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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
一章 美少女は望まない
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閑話休題 ヴォルカーノの日記4

久し振りの投稿、年末も頑張るぞい




レンを町へ送り出し、適度にレーヴェディアを痛め付けた。顔は外してやったのだから感謝してほしい所だ。



「ぐっ……!本気でやりやがって…!!」



「当たり前だ。寧ろ殿下じゃなかったことを神に感謝するんだな。…こんなモノでは済まなかっただろうよ。」




「………まぁ、殿下なら…下手すると首が飛びかねんからな………流石にレンが止めてくれるとは思うけど。……嫌われたなぁ…」



「ベソベソと鬱陶しいわ。さっさと仕事に戻らんか。」




以前よりも耐久が上がったかと思えば、レンの嫌い発言の方が効いたらしく……雨雲を背負わん雰囲気に犬猫を払うように追い出した。

今日は特に礼拝者の予定はないが……国の方へ提出する書類が確か残ってた筈だ。


どのくらい礼拝者が居るのか、壊れた備品は無いか。そんなことを纏めて提出するのだが、国王陛下……ブランシュナは正直目を通すのが面倒だと言っていた。

国王本人は礼拝者の数に拘らず、一定額を教会に寄付したいそうだが…元老院がそうはさせなかった。民の血税なのだから、私としても寄付される必要はないからそこは構わないが……国王直々に私は神父を任されているというのに、追い出そうとするのは気に食わない。



森に接しては居るが、この土地は結界が貼られているため安全なのだ。しかも近くの森にしかない薬草や果実……数多の恵みがあるこの土地を、金儲けの為に欲する者ばかり。 そんな者らに追い出される筋合いはない。



「そも、本来ならば冒険者が神官……神父へと転職する時点で変な話だと思ったが……全く、人使いの荒い国王を弟子に持ったものだ…」



神父を任された経緯を思い出して一人愚痴る。……武力で制圧されないため、かつ国王として信頼できる者、などと言われてしまえば頷く他ないというのに。



書斎で書類と向き合うことそろそろ半刻という時、机に置いてあった魔導水晶が輝いた。 レンはこれを飾りとしか思ってないようだが……れっきとした魔術道具だ。



水晶に何の情報も入ってない魔石を近付けると、その水晶が登録される。情報が入った魔石を別の水晶に近付けると、魔石に登録された水晶と連絡を取り合えるという仕組みだ。主に冒険者や各ギルドはよく使うんだが……レンにはまだ早いから、もう暫くは内緒にしておこう。




『ヴォルカーノ、聞こえるか?』




「ああ、問題なく。」



水晶に魔力を通すと通信が取れる。魔力量を多くすると…水晶の光に相手側が映る。本当に対面して話してる様な状況になるのが何とも不思議だが……この世界は不思議だらけだ。明かされたことよりも明かされていない事の方が多く、神秘だと諦める者も居れば、必ず解き明かすと躍起になっている者まで。

私はどちらかと言えば前者寄りだ。明かさずとも良いことがあるのをこの老い耄れは知っている。



『依頼のこと何だが……うちのギルドは武闘派ばっかだし、居てもお嬢ちゃんを見下すような奴ばっかになる。だからちょっと他のツテを当たるんだが…俺は今ギルドを離れて人材を探しに行けねぇから、アンに頼む。問題ないな?』




「構わん。彼奴の人を見る目は確かだからな。」




『違ェねぇ。…前任の奴もいい奴ではあったが……人を疑うってことをしなかったからなぁ……アンに代わってからは依頼主と冒険者のいざこざも、報酬未払いも、報告ミスも格段に減った。

何より最初から報酬払う気無くて依頼出すやつが絶えなかったのを、アンが纏めて依頼拒否にしたときは笑ったぜ。思いきりの良さも度胸も、獣人から見ても誉れ高い。うちのいい看板受付だ。』




「そう思うなら少しは書類仕事を真面目にやってやらんか…」




『それはそれ。これはこれ。……あぁ、それと、お嬢ちゃんなんだがアン曰く物凄く悪かったから少し休ませるぞ。…此方に来る途中にノエルとも会ったらしいし……高音で聴覚やられたんだろ。』




「すまんな。…昨日初めて魔術を、それも従魔術を使ったんだが…その際に殆ど空になるくらい放出したからな。まだ万全じゃないんだろう。…レンの近くにアースフォクスの仔が居るだろう。それがあの子の従魔だ。…といっても、アースフォクスの方がレンを家族と刷り込んだからレベルはまだ1なんだがな。」




『ほぉ……またそりゃ珍しい。…アースフォクスっつーと……初めて飯をくれたやつを家族と刷り込むんだっけか。…となると、近くに親が居た産まれたの子か……あるいは捨て子か?』




流石ギルド長というべきか、名前を出しただけで瞬時に情報が出てくるのは素晴らしい。 …普段全くその気を見せないが、こやつも中々やるときはしっかりやる男だ。

……普段しっかりしないせいでアンには膨大な仕事が回ってくるんだが………いつかゆっくり休ませて貰えるよう掛け合っておくか。様子を見ているとレンも懐くだろうしうちに招くのも悪くない。




「捨て子だ。彼処まで無邪気な魔物は滅多に居ない……早々に他の魔物の餌になると判断したんだろう。」




『成る程な……分かった。他の奴等には伝えておこう。様子を見てアンが選んだ人材と一緒に馬車で帰すから、お嬢ちゃんのことは安心してくれ。ギルドが責任を持って預かろう。』




「頼むぞ。」




『おうよ。優秀な若い芽を育てていくのが俺達の仕事だからな。』




人懐っこい笑顔を見せるディグラート。…ディグラートの目には信頼してるので、彼に優秀と言われるという事はうちの子は相当に優秀らしい。

誉れ高い気分がぽつりぽつりと湧くのを実感しつつ、通信を一度切った。



やはりギルドに連れていって正解だった。あの子は何れ此処を巣立つだろう……その手助けが出来るなら、今まで築き上げてきたコネを全て使ってでも、あの子が幸せに過ごせる未来を作ってやりたい。

……子を持つ親というのは、皆こんな心地なのか。自分の子が褒められるとこんなに嬉しいものなのか。




……叶うなら、亡き友人夫婦に許されるのならば、……父と呼ばれたいものだ。




そんなことを思って、書類仕事を再開した。レンが帰ってくる前に仕上げて、あの子の好きなデザートを今日は用意しよう。

夕食は多めに作って、レンの修行相手とも話をしようか……ならばビーフシチューなんて良いかもしれないな。


私はワインを入れて煮込むのが好きだが……あの子はどうもワインは苦手なようで、ほんの数量でも入ってると顔を顰める。酒は勿論飲ませてないが……料理にこっそり使っても一口でバレるのだから、将来は共に飲めなさそうだと落胆した。……渋々でもちゃんと食べきるから本当にいい子ではあるんだが……慣れて欲しいものだ、そうすれば酒を一緒に楽しめる。



一人だった頃はよく溜め込んでいた書類もするすると進む。……あの子と過ごすようになって変わったことの一つだ。


溜め込み過ぎは良くないと笑って言われ、今も期日が近いものが手元に来やすいように整理されている……時折レンが整えてくれているからだ。

だが、あの子は自分が何か作業するときは周りを散らす癖があり……勉強している時ですら、辞書や鉛筆、紙類が散乱している。



何故かと聞くと、




「物が届く範囲にあると落ち着くし楽……あと、自分のテリトリーって見て皆分かるから近寄らないのがいい。集中できる。」




と言っていた。…確かに近付けば紙に触れたり鉛筆にぶつかったりと音がするから…防衛線のように自分だけの空間を作っているのかもしれない。



それが理由半分、あとは本人がわりと面倒くさがりだからだろう。……部屋を荒らしてるのを私は知ってるぞ。片付けろと言うほどではないから見逃しているが。




そんなことを考えながらも、勝手に緩む頬に気付いて顔を覆った。……何時からこうも表情筋が緩くなったのか。

いや、思い出すまでもないな。

ゆっくりとレンが帰ってくるのを待っていよう。





そんな穏やかで静かな午後を過ごしていた筈だった。








「おや……件の娘は居ないのか?」



「……えぇ、所用で出ておりますので。」



「まぁ、構わん。時間は余っておるしなぁ……相変わらず飾り気のない教会だな…まだ土地を売る気にならんのか?」



「神に祈る場に、必要以上の飾り気は入らないでしょう……売る気も共に。」




豚のように肥えた男が下卑た笑みを浮かべながら茶を啜る。




この男のせいで、レンが傷付くまで後数刻_____





次は本編

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