に立ってあげな。」




「ん、わかった。」




この国は魔術師が少ないから、便利な道具は沢山あることを教わって、干し肉を分けてもらった。


この干し肉も空間魔術が使えるようになったらちゃんとした料理をしまえるらしいので、とりあえずギルド所属前にヴェセルに習う約束を取り付けておいた。

干し肉もね、不味くはないんだけど……神父様の料理が基準だからちょっと……




栄養補給をしたら、リュエール戦に行かなくては






ようやく契約。次は殴りあい

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