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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
一章 美少女は望まない
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第四十七話 歪み少女

更新頑張りたいけどゲームが私を離してくれない




アルトゥールの淹れた紅茶(私だけまたメスリの花びらが二枚)を飲んでとりあえず一息。特に王様と神父様に疲れてたんだと思う。精神的に。



ちょっとアヴィリオがそわそわと落ち着きないように見えるけど……あれかな、もしかして久し振りにお兄さんに会ったのかな。それなら仕方ない。リムネルと一緒に微笑ましげな視線を送るのを止めてあげよう。




「さて……此処に居る全員、特に父上達と神父様には話しておかなきゃいけない事があるんだ。…レン。少し嫌な思いすると思うけど、お口チャックしてられる?」




「してられる。ナオがそうしてほしいって言うなら。…必要な事なら嫌なことも納得できるから大丈夫だよ。」




ナオの言葉に王様と神父様は漸く落ち着いてきたのか表情を引き締めて、いつもの表情に戻っていた。…まだ口角緩いけど。



今この場に居るのは私、ナオ、それから王族一家に神父様、アヴィリオにリムネル。そしてアルトゥールとレーヴェディア。

何を話すのか気になるところだけど……うん。いいこなのでお口チャックして待ってよう。そんなに驚く様なこと言わないだろうし。




「父上……僕は、…僕達は、前世と呼ばれるものの記憶を持っています。」




「っげほ!っ…!」





思いっきり紅茶噎せた。気管に入ったよ…!!!


ああでも、甘露花のいい匂いが鼻腔にくる……いややっぱなんか痛い。咳止まんないんだけど!




「……は…?」




「うん。その反応は想定内。僕も彼女も、ここじゃない別の世界で生き、そして死んだ。そしてこの世界に生まれた。……言ってしまえばそれだけの事なんだ。」




「い……いやいや、お前。冗談にしても無理があるぞ。大体前世の記憶だって確かとは言えないだろう?それも異世界だなんて…」




反応はそれぞれ違うが、殆どの人が驚いてる。…納得したような顔をしてるのは神父様とレーヴェディアだ。ナオの発言直後は目を見開いてたけど…私とナオを交互に見ては頷いていた。

そのままレーヴェディアは背中を擦ってくれた。……タイミングが悪かった…。


問答してる王様は……うん、戸惑ってる、という言い方が一番しっくりくる。なんて問うべきか、なんて言葉を掛けるべきか…そりゃ確かに誰もが悩むだろう。




自分の息子が、娘が、突然前世の記憶あるんです。なんて言い出したら疑うのが当然。あるいは遊んでるのかと思うだろう。…普通ならば。

子供らしく過ごしていたならばいくらでも誤魔化しが効いたのに…明らかに5歳の子供がやらないことをやりまくった自覚はある。ありまくる。


きっとナオも8歳とは思えないことをいっぱいやったんだろう。……だから、誰も子供の遊び、なんて認識はしてない。




「…不気味でしょう?我が子といえど魂は別人に等しいんだから。僕達はもう大人って年齢だったから余計に周りの子供とは明らかに違う。……放り出されても文句はないよ。レンを連れて生きてくから。…殺されるのだけは御免だけど。」




無理して笑い、はね除けるような言い方をするナオに眉を顰めれば困ったような笑みが返ってきた。

私もよくやるけど、笑って誤魔化そうとする癖がある。深刻であればあるほど、笑って誤魔化さないと限界が来てしまう。


深く、広く、思考を広げると、必ず行き着くのは最悪の結末。


考えて、考えて、……どうしたらいいか分からないから誤魔化す。特に私は怒るのがとことん苦手なので余計に誤魔化す。




「信じるも信じないも任せるし、異端だと糾弾するならしてもいい。僕らは変わることはないしね。」





「まぁ、まぁ、まぁ!糾弾だなんて!我が子を糾弾する母が居るものですか!……いい?貴方の魂が他人であろうと無かろうと、ナオはナオ。ナオ・ベスティードに他ありません!…私達の息子なのよ、あなたは。


前世の記憶持ちなんて素敵なことじゃない。賢き者は年齢性別関係なく、人類に取っての宝。…だから、そんな顔しないで頂戴。レンちゃんもよ。」




ぷりぷりと可愛らしく怒り出した王妃様につられて、まず王様の表情が緩んだ。それがどんどん広がって……うーん、この世界の人達は皆優しいな。普通だったら凄く嫌な顔しそうだけど。



ちら、と神父様を伺い見てみると……何だか物凄く優しい顔をされた。…あれかな、不安だったと思われてるのかな。




「お前も、我が友人らの……私の子に変わりない。むしろ恐ろしいほど聡明であった理由が分かってスッキリしたぞ。」




「確かに。君の年齢を知ってはいたけど…先程のは衝撃的だったからなぁ。不躾かもしれないけど、前世は幾つぐらいだったんだ?…ああ、俺はイクス。ナオの兄だ、気楽にな。」




笑みを交ぜながら聞いてくるイクス王子…いや、彼が一番上だし、イクス王太子と呼ぶべきだろう。

まるっきり王様を小さくしたような外見。獅子の子であれど、威圧感は少なく、むしろ親しみ安い空気を纏ってる…それが意図的かは分からないけど、慕う人は多そうだな。




「成人は越してましたし、社会に出て働いても居ましたよ。……でも、ある日突然後ろからさっくり。あれにはびっくりでした。」



「「………え?」」




「ああ、そういえば犯人は捕まったそうだよ。君が刺された翌日に襲った人が元自衛官だったらしくて返り討ちだってさ。」




「ほんと?犠牲者増えなくてよかったぁ…」




のほほんと紅茶を楽しみながらナオと尾を重ねる。そういえば全然気にしてなかったけど、とりあえず犯人は死罪にしてほしい。出来るなら死罪の前にとびきりの苦痛を味わわせてから。


……でも、あのとき刺されてなかったらこうしてナオと居られなかったというのも中々感慨深い。……今度は、ちゃんと同棲して、結婚とか、しちゃいたいなぁ…




「刺され……?え?」




「僕らが居たのは魔法とか剣術とか無かった世界だけど、文明は遥かに優れてた世界だったんだ。……人の死が身近にない世界で、レンはたまたま、通り魔に刺された。あの時の憎しみはまだ忘れてないけど……こうして、隣に居られるのは僕らを加護する神々のおかげ。」




「ナオも私を追って死んでしまったから…二人揃って神様に魂を保護されて、此方に。その際にちょっと年齢差が出たけど……こうしてまた、隣に居られるのはしあわせ。」




呆けてる皆に説明すれば、一端ストップが掛かった。首を傾げてみると……何故か溜め息が一つ、二つ、三つ。……解せぬ。





「お待ち。……通り魔ですって?貴女…辛かったでしょうに、無理して笑ってるんじゃないでしょうね?」




「無理してないよ。…ナオが隣に居てくれるだけでいいの。今は神父様達も居てくれないと寂しいけど…でも、ナオの隣に居られるならそれでいいの。

私は私を愛してくれる人が好き。理解してくれる人が好き。そして…同じくらい、感情を傾けてくれる人が愛しい。ただそれだけなの。…確かに通り魔は憎かったけど…前よりずっと長く、今度は隣に居られる。それって凄く幸福なの。」




ぎゅー、とナオに抱き着いて、私のってアピール。もう辛くないのは本当だ。

むしろこちらの世界の方が私に合ってるといえる。……魔法があるからとかじゃないよ!かっこいいけど!


そうではなくて…獣人として生まれたからには伴侶は“番”として認識される。

番の匂いは格別で、落ち着く。不安や心配は伝わってくるらしいし、喜びも勿論。それから、何となく居場所も分かるらしい。…私もナオも、まだ成人になってないから番にはなれないけど。



ふふん、とリムネルに笑えば、やっぱり呆れた顔をされた。…重く考えると疲れちゃうよ。当人達が大丈夫って言ってるから大丈夫なんだよ。




「死を体験してるってのも凄いが、揃って転生ってどんな確率だよ……まぁ、よかったな。」



「えぇ。愛するものと離れ離れになるのは辛いでしょうからね……そうだ。貴女、王宮に入りませんか?アヴィリオの修行は勿論庭園で出来るようにしますから、内弟子として。ナオ殿下ともいつでも会えますよ?」



穏やかな顔で、王宮入りを進めるアルトゥール。……くしゃ、と顔を歪めてそっぽ向いといた。王宮なんて目立つ場所は御免被りたい。


今日の事はすぐ王宮だけじゃなくて城下にも伝わるだろうし……うわ、暫くは街もいきたくないな…



目立つのは嫌い。出来るならば神父様達にナオとひっそり暮らしてたい。…いや楽しいこととか、賑やかなのは好きだけど…注目を浴びるのは避けたい。クスクス笑われるのとか、明らかにバカにしてる視線とか…味わったことのある身なら誰でも分かるあの不快感。


突然表情が変わったからか、あるいは思いっきりへたれた耳を見てからか、アルトゥールがおろおろし出した。





「……僕もね、正直手元に囲っちゃいたいんだけど……この子、目立つの嫌がるんだ。王宮にだって貴族や兵が沢山居る。中には元老院の者とか、他国のものも。…それも嫌なんでしょ?」




「嫌。物凄く、嫌。……神父様達と過ごすみたいに、静かだけど賑やかなのがいい。これはナオでも譲れない。」




他国の者なんて特に冗談じゃない。私はただの平民だから、いちゃもんつけられたら死ぬほど面倒なことが待っている。…ナオや王様が庇おうとすれば、それだけで目立つ。


けど受け入れれば罰を受ける。…痛いのは嫌だし、繋がりが欲しいからと婚約させられても困る。ナオ以外と婚約なんてしたくない。



どっちに転んでも大変だし、自分だけで何とかしろ、と言われても無理だ。平民の言葉は弱すぎる。…そうなると王宮に入るなんて詰みにしかならないし、誰かの養子になって後ろ楯を手にいれたとしても変わらない。貴族は総じて血筋がいい、それを重んじる人は多い……だから、養子になると余計面倒なことが増えそうなのだ。



王宮に入るなんて自ら嫌いなものに突撃してるのと変わらない。苦痛でしかない。


残念ながら私はMではないので飛び込むことはしないし、少女漫画のヒロインよろしく、慕う人の為に全部の苦痛を背負うこともしない。

というか、常々疑問なのだが、少女漫画のヒロインってなんであんなに突っ走れるのか……いやまぁ、確かに大衆は夢を持てるだろうが、実際にやってごらん?黒歴史が生まれるだけだから。



「王宮は、嫌。ナオと一緒でも、嫌。……ナオが王様になったとしたら、物凄く引きこもる。」



「君の引きこもり癖もだいぶ拗らせてるよね……教会が居心地良すぎるんでしょ?全くもう…」




呆れたような、でも、とても優しい声と表情に安心して、ふへへ、なんて笑い声を洩らしてナオの腹部に頭を寄せた。

許されるから甘えれる。拒絶されないからいつまでも執着する。……一度でも拒むことはナオはしなかった。だから、誰よりも愛しい。


何度だって、それこそ呪いのように。私達は好きを、愛してるを繰り返す。ナオがどう思ってるかまでは知らないけど、魂に刻まれるように、なんて願ってしまう。



でも、そんな歪みは口にしない。


だって賢くて、可愛くて、あざといのが私。好きな人にくらい純粋ぶった猫を被ったっていいじゃない。女の子だもの。

理性も心も、とろりとチョコのように蕩けさせて、私のものにしてしまいたい。




……でもなんでか、真っ先に天を仰ぎ出すのはレーヴェディアなんだよね。不思議。





最近ツイステにも手を出し始めたゴリラ

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