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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
一章 美少女は望まない
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第二十一.五話 受付の仕事

初の本編別視点。今回はまさかのアン。





「……なんだ。お嬢ちゃんは寝ちまったか。」



「えぇ、わりとすぐに。」




ヴォルカーノ神父の書簡にざっと目を通し、ギルド長に渡してきた。あの小さなお嬢ちゃんは表情こそ真顔だったものの、昨日に比べて大分顔色が悪かった。

元々白かったのが青白くなったといえばいいか。


音に敏感なお嬢ちゃんにとっては、ここの野郎どもの煽りも、アウリルの妹……ノエルの声も俺達より遥かに響く。

ノエルの目許が赤いのを見るに、きっと泣いたんだろう……子供の甲高い声って犬や猫には辛いって聞くしな。

内弁慶のノエルは、何故か外で涙脆くなる。此方には寧ろ言い返すくらいなのに、不思議だ。



「わ、私のせい…?!」



「いや。ノエルは悪くないさ……うちの野郎共がばか騒ぎしてたのもあったし…元々過敏なんだ、この子は。

それにさっきヴォルカーノ神父の書簡にこの子が昨日魔力使い果たしたって書いてあった。それもあっただろう。」



魔力を使い果たしたら絶対安静が常なんだが……そこは子供。すぐある程度は回復したが、少し様子を見て休ませて欲しいと書いてあった。……あの神父ほんとに丸くなったもんだ…


ぼんやりと眺めてれば、お嬢ちゃんの顔の横辺りからもそもそと何かが顔を出した。



…………アースフォクスの子供だ。




「きゅ。」



固まる此方には見向きもせず、暑かった、と言わんばかりに毛布から這い出てはお嬢ちゃんの隣にまた寝そべる。


……おいおい、子供といえどアースフォクスを手懐けるなんて……大物か?




「アン、ちょっと人を……お?なんだお前達集まって。…嬢ちゃん寝ちまったのか。」



「ギルド長っ…!そ、それより!彼女の隣に居るの…!!!」




「ああ。何でも嬢ちゃんの従魔らしい。……アースフォクスを従魔にするには相当レベル居るが、こいつは別だ。

恐らく捨て子。しかもそこに嬢ちゃんが初めて餌をやったことで…家族と刷り込みされたらしい。

従魔術は支配と信頼の両極端に分かれるからな……そりゃ家族となったら信頼するだろうよ。」




ふすふすとまだ幼いアースフォクスは眠るお嬢ちゃんが不思議なのか鼻先で頬をつつく。……それを見てる可愛いもの大好き姉妹の鼻息が荒くて正直離れたい。暑苦しい。




「……お嬢ちゃんが起きたら引くぞ。」



「はっ……!それはいけない。まだ会ったばかりなんだ。…あぁ、だが、やっぱり可愛いなぁ…!!」



「狡いです姉様!何故こんな可愛らしいお方を知ってるのに黙ってらしたんですか!!」




近すぎると仔狐が威嚇してくるので、二人して少し距離を置いて眺めている。中々にへんた……じゃなくて、不審者だが……性格云々は抜きにして、ノエルは可愛いと思う。正しく美少女の部類だろう。

お嬢ちゃんも可愛い顔をしているが……どっちが、と聞かれたら殆どの人がノエルというくらいには美少女だ。性格を知ってるので俺は思わないが。


アウリルも髪が長かった頃は美少女、美女とモテ囃されてたが……まぁいいや、髪を切った経緯を思い出すと頭が痛くなるし。



「贔屓目に見なくとも、ノエルの方が顔は、可愛いと思うんだが……」



「身内は身内、可愛いものは可愛いもの。」



「あっそ。」




キリッとキメ顔をされても困る。ノエルもそういえば訓練所に通うとか何とか言ってたし……仲良くなるのは悪いことじゃない。俺に面倒が降り掛からないならよし。


……面倒事で思い出した。




「そういえばギルド長、なんか俺に頼もうとしてませんでした?」




「そういえばそうだった。……アン、お前さんがこの子を任せられると思う、口が固くて信頼できる魔術師を連れてきてくれ。嬢ちゃんが訓練所に行く前にある程度特訓させるらしい。」



「へぇ……過保護そうなヴォルカーノ神父なのに、ちゃんと考えてるのか。」



「いや、嬢ちゃんの提案だ……八割がた嬢ちゃんに何かあったら……俺がヤバイって内容の書簡だったぞ。重要なところだけしか見てないだろ、お前。」



「初めの方にしか目を通してないし。……変わったな、あの人。」




俺が知ってるヴォルカーノ神父は、寡黙で、子供嫌いは有名だった。静かさを好み、冒険者としての反動か、変わらぬ日常を愛していた根は優しい人。

ただし、その甘さも優しさも、向ける身内が居なかったらしく……あくまで後半はギルド長や昔からヴォルカーノ神父を知る人から聞いたに過ぎない。


何度か会ったことはあるが、優しい目なんてしたことない。老いても変わらぬ鋭い眼光に、ちょっかい掛けた馬鹿が何人腰を抜かしたことか。



「とりあえず、分かった。お嬢ちゃんが目を覚ます前に呼んでみる。……俺が知ってる奴なんて、頑固な変わり者しか居ないけど、大丈夫なのか?」



「構わん構わん。ヴォルカーノが依頼として出してくるなんて珍しいしな。……それほどこの嬢ちゃんが大切なんだろ。」




だから余計に駄目では?と思ったが…面倒だから口にするのは止めた。

帰ってくる頃には目を覚ましてるといいが……とりあえず鼻息荒い変態二人も連れ出しておこう。





可愛いものにはぁはぁしたくなる気持ちは分かる、イエス、ロリータ。ノータッチ。

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