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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
一章 美少女は望まない
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第三十一話 少女と過保護達

執筆が遅くなるのは冬眠の時期だから




結論、コントロールは中々直らなかった。




「悔しい。アヴィリオに負けた感じがする。」




「初心者が魔術を一日で撃てるようになるのは凄いことなんだよ。流石だね。いい子。」




陽が暮れ出したら今日の訓練は終了の合図。


夜は魔物が活発になるからね。無駄な危険は要らない。…教会でナオとレーヴェディアと落ち合い、料理を作る神父様の後ろでジャガイモを剥く。


今日はリムネルが釣ってきたという魚たちが沢山テーブルに並ぶらしい。…なんか主っぽいのも居たからそれはリリースしてきた、地域信仰とかに関わるのか分からないけど、なんか食べたら駄目なタイプだろうと確信した。



まだ少し身長が若干、本当に若干足りないので台に乗って皮剥きで落としていく…こういうことは前世でもやってたので得意だ。実際料理するとポンコツになるんだけど。




「はぁ……お揃いエプロン…新婚夫婦感がまたいい……」




視界の端の変た……レーヴェディアを見なかったことにし、剥き終わったジャガイモをナオへ渡す。

レーヴェディアは洗い物係なのでキッチンに居られると邪魔だからリムネル達の相手をしてて欲しい。なんか騒いでるの聞こえる。




「レーベ。邪魔。」




「そんないい笑顔で言われましても……いいじゃないですか、減るもんじゃないし。あと絶対二人きりにするなって陛下からも言われてるんで。ジジイは料理中だから目をずっと向けられてる訳じゃないんで俺がお目付け役ってこと。」




横から顔を出してきたレーヴェディアにナオが溜め息を溢した。でも器用に食材を切ってるので流石だと思う。…神父様も此方をたまに伺いつつも、魚の骨を抜いたり下拵えをしてくれてる。



ナオがエプロンを持ってきたときはびっくりした。同じ紺色のシンプルなエプロン……というか、此方でも料理を度々してたっていうのにもびっくり。王族ってキッチンに立っても大丈夫なの…?




「きゅ。」




「あ……ごめんね、フロウ。ありがとう。」




ぼんやり考え事をしていたせいか、足元のフロウにてしてしと優しく叩かれた。その頭の上の籠には追加のジャガイモなどが入ってる。…フロウも器用だなぁ。というかジャガイモ重くなかった?大丈夫?…ファンタジーな世界だから重量とかわりと無視?大丈夫ならいいんだ。


この丸々と実ったジャガイモは裏庭の畑から取れたものだったりする……虫が居るから近寄りたくないけど、収穫は手伝ったので褒めてほしい。




「レン。」



「ん。……んむ。おいひい。ほろほろする。」



フォークを手にやって来た神父様に名を呼ばれれば、そのまま顔を向けてがぶり。

フォークの先端についた揚げ物…白身フライのような料理は中にチーズが入っていて、ちょっと熱いけど、口のなかでとろぉ、って蕩けて……ほろほろと崩れていく魚と絡んで美味しい。


フロウも欲しい、欲しいとアピールしてきたが、これは味見役の特権なので譲れない。




「火傷はしてないか?」



「大丈夫。……チーズ、とろぉってして美味しい。おかわり沢山しそう。」



「それは良いことだ。……お前さんが美味しそうに食べてると作った甲斐があったと嬉しいからな。引き続き手伝い頼むぞ。…殿下も、どうぞ楽しみにしててくだされ。城のコックには劣るやもしれませんがな。」




「レンと一緒に食べれるだけで価値は倍以上だからいいんだ。…それにさっきから美味しい匂いがして、ちょっとお腹が…」



くぅ、と小さく鳴ったのはナオのお腹。

つんつくと悪戯に突いたら、珍しく恥ずかしそうに手を掴まれた。…あんまりナオがお腹鳴らす、なんてこと無かったし…それくらい、神父様の料理の匂いがいいってことだね。なんか嬉しい。





「おい、まだか?」




「あら、味見?美味しそうね。」




また別のフライには刻んだ大葉が入ってるらしく、此方もさっぱりして美味しい。

顔を出した二人にレーヴェディアが顔を顰めたが、リムネルに捕まってた。…仲良くしようね。


……なんだか、大家族になったみたいで嬉しいなぁ。…前世は母と兄、それから姉。他の血縁とは縁を切っていたから親戚とかの集まりを体験したことがない。…こんな賑やかなのかなぁ。皆身内だからもっと賑やかなのかなぁ。




「なんかいいね。こういうの。」




「家族みたい?」




「うん。ナオが居て、神父様が居て……勿論フロウも居て…なんだかぽかぽかする。幸せ。」




「……君が誰からも虐げられず、穏やかに過ごせるなら僕はそれでいい。」




「ナオが隣に居てくれなきゃやだ。」




尻尾を絡めて、ただ穏やかな時間に甘える。喧しく、それから狭くなったキッチンも、なんだかそれだけで愛しくて……幸せだなぁって、実感する。


最後のジャガイモを剥き終えれば、夕食の時間。手を洗って、食器を運んで……リムネルに間接技を掛けられてるレーヴェディアを仕方無いから救出して、皆で神父様の料理を運ぶ。


これが続くのだと思うと、ずっと頬が緩んでしまった。













「あー!!!なんで一緒にお祈りなんてするんですか!!!」




「いやほら、ナオからあんまりノーチェとレイルさんが会ってないって聞いたから…」




「だから!だめなんですぅ!!!」




きゃんきゃんと吠え立て、揺さぶってくるノーチェをとりあえず抱き留め、若干潤んでる彼女をあやす。


ナオから聞いた話だと、夫婦神は引かれ合うものだから、同時にそれぞれの神に祈りを捧げると神託スキルの相乗効果で祈りの空間を同一させられて会えるとかなんとか。



正直、よく分からなかった。ファンタジーのご都合ってくらいの理解にしとく。





「レンから聞いた通りの女神様だね……ちょっとレンに似てるところもある。ね?レイル。」




「俺らは性質の似てる人間にしか加護を与えられないからな。しかも生まれたてと言っても過言ではない神ならば、なおのこと。……ノーチェ。」




ナオじゃない声に振り向くと、背中にノーチェが引っ付いて隠れてしまったのでちょっとよろついた。体格差ってご存知ですかね?



前のめりになった身体を支えてくれた手は、明らかにナオの物より大きくて…視線を上げると、深い蒼が印象的な、中世の貴族の様なイケメンが。

彼がレイルで間違いないのだろうが……ノーチェが女神らしい女神の格好をしていたのもあって、ちょっと呆気に取られた。…神々にだって服の好みがあるんだろうけど。




「大丈夫か?」



「あ、……えっと、はい。」



「ノーチェ。体格差を考えろ。転んだら痛いだろう。」



「はっ……!!ごめんなさい!大丈夫ですか?!転んでないですか?!」



「うん、転んでないから此処に居る。……落ち着け。」



「はぅっ!」




ポンコツさに磨きが掛かってたので額にチョップして無理矢理落ち着けさせる。額を抑えて縮こまってるノーチェの後ろに回り、レイルの方へぐいぐいと背中を押してやる。




「ほら、会いたがってたんだから、レイルさんとお喋りしてきて。」



「それはっ!そうなんですけど!!」




嫌々と駄々を捏ね、首を振り、…押されまいと抱き締められた。胸に顔が埋まって苦しい。ご褒美だけど。


情けなく逃げようとするノーチェを、さっきからレイルはただ微笑ましそうに見てる。追い詰めるでもなく、ただ穏やかに。


うーん、仕方無いなぁ。




「……あのね、ノーチェ。だめだよ、好きな人には言えるうちに好きって伝えなきゃ。」




「レン…!」




「私は、貴女達が選んでくれたからまた会えたけど……そうじゃなかったら言い足りなかった好きって想いを抱えたまま、死んでいた。

神様だから、時間がたっぷりあるんだろうけど……でも、伝えなきゃ。…離れてる間、寂しいの貴女だけじゃないんだもん。」




きゅ、と手を繋いでしっかり目を合わせて伝える。…神様にだってこうしたら気持ちが伝わるのを知ってる。だって彼女は優しい女神様だから。


あと絶対ノーチェに効くのを分かってて、ちょっとだけ悲しげに言うのも忘れない。






「うー、うー……分かり、ました…少し素直に話して来ます…!」




レイルの方へ向き直ったノーチェに見えぬようにレイルにサムズアップ。…返ってきたから中々レイルも面白い神様なのかもしれない。




「そうだ。レイルでいい。…少し話してくるから、待ってろ。」




「うん。いってらっしゃい。……おいで、レン。」




離れていった二人を見送って、ナオの隣に座り込む。神様の力か、どこからともなく大きなクッションが出てきたのでびっくりしたが……そういえばノーチェも紅茶飲んでた時もあったので気にしないことにした。


二人で一緒に座って、足の間で落ち着く。




「レイルが姿を見せるなんて珍しいなぁ…それぐらい、喜んでるんだと思う。…ありがとうね。会わせてあげて。」



「姿を見せないなんてあるんだぁ……ナオの方が神託スキル高いけど、やっぱり何時でも会話出来ても姿は見えないの?」




「僕のレベルだと、レイルは夜の神だから夜の間なら見えるんだけど……本人が出てきたがらないからあんまり。そもそも、庇護持ちと加護持ちの神託スキルってちょっと違うから……常時声が聞こえるのとか内緒だよ。面倒なことになるから。」




「ナオが面倒って言うなら言わないようにしなきゃねぇ…レイルとは仲良し?」



「仲良しというか、根本が似てるからお互い気を使わないというかなんというか……少なくとも、君達みたいにべったりはしてないなぁ。」




ふにふに、むにむにと頬を遊ばれながらまったりと話す。二人きりで話せるのはあまり多くないから嬉しい。

きっと、これから歳を重ねていけば……もっと少なくなるだろう。なんてったって彼は王族なのだから。


つり合うようになるのに、何年掛かるだろうか。




「…このまま二人、ずっとこの空間ならいいのにね。…離れたくないなぁ。」




「…離さないから大丈夫。ほんの少しの我慢で、君とずっと隣に居られる未来を作れるなら、僕はいくらだって我慢できる。……でも、泣きそうな顔をしないで、我慢できなくなる。」




ぎゅう、とお腹に回った手に力が入る。

片方の手で頬を柔く寄せられ……あ……キス、されそうだなぁ。




蒼い瞳は伏せられる事なく、ただ此方を映してて…優しく、いつもより、細くて、…心臓が徐々に音を立ててくる。

好きで、愛しくて、ぼんやりするのに、何処か冷静な自分が居て……唇が近付いてくるのをそんな自分が見ている。




「神の御前で何をしてるんだ。」




「そ、そういうのはまだ早いですっ!身体年齢的に!!」




「……ちっ。」




ぐい、と引き寄せられた衝撃に目を瞑れば鼻先を硬い何かに強かに打ち付けた。……ちょっと痛い。



鼻先を抑えつつ…抱き上げたレイルを見上げる。どうやらレイルの胸板に強打したらしい。大変硬かった。脱いだら凄そう。




「返して。僕のだ。」




「我慢も出来ない餓鬼にはまだ早い。」




「まだ!まだ早いです!!」





顔を真っ赤にしてるノーチェに溜め息を溢しつつ。再び舌打ちを溢したナオを見下ろす。


……舌打ちを向けるなんてやっぱり仲良しなんじゃないか。





二日に一話ぐらいは頑張りたいゴリラ

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