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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
二章 最強も望まない
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第五十節 訓練風景2

繁忙期ゴリラ。執筆が思うように進みません




全身の筋肉を解して、照れから解放されたらしいアヴィリオとアルトゥールに向き直す。




「では、ウォーミングアップからいきましょう。」



「ん。」




示された木に視線を移し、頭の中で具体的なイメージを叩き起こす。娯楽に富んだ地球産の異世界人なので、妄想することは大得意だ。



燃え盛る焔を、貫く濁流を、吹き荒ぶ烈風を、穿つ地柱を、凪ぎ払う光線を、呑み込む深淵を。其々を木へとぶつけていく……無詠唱で。




「はい、本日も問題なく。ただ少し発動に時間が掛かりましたね…やはり光と闇、それから火は苦手ですか?」




「うーん、火はしっかりイメージ出来てる筈なんだけどなぁ。」




「初歩とはいえ、ほぼノーモーション、無詠唱でここまで威力出せれば充分だろ。命中率も初期と比べれば格段に上がってる。」




最初は詠唱込み、それから簡略詠唱、最後に無詠唱と難易度が変わってくる。…詠唱が無くなった途端、急に威力も命中率も下がって驚いたのが懐かしい。…無詠唱に慣れてくると逆に詠唱邪魔で邪魔で仕方無い。そもそも私のやっていたゲームの殆どに詠唱がなかったのが大きい。


詠唱はトリガー。魔方陣は出現しないけれど、言葉に魔力が勝手に乗る。拳銃を知ってる私にとっては例えば詠唱の代わりに指を鳴らす、手を叩くとかに変換できるので応用が利く。アルトゥール達は知ってるけど、詠唱の代わりに私の魔術発動には視界に入れる、という条件がある。



因みに人に言うなと口止めされた。それから視界に入れる以外でも指を鳴らすだったり、足を鳴らすとかも出来るようにしておくよう言われた。…無詠唱ってそれなりに珍しいらしい。人間基準なら。エルフ基準だとわりと多いらしいんだけど……私が通うの、貴族が多い訓練所とはいえこの国にエルフってそもそも少ないんですけど、覚えてます?




「強すぎても弱すぎても悪目立ちするからな。程々がいいんだろ?」




「うん、まぁある程度は隠せるしフロウでどうせ目立つから最悪いいや。」




「どんな依頼が来ても貴女を死なせないよう、というオーダーを私は頂いてますから。…まぁ、本当は傷ひとつ負わせないくらい叩きあげてと言われたんですけど……流石にそれはと思いまして。」



苦笑しながら言うアルトゥールにアヴィリオと二人で顔を見合わせた。初耳だ。というかそんなこと言うのって……




「時間さえあれば、あの方は毎日のように貴女の事を聞いてくるんですよ。訓練状況から日々の事まで。…休日、貴女街へ殆ど降りないものだからお忍びで城下に行っても意味ないと拗ねてらっしゃいましたよ?」




「相変わらずだなあの王子……いや、今は王太子か。継承っていつやるんだろうな。」




「忙しすぎないといいけど…ナオ、無理する癖があるから。適度に催促しないと全然休んでくれないの。」




二人で生きていくのだって、いっぱい考えることあったし、お互い気持ちがいっぱいいっぱいの時があった。

それなのに国王になるだなんて……うーん、考えただけでも苦労が絶えなさそう。側室やら世継ぎやら、きっとつつかれるんだろうなぁ。他国からも、この国からも。



国の仕組みを知るわけではないけど、私情を抜いて考えると……普通に、まだ子供と呼べる年齢の子に、国を任せるなんて難色を示すだろう。




「大丈夫ですよ、常にレーヴェディアともう一人…殿下と歳の近い、私の信頼できる家の者を置いています。聞く話だと、中々幼馴染みの様に仲良くいってるようで私も嬉しい限りです。」




「アルトゥールが信頼してるなら大丈夫だろうし、レーヴェディアが居るなら尚更。…でも、レーヴェディアって本当は王様に仕えてるんじゃ…?」




「えぇ。レーヴェディアは現王直属の護衛。今は殿下の周りに余りにも味方が少ないので貸し与えられてる、という状態です。正式に継承を終えれば、殿下は新たに直属の護衛を任命しなくてはなりません。」




成る程……期間限定の護衛、ということか。レーヴェディアがそのまま残ってくれたら楽でいいんだけど…レーヴェディアだって忠誠を誓ってる人のところに居たいだろうし、流石に贅沢だな。

……というか、王族の内部事情こんなにペラペラ話して大丈夫なのかな…



そう思ってアルトゥールを見ていたら、ニコリと微笑まれてしまった。いい笑顔だ、百点。




「貴女達に話す分には問題ありませんよ。未来の王妃に、直属護衛の候補ですから。」




「げっ…!俺もまだ付き合わされんのかよ…!!」




「えぇ。ギルドマスターからの推薦ですし……エルフの郷に戻るのはどうせ退屈でしょう?」




エルフの郷。全てのエルフがそこで産まれたとされ…この世界に存在するエルフの半分以上がそこで暮らしてるという神秘の森。


因みにエルフはエルフでも、闇属性の魔術や肉体強化に特化したダークエルフや、エルフとダークエルフの先祖、つまりどの種族とも混じってない、太古の昔より純血を守ってきたハイエルフという種族も居る。



ハイエルフは言わばエルフの上位互換、エルフよりもずっとずっと長生きで、最早神の領域と言ってもいいらしい。アルトゥールからの教えなので多分あってる。




「当たり前だ。あんな場所に戻るくらいだったら、こいつの師匠やってる方がずっと楽しいに決まってるからな!」



肩を引き寄せられ、何やら自慢げなアヴィリオに目線を一度やる。…うん、この表情の時は……




「アルトゥール。」




「初弟子から離れたくない、叶うならずっと一緒がいい、でしょうね。だってアヴィリオ、この間も母上たちと連絡取ったのでしょう?最近は頻度が高くて嬉しいと来てましたよ。」




「なっ?!」




ツンデレ、もとい、うまく素直に言えないアヴィリオの言葉をアルトゥールは何故か翻訳できる。兄弟だからなのだろうか……小さい頃からツンデレだったのか。


にまにまと見上げればアイアンクローを頂いたけど、力が全然籠ってない。…さては顔が真っ赤だな?見せてくれていいのに。




「ふふ、これ以上は拗ねますよ、アヴィリオが。ちゃんと修行に移りましょうか。」




「誰が拗ねるか…!!」




「はいはい……じゃあ、今日は肉弾戦からやる?」




「そうですね。体力があるうちにやってしまいましょう。」




くすくすと揶揄うのを止め、一度全身の力を抜く。

肉弾戦の相手は……アルトゥール。アヴィリオも既に戦闘体勢に入った私に気付いてか数歩距離を置いた…アヴィリオは典型的な魔術師型、接近戦は出来ない。



…というか、近くにリムネルが居たからアヴィリオが肉弾戦をやる必要なかったんだって。納得。


でも、アルトゥールは違う。




「っ……!」





「考え事ですか?足許が留守ですよ。」




気を逸らしていたのもあったけど、簡単に掬われた足許。慌てて両手を付いて距離を取る。……開始の合図くらいほしかった…



サラサラと軌跡を描く髪。それくらいしか、捉えられなかった。…咄嗟でも受け身を取れるように鍛えられたおかげで此方が怪我をすることはなかったけど……アルトゥール、本気じゃないんだろうな。私がギリギリ避けられる速度を出してくるあたり、意地が悪い。




アルトゥールは近接もこなす万能型。きっと物凄く努力したんだろうなぁ…アヴィリオ曰く、アルトゥールは小さい頃病気がちだったというし………まぁ、今は全然元気そうだし、寧ろスパルタだからちょっとくらいナヨナヨしててほしいんだけどね。




「ほら、早く魔力を回さないと一撃入れます…よっ!」




「っ…言いながら蹴りを入れてくるあたり!ほんと鬼だよね!!」




咄嗟に顔の横に腕を出し、全身の魔力を回す。ぶつかった衝撃に顔を顰めた…アルトゥールの蹴りってびっくりするくらい重い。魔力の扱いが上手いから、身体の一部分だけを強化されると、こっちも全力で防がないと腕を持ってかれそうになる。



魔力による身体強化。


剣士や闘士なんかが使う補助魔術の一種。普通魔術師は使わない。身体能力の向上よりも、後方で魔術を放ってた方が強いから。……でもアルトゥールは、何故か真っ先に私にこれを教えてくれた。…それと、もう一つ。




「おや、魔力を回すと同時に痛覚麻痺も使えるようになりましたか。結構本気で蹴ったので、傷は見ましょうね」




「麻痺させてなかったら泣いてたでしょ今の…!!」




さらりと暴露された事に食って掛かればアルトゥールが構えを解いた。蹴ったところを見るつもりなのだろう……いやいや、確かにちょっと気を抜いてたかもだけど、本気で蹴ることなくない…?そんなに怒ってたの…?




「…言っておくが、別に兄貴は怒ってないぞ。実力テストみたいなもんだからな、今の。」




「……顔に出てた?」




むに、と自分の頬をおさえて傍観してたアヴィリオに視線を向ける…何その嬉しそうな顔。


とりあえず、手招きしてるアルトゥールのところへ行かなきゃ。まだまだ訓練は始まったばかりなんだから。





今のところ群を抜いてアルトゥールが師匠してる

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