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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
一章 美少女は望まない
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第三十八話 ベスティード王国

国のお話、大国ほど内部が脆い(偏見)





まだ一部の人々の記憶に根付いているほど、そう昔ではない過去。



ベスティード王国という獣人が多く在住する大国は、その国を治める者のせいで多くの血を流していた。




その人は、第74代目の当主、トーレ・ベスティード。75代目のブランシュナ・ベスティードの父に当たる人物だった。




トーレは戦が好きだった。戦こそ獣人がもっとも生を体感できる場所なのだと、小国から大国に至るまで、様々な国を略奪、そして統治していった。


手にしたものには興味は湧かず、手に入らなければ子供の癇癪の様に暴れまわる。



そんな者が頂点に君臨すれば国は荒れる。



戦後の昂りからか、正妃の他に後宮にも女は多数。それも女共は贅を凝らしたものを好み、民が治めた金にすら手を付け、民を圧迫するばかり。

何せその殆どは顔や身体だけで王が独断で選び、才女とは程遠い……酷く利己的な女しか集わない魔窟だったのだから。




まともだった臣下と妃は国の安寧を危惧した。




当たり前だろう?誰が愚かな王に忠誠を捧げるものか。


略奪にこそ己の悦を見出だし、それを獣人の性だと嘯く者に信頼を寄せるものなど居はしない。




大国になりすぎたベスティード王国は、南方の国々を敵に回し……また、交友関係にあった別大陸、北の国々すら、他に支援する始末。


誰がどう見ても、戦争をする手前。トーレも勿論それを迎え撃つつもりだったらしい。





“らしい”というのは、戦争をする前にトーレの首が取られたからだ。




愚王の首を民へ、臣下へ、そして他国へ捧げ、新たな王は告げる。




「愚かな王は責任を持ち、討ち取った。制圧された各国への賠償は無論、唆した貴族どもに払わせよう。我慢ならねば首を跳ねよ、その権利があるのだから。


これからは私が治める。辱しめられ、死した我が妹に恥じぬように、人種問わず、ベスティード王国が誕生した時の志を掲げて。」




立ち上がった反乱軍を率いたのは、トーレの実の息子。

トーレには息子二人と娘が一人居た。



勿論トーレを間近で見ていた三人は、王位継承を誰にするか、それはそれはよく話し合った。誰が頂点に君臨すれば国は良くなるのか。君臨せずともこの国のためには何が出来るだろうかと。


トーレと違い、正妃の方を引き継いだ部分が多かったのは国の救いだったのかもしれないが……後宮の女共が其れを許さなかった。




曰く、正妃の娘だから気に食わない。


曰く、王の寵愛はお前だけではないのに、私の子が王位を継げないのは可笑しい。


曰く、あんな小娘、とるに足らない。




正妃への嫌がらせは当時十四歳になったばかりの幼い少女へ向き……それでも獅子の少女は強かった。



兄達よりも度胸があり、負けず嫌い。社交界という戦場で母共々華麗に咲く、美しき金華。


兄達も誰よりも信頼し、そして愛していたそんな少女。継承も美しく強い妹に譲り、補佐をするべきでは?なんて軽口を交じわす程。



それを、後宮の醜い花は許さなかった。



貴族の娘が社交界で最も価値を無くすのは……嫁ぐ前に傷物にされること。

王家の人間だからとて、傷物を貰う男などそう居るわけもなく……そして何より、十四歳になった娘にとって恐ろしい事この上無かったろう。



ただ、後宮の女共の誤算は、依頼した男達が身売りもしてる犯罪者だったということ。



“好きになさい。”そう言った己の言葉のせいで、人が死ぬとは思わなかった愚かな者達。



母と兄達は大層怒り狂った。


トーレだけは、それでも戦にばかり固執し…怒りの矛先はトーレにも向くことになった。




継承を継ぐものを決め、反乱を起こす。最早彼を玉座から引き摺り降ろすにはその手段しかなかった。…ベスティード王国はそれほどまでに追い詰められていた。



そして内乱を結構した。元より民の怒りも頂点に達していた頃……近衛さえ数で押してしまえば、あとは呆気なかった。




一番上の兄は、外交の手段として…あるいは、誠意を見せるために他国へと婿入りし、下の弟は血塗れた玉座に君臨した。


そしてベスティード王国を、かつての栄光を取り戻すために、ありとあらゆる犠牲を払って内部を建て直し始めたのだ。




「前王の……我が夫の罪を、何故私の愛しい息子達だけに被せられましょうか。諌めきれなかった私にも責任はございます。

償いきれる罪ではないのは承知です…それでも、新たな王に期待するというならば、どうぞ私の首でご容赦を。」




侵略した周辺の国々の代表を集め、王妃は自ら命を絶った。…これより先の未来は、己の息子の手によって輝くのだから、そう示すように。


賢妃の死を民は悲しんだ。…それは元からベスティード王国に住んでいた民だけでなく、侵略した国々の民も。

何せ王妃は、戦に明け暮れる王を止められなかった不始末だと負けた国に頭を下げ、捕虜という名目ではあれど匿っていたのは彼女本人なのだから。




例え王に付きまとう甘い蜜だけを啜る虫が居ようとも、王妃の権限には逆らえず、王に進言したところで戦以外に興味がない王が動くはずもなく……事情を誠意を持って伝えた王妃と王子を支えようと、何れ来る報復の場に刃を秘めて磨いていた。




そうして、今のベスティード王国は存在する。…あらゆる人種が、垣根を越えて笑い合う。それが王の……いや、亡くなった姫と王妃の唯一の願いだったから。



それを叶えんとすべく、新たな王は誇り高き獅子として君臨する。そして、次世代に繋げたけれど、王国の極一部だけが知っている……二人の牙の存在。




小さな火種でも戦は起きる。ならばそれを鎮圧するのも王の務め。…そして王を守護すると共に、近衛を徹底的に鍛え上げ直すため、優れた武勇を国のために尽くした───鋭牙。



社交界において真偽を問わず悪評が立つという事は家の陥落さえ起こし得る痛手。それが王家であろうものならば外国からも見られる目は白くなり国としての不利益に繋がる。…そう、例え真実でなくとも。個人として、国としての価値を下げるには充分な手。…ゆえに先王と同じように愚者にならぬように外交とは、貴族とは、王族とはを徹底的に自覚さえ…時に集る虫を言葉で潰す───毒牙。




その二人は王に忠誠を誓い、国が復興するのに尽力した。そして嫁いできた王妃にも同様に教育を施し…他国に入らせる隙を徐々に埋めていった。


そして国として、立派に立て直せた時……二つの牙は城を去った。




一人は武勇を活かし、冒険者を統括するギルドを建て。



一人は王の命の元、小さな教会に身を寄せ……守護を。




その者らの名は





ディグラート・ベスト。





ヴォルカーノ・アレフリア。






古き公爵家の最後の当主。記録に残ることはない、血塗れた忠臣。





双子近衛は新人の部類なので勿論そんな話は初耳

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