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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
一章 美少女は望まない
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第三十五話 少女の報復

怪我がある程度治ってきたのにまた怪我を負う




風の魔術、水の魔術、地の魔術、光の魔術、闇の魔術と……毎日訓練を重ねて、漸く木を倒せるレベルの初歩をクリア出来るようになるまで二週間掛かった。闇の魔術とか、抉るような感じで木が倒れた時はちょっと頬引き攣ったよね。



だけど、まだ一つだけ……火の魔術だけ、難しくて難しくて……





「なんで遠距離まで飛ばないんだろ…?」




「不得意な属性の魔術なんだろうな。……まぁ、火の魔術は怒りっぽい奴ほど上手いって聞くし、とりあえず明日から距離を詰めろ。最悪火力さえ出てれば合格にする。」




手元で維持は出来るのに、風や水のように木へ向けて打つと……何故か維持が難しくなる。風で消えてしまうからかと思って、多めに魔力を放出しても消える。……おかげでここ最近は魔力を消費しがちで眠い。




そういえば、ここ二週間でフロウもだいぶ落ち着きというものを学んだようで、前は彼方此方に興味を示していたのが足許にベッタリとくっついて過ごす事が多くなった。

リムネルにいじめられてるのかと訓練の様子を見に行くと、リムネルの従魔と戦闘訓練をしてて……リムネルの大熊は従魔らしくリムネルの傍を離れず、主人の命令を聞く騎士のようであった。



それに触発されたんだと思う。多分。




「そういえば……最近レーヴェディア見ないな。」




「ん……なんかお城の方が忙しいんだって。王妃様もナオを神父様に預けて戻っちゃったし……訓練も今は神父様が付けてるって。」




「ふーん……ちょっとギルドで聞いてみるか…チビ、お前明日出掛けるぞ。ついでに修行用の服を買いに行くってヴォルカーノ神父に伝えとけ。」




「わかった。…お買い物かぁ、楽しみ。」




陽が傾き、逢魔時がやって来る。


この時間は好きだ。ちょっと不気味で、それでいて懐かしい様なこの時間。…夕陽が落ちていくのを見ると、なんでか背筋が震える。


前世でも、逢魔時は魔物が現れるなんて言い伝えは残っていた。…死者と生者が交わる時間。



死者が生者を手招くか……或いは、来させぬように止めるか。どちらにしても逢魔時の幻。夢現の様な…逢魔時という呼び方さえ、減っていくようなそんな一時。




「陽が傾くと、お前の瞳って琥珀みたいになるよな。」




「…そうなの?」




「ああ。元々生粋の金色じゃないだろ?それに夕陽が混じっていい塩梅に琥珀みたい見えるんだ。」




あんまり気にしたことなかったけど……でも、褒められると嬉しい。ふすふすと自慢気に見上げながら二人で帰路を歩む。




裏口から何時ものように入ると、ナオと神父様は先に終えたらしく…ゆっくりと話しているところだったようだ。




「お疲れ様。君達が最後。……今日はどうだった?」




「……火の魔術がものすごく苦手ってことが分かった。」




「ふふ、そっか。レンは怒るの自体あまりないから…もしかしてとは思ってたんだ。他が出来るなら充分凄いよ。」




褒めてくれるナオに突撃して、ぎゅむぎゅむと補給。…使ってるシャンプーは一緒の筈なのに、ナオからは華やかな匂いがするから不思議だ。…着てる服に香とかでもつけてるのかな?




「ヴォルカーノ神父、明日レンと町に行ってくる。こいつの修行用の服を買うついでにギルドに顔出しにな。…経過報告もギルマスにしとく。」




「そうか。…なら明日に幾らか渡すから買い物も頼む。メイド達に持ってこさせるのも気が引けるからな。」




「了解。」





ぐーっと体を伸ばしたアヴィリオの体からぱきぱきと音が聞こえた。…まぁ、硬い地面で寝てたらそうなるよね。


殆ど、アヴィリオは訓練中寝てる。…正確には寝たフリをしながら此方の様子を見てアドバイスをくれたり、休憩を促してくれる。

起きている時は本を読んだり、上級の魔術を見せてくれたりと……口では色々言いながらもやっぱりツンデレなんだなぁっていつも思ってる。




アドバイスを貰ったり、木を倒せる様になって次の指示を仰ぐとき、お師様と呼ぶと…擽ったそうな、嬉しそうな顔をするので定期的に呼んでいる。





「あら、町に行くの?アタシも行こうかしら。そろそろ美容液が無くなるのよねぇ。」




「美容液なんて使ってるのかお前……」




「何時だって美しくあるためなら努力が必要なのよ!」




ドン引き、と顔に出したアヴィリオにリムネルが噛み付く。…まだ失言してないからその程度で済んでるけど、どうせヒートアップしてゴリラとか余計なことを言うんだから巻き込まれないように離れよう。



手洗いうがいをして、タオルで拭いて……もうお風呂入ってしまおうかな。砂埃で汚れてるかもしれないし。




「ん……お疲れ様。フロウ。今日も沢山魔力使ったんだね。」




「きゅぃ。」




自分の従魔だからか、なんとなく、沢山魔力を消費したのか、有り余ってるのか…感覚で分かる。

静かに寄ってきたフロウにおかえりの頬擦りをして、自分の魔力を放出して渡す。


食事も一緒にしてるから、満腹になるほど上げなくていいと言われるけど…どのくらいで満腹なのかはイマイチ掴めない。

でも最近はフロウが自らストップの声掛けをしてくれるので、うちの子賢い。そして可愛い。




「レン、明日に町に出るなら……あんまり、アヴィリオの傍から離れないで。離れても、絶対フロウは傍に付けてて。」



「ん……なにかあったの?」




「……明確には、情報が上がってきてないから言えない。…でも、僕も明日城へ少し戻るから…用心だけ、ね?…僕は君が傷付いたら悲しい。」



「分かった。…君が悲しむことはしないから大丈夫ぅ。」




魔力を渡し終えてから、もう一度ナオにぎゅー。強めに抱き締めて、頭を撫でて上げる。

心配性なのは前世からだけど、愛されてるって証拠だ。幸せ。



皆でゆっくりご飯を食べて、ナオは神父様とアヴィリオに話があるからって残ったので、リムネルと階段を上がる。美容の事とか、従魔についてとか、アヴィリオもすごいけど、リムネルの拘りも凄かった……髪の毛一本から爪先に至るまで、手入れを怠らないのは簡単そうに見えて物凄く時間がいるし大変だ。実行できる時点で凄いのに……何十年も継続してるのだから余計に凄い。


そしていい子なので年齢は聞かなかった。絶対蟀谷ぐりぐりされるもん。見てて痛そうだから絶対いや。




「明日は迷子にならないようにねぇ?殿下から怒られちゃうから。アヴィリオが。」




「リムネルもナオも心配性だなぁ。もう五歳だよ?迷子になんてならない。…おやすみなさぁい。」




「貴女変にうっかりしてるから心配なのよ……おやすみなさい。ゆっくり休んでね。」





























迷子になるわけない。そう思ってた時期が私にもありましたよ……




「……アヴィリオが迷子だ…」




「きゅ。」




首を左右に振るフロウ。きゅ、と両頬を柔く摘まんでおいた。私は迷子じゃない。精神年齢とっくに成人越してるんだもん。迷子じゃない。アヴィリオが迷子。いいね?




とりあえず、行動を振り返ってみよう…今日は保護者同伴ってことで、門兵さんに何か言われることもなく、でも一応許可証は貰って町へ入った。


それで、休日だからか、人が多くて…はぐれないようにアヴィリオと手を繋いだ。フロウもアヴィリオが抱えてくれてたんだけど……人が多い、すなわち人の波が強い。


誰かにぶつかって、一瞬手が離れた隙にどんどん押されて離れていく。勿論めいっぱい声を出してアヴィリオに主張したけど……悲しきかな、チビなもので見付けて貰えなかった…フロウは咄嗟にアヴィリオの腕から抜け出して、ナオの言い付け通り傍に付いてくれた。踏まれないように抱き上げて、頑張って人の波から抜け出したのを褒めて欲しい……体力ないんだぞ幼児は。




「困ったねぇ……連絡手段あれば良かったんだけどねぇ……」




紺色のスカートの裾を払って、とりあえず身嗜みを直す。


ここは来たことない場所だ。帰巣本能か、なんとなーく教会の場所は分かるけど……とりあえずギルドに向かおう。ギルドマスターかアンさんなら何とかしてくれる筈。




一人で歩いて居ると、視線が嫌というほど突き刺さる。……まだ人込みもあって、危険じゃないはずだけど……脇に逸れた先は、見ただけでも雰囲気が違う。入ってはいけない場所。




人通りの多い方向が、町の中心なはずだ。ギルドが近くなったら、冒険者の一人や二人居る筈だ。逆に居なかったらもう怒る。




「お嬢ちゃん。さっき向こうで君を探してる人が居たよ?おじさんが案内して上げるからおいで。」




典型的な不審者とエンカウント。目の前を塞いでる。……ご婦人方、子供が絡まれてるのに無視ですか……買い物に忙しい?あ、そうですか……




こういう手合いは無視に限る。ちょこまかと人の隙間を縫うように走って逃げる。なんか言って追い掛けて来てるのが見えたけど……アヴィリオでさえ見付けられなかったんだ、不審者に捕まる訳がない。五歳児舐めんな。




「きゅ、きゅぃ!」




「フロウ。どうかした?」




突然警戒し出したフロウを足を止めて抱え……何事かと辺りを見回す。

フロウが威嚇するって事は私にとって良くないことがある証拠。喧騒の中に威嚇する声が混じった所で誰も足を止めやしない。……たまに心配そうな視線をくれる人も居るけどね。



スン、と鼻を鳴らして一方向を睨み出したフロウに習って同じ方向を見て………後悔した。




私が此方に生を受けて、初めて憎悪を抱いた人物。……元老院の豚がそこに居た。




此方に気付いてないのか、上機嫌に店主と話している。…見ていないうちに此方も離れてしまおう。フロウはあのとき現場に居たから……匂いを覚えてたのか。いい子だ。




とりあえず歩かなきゃと、足を動かしたのに…人の波が邪魔で進めない。こういうところで運がないなぁ…!!




それでも何とか、開けた所に出られた……後ろを向いてもさっき豚が居た所からじゃ此方を見ることは出来ないだろう。




「おい、そこのお前。お前レンって名前だろ。」



名を呼ばれたから何事かと振り向いた。


………誰だこいつ…???



ナオと同い年か少し上か……なんか嫌な雰囲気の少年が従者を引き連れて此方にやって来る。

アヴィリオがギルドの誰かに捜索を依頼したのかもしれないから、とりあえず頷こう。




「孤児の黒猫族で珍しい瞳って父様が言ってたからな、すぐ分かったぜ。」



あ、こいつあの豚の息子だ。



ムカツク言い方と人を見下す眼に直感的に理解した。……どうしたものか。



お付きの執事さんも顔色悪くしてないで止めてよ……まぁ、立場ってものがあるんだろうから、その点は仕方ない。物分かりが良いことで評判のレンちゃんだから咎めないよ。ビンタはするかもだけど。




「……何か、ご用ですか?」




「ああ、お前俺のメイドな。汚い教会の神父には適当に金払ってやるから着いてこい。それも特別に連れてきていいぞ。」




血管がぶちギレそうなのを深呼吸して我慢。はい、いーち。にー……フロウも、駄目だよ下がって。


威嚇し、今にも飛び出しそうなフロウを眼で止め、子豚に向き直る。……お父様によく似たぼんくらなようで。




「……お断りします。私の身は私の物。買われる筋合いなどございませぬが?」




「ちっ。父様が連れてこないから俺が出て来てやったのに……金が払われないか心配なんだろ?がめつい孤児め!ほら、これで足りるだろ?」




ガシャン!と大きな音を立てて、袋に入った金貨がばらまかれていく。


流石に周囲の人も足を止め、野次馬が集う。




「父様が神父に払った額の倍だ。それで充分だろう?…俺が優しく言ってるうちに着いてこいよ。痛い目見るのはお前だぞ。…ま、神父も痛い目見るだろうけどな。」




ヒソヒソと周囲に囁かれるのを気にすることもなく、脅してくる子豚。………こいつ、馬鹿なのかもしれない。


この国で人身売買が許されるはずないのに、勝手にお父様の罪を暴露してくれた。………仕返しするチャンスでは?





「……元老院の方が、教会にいらして……暴力を受けた挙げ句、神父様に金を払うから私を寄越せと言ってきたのは、貴方のお父上ですか?」




「そうだと言っている。馬鹿なのか?」




あぁ、可哀想でお馬鹿。周囲のどよめきにも気付かず、後ろの執事が顔を真っ青にしてるのにも気付かず……自分が偉いと思ってるなんて哀れで面白い。


こうも自分の手で陥れるチャンスが巡ってくるなんて。なんて幸運な日なんだろう。




「___何度も申し上げますが、お断りします。」




「お前……!!!庶民の分際で!僕に!逆らうのか!!!!」





親子の血筋か、すぐに手が出るようで……頬を殴られた。歯に当たって唇が切れる。

執事が止めても、それすら振りほどくなんて本当お馬鹿。



よろめいたけど、倒れる訳には行かず。片足を数回鳴らしてフロウを抑える。…ここで飛び掛かっては駄目だ。陥れるなら、もっと、彼方に非を。


怒ってなどやるものか。そんな労力掛けてやる価値もない。




「貴方のお父上の様に、殴られ…蹴られようとも、私の身は私だけのもの。どうぞお引き取りを。」




「黙れ!!!口答えするな!……お前は俺のメイドになるんだ!とっとと着いてこい!」




ガッと髪を掴まれ……襲うのを止めてたフロウを足蹴にした時、流石に頭に来た。さっきの神父様への発言といい……この餓鬼……



掴んでいた手首に、思いっきり爪を立てた。




「い”っ…!!!」




「貴方こそ……私が優しく言ってるうちに、引けば良かったものを…」




歯を食い縛って、勢いよく、頭突きをかます。……こっちも頭ぐわんぐわんしたけど、痛みより感情が勝った。

尻餅ついて頭を抑えてる子豚を見下ろして、ただ淡々と言葉を紡ぐ。こんな奴に感情の一欠片でも向けるなんてバカらしい。



「お、お前!!!僕を誰だと思って…!!!」




「だから?お父上の身分以外に持っているものってある?……この国がどんな国かも知らないで、イキるのは勝手だけどね。執事さんも捲き込まれて可哀想。」




「この……!!!」




もう一度、勢いよく頬を殴られた。…鼻血も出た。物凄く痛い。どのくらい痛いかっていうと勝手に涙が浮かぶくらい。



そのまま倒れた所を追撃されそうになったところで……近くに居たお姉様方が支えてくれた。




「衛兵!!衛兵は居ないの!!!」




「誰かこの反逆者を捕らえて!」




方々で非難の声が上がれば……漸く気付いたのか、顔色を変えて周囲を見回し出した。


あぁ、お馬鹿だね。貴族なのに自らボロを出しに来るなんて。




「なんの騒ぎだ……っ!!!貴様!リーシュに触れるな!!!庶民の分際で元老院の私の息子に何をしている!!!」




豚もタイミングよく出てきてくれたなぁ……馬鹿な親子。それも血筋なのかな。



衛兵に押さえつけられてる息子を助けようとして、周囲の男性陣を無理矢理突破しようとしてるけど……無理だろうね。私腹を肥やした豚と、精一杯生きてる彼らじゃ、そもそも同じ土俵に立つことすら出来ない。




息子と同じように腕を取られて、膝を着かせられる。ぎゃあぎゃあとうるさいのが増えたなぁ……ああ、そうだ。これでお家陥没なのはいいけど、やり忘れてた事があった。




「お前…!!この餓鬼が!!!お前が原因か!!」



「いいえ、最初に絡んできたのは向こうですし……発端は貴方ではないですか。耄碌するには早いですよ。


…二週間たった今でも、貴方から受けた傷、残ってるんです。」




お腹の部分を捲って、周囲に傷を見せ付ける。哀れみの視線と、豚に対するキツイ視線が増した。…年季が入った貴族だから、早々に視線に気付いて弁明を取ろうとする。




「ち、ちが…!!この小娘は嘘をついている!!!金が目的な汚い餓鬼だ!!」




「さっき貴方のご子息が自ら暴露してましたよ。みっともないので口を閉ざすことをおすすめします。」




こんな餓鬼に煽られるなんてどんな気分だろう。今まで築いてきた地位が自分の息子に奪われるなんてどんな心地だろう。


一言で言うならば、ざまぁみろ。それに尽きる。





「む、息子が勝手に言い出しただけだ!!私は関係ない!!」




「父様っ?!」




自分の息子さえ売るか……最早何を言っても民衆は動かないと云うのに。自分で自分の首を絞めるなんて愚かだ。逆らってこないとでも思ってたのかな。




「こんな小娘の妄言に付き合わされるな!!とっとと離せ!!…そ、そうだ!小娘を捉えたら金貨をやる!!」




「____聞くに耐えぬ。何をしているのだ。」





響いた第三者の声に、パッと振り向いてみると……馬に跨がった国王様とナオが、豚を見下ろしていた。



一斉に膝を着く周囲に習って、同様に膝を着ける。…フロウも大人しくしててくれた。本当に賢くていい子だ。帰りにいいお肉買おうね。





「こ、国王陛下…!!!お聞きください!!この小娘が私を嵌めようと…!!!!」




「誰が発言を許した。王の御前であるぞ。」



キンッと金属が擦れ合う音。……豚の首にレーヴェディアの剣が添えられている。


…レーヴェディアが仕事をしてるときってあんな感じなんだ……初めて会ったときがあんなだったら、仲良くなるのに時間掛かっただろうな。…鋭い空気が、それだけ威圧を含んでいた。




「そう申して居るが……そこの娘。本当か?」




お仕事モードの国王様に見詰められ、ゆっくり膝を上げる。

びりびりと威圧する空気に、呼吸が詰まりそうだった。…此方も初対面がこれだったら、近寄る事はなかった。だって怖いもん。


そして…ナオが黙って見てるのが一番怖い。頬に視線が集中してる。





「いいえ。全くの偽りです。……ですが、私よりも周囲の皆様の方が説明がお上手でしょうし………どなたかにお願いしても、宜しいでしょうか。」




「構わん。…我の民らよ、真実だけを述べよ。」




「こ、国王陛下!僭越ながら私めが説明しても宜しいでしょうか。」




「構わん。申せ。」




「はい、実は……」




正義感が強そうな若者が出てきて、それに同調するように周りも口々に豚の事を囁き出す。


怯えてると勘違いしたのか、さっき支えてくれてたお姉様方が両脇を固めて守ってくれる。…時折、大丈夫、とか、心配しないで、とか囁いて励ましてくれる…そんな優しい人達。あとハンカチもくれた。……真っ赤にしてしまって申し訳ないなぁ。

でも、もう少し早めに助けてくれるとナオのお叱りを受けなくて済みそうだったんだけど……お姉様方に非はないのでよし。間に入るの怖かっただろうし、身分ってものがあるから。



これだけ騒ぎになって、もう結末が出てると云うのに……それでも自己弁護が止まらない豚に、とうとう国王様から溜め息が洩れた。




「もうよい。…衛兵!!この者らを牢に入れておけ!!親子共々だ!!」




「お、お待ちを…!!!」




大きい声を出すと余計迫力でるなぁ。目力に此方まで萎縮してしまいそうだ。……っと、鼻血止まったかな…?



見事に血に染まったハンカチをどうしたものかと悩んでいれば、目の前に影が出来て驚いた。

周囲の女性陣から桃色の吐息が溢れ……ガシャ、と鎧の音を立ててレーヴェディアが膝を着いた。




「陛下より、城にて治療を。」




「……分かり、ました…」





怒られるの確定コースじゃないですかやだ……また怯えてると勘違いしたのか、励ましてくれる周囲の方々に申し訳無く思いながら、レーヴェディアの手を取った。



レーヴェディアが乗ってる馬に跨がり、フロウを抱える。後ろから支えてくれるとはいえ結構大きな馬だからか不安定だ。…鬣抜いちゃったら本当ごめんね。わざとじゃないの。




前世では馬に乗ってみたかったけど……こんな注目を浴びるなかで乗りたくは無かったなぁ……




今日は空が蒼くて、買い物日和だったのに。







よくありがちな屑貴族退場

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