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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
一章 美少女は望まない
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閑話休題 ヴォルカーノの日記2

閑話休題もそれなりに書いててたのしい。




レンにはどうやらこの齢にして意中の人が居るらしい。


その人物は…この国の第二王子、ナオ・ベスティード殿下。しかも相手もレンに夢中だという。



貴族令嬢でも、殿下を中々お目に掛かることなど無いのに、あの子達は何故かお互いを知っていた。……突然やって来たときは何事かと思ったが…ただ、あのレンが、初めて会った筈の殿下に微笑んだとき……心を許してるのを確信し、深く追求するのは止めた。



あの子が私以外に笑い掛けることはあまりない。…愛想笑いはよくするが。




だから、このモヤモヤとした気分は……娘を取られた父親の気分とでも言うべきか。




「しかし……殿下も殿下だけど、レンも中々に賢い子だな。」



「なんだ急に。」




書斎から庭先で戯れる子供らを眺めていれば、横で本を物色していたレーヴェティアが呟いた。この馬鹿弟子は殿下の護衛として今日は来てるらしい。


窓枠に頬杖をついて眺めたまま、視線だけを此方に寄越す。




「先日、表に人が溜まっててな。あの子が裏道からのルートを教えてくれたんだ。」




「あぁ……あの子はここら周囲をよく散策してるからな。」




「それだけなら分かる。殿下が教会に来てるのなんて大事になるからな。……だけどあの子…見られてる可能性は0じゃないからって、迷子のフリをしたんだぞ?しかも泣いて。……殿下もすぐ理解して話を合わせてたし……」




この間やたら目元が赤かったのはそういうことか。……泣き真似をすることなぞ無かったが……そもそも滅多に泣かぬ子だしな……虫が出たときは逃げ回るが。




「五歳だっけか。……言葉遣いも、アンタの教育って訳でもないだろ?ちょっと賢すぎやしないか?」



「戯け。知恵があるのに越したことはない。……あの子はあの子なりに、本を読み、文字を学び…一人で学んでいる。…声を掛ければ良いのにお前さんと違って辞書まで引っ張ってきてな。」




「そりゃアンタが入れ込む訳で……ん?」





鼻で笑ってやればげっそりと溜め息を溢された。怠け者と自己を高めようとするものをどちらを気に入るかなぞ、圧倒的後者に決まってる。

……そんなとき、殿下が慌てて此方へ駆け寄ってきた。




「レーベ!レンが…!」



「どうかなさいました?……ありゃ、また何で木の上に。」



「僕のハンカチが飛んじゃって…レーベに取って貰うって言ったのに登っちゃった。……多分降りれないから手を貸して。」



「了解。」




「やれやれ、あの子は…」




だが幼子らしく突発的に何かを行動するところはある。ごく稀にしか起きないが……本人は全くこちらを困らせようと意図してないから怒るに怒れない。

寧ろ此方を困らせないようにとやってる節がある。……結果的にはよくないが、あの子なりの心遣いを無下にはできない。



兎も角、降ろしてやらねばと三人で外へ出ると……枝に座っていたレンが此方を向いた。



次の瞬間。



「レンっ!!」




「?……どうかしました?神父様。」




ふわりと、レンのワンピースの裾が舞った。隠れていた脚が垣間見え……本人は何事もありませんでしたって顔で此方を見てきた。

これだ。どこで恥じらいを置いてきたのか……よくこの子は飛び降りる。階段を飛び降りるのはわりと多く、窓枠を飛び越えて部屋に入ってくるときもある。…私に見られると怒られるのを分かっているからか、バレないようにやってる辺りがずる賢い。


額を抑え、深く息を吐く。




「……レン。幼くとも女性は木から飛び降りたりはせん。」




「でもハンカチ取れましたし……神父様やレーヴェティアの手を借りずとも、このくらいなら大丈夫ですよ?ちゃんと下着も見えぬように抑えて降りました。」




反省どころかキリッとした表情をされてしまった。

中々な高さはあった。……怪我をしたらどうするのかとこの子は考えてるのだろうか。……考えてなさそうだ。とんだお転婆娘を預かったものだ。



再び溜め息を吐けば、きょとりと大きな瞳が瞬いた。…馬鹿弟子は笑っているが、殿下も同じ様に溜め息を溢す。




「……レン、神父様も僕もね、君が心配だったんだ。ハンカチなんてレーヴェティアに取らせればいいし、君が取りに行ってくれてたのは嬉しかった。……でも飛び降りて怪我でもしたら悲しい。君が痛い思いをするのは嫌なんだ。」




「殿下の言う通りだ。……元気なのはいい。子供とはそういうものだからな。…だが危ないのは止してくれ。…老いた心臓には中々応えるからな。」




「……ごめんなさい。」




垂れ下がった耳も尾も、申し訳無さを全面に出して来る。危なくなければ、自由に駆け回るこの子をずっと見ていたいが……もし、大きな怪我をしたらと思うとゾッとする。


突然帰って来れなくなったこの子の両親のように……そんな不安を感じるときがある。



自分を疎かにするような考えが、この子の根底にはあるのかもしれない。




今日はきちんと己を大事にするよう少し説教をしよう。……そう思ったが、縮こまるように立っているレンを見て、今はいいかと頭を撫でた。

ゆっくりと、直していけばいい。……いつの間にか頭の大部分がこの子で埋まってきたのを再確認しつつ、不安そうなレンを撫で続けた。



高いところが好きなのか、枝に乗って降りられなくなってる猫を助けるお仕事がしたかった



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