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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
一章 美少女は望まない
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第十六話 少女と狐モドキ

帰ってきました、教会に。




馬車を往復して食糧を買う頃には陽が傾き出していて……教会に戻る頃には夜の帳と静寂が辺りを包んでいた。

森に僅かに入っている教会は、本当にごく稀に魔物が周りを彷徨くことがある。……といっても、何やら教会近くには結界が張られているらしくて、彷徨く魔物は人間に敵意を持ってないものだ。……いやまぁ、攻撃したら流石に別だけど。



中に荷物を運んでいるとき、何やら興味深そうに見ていた狐の様な魔物。ぬいぐるみサイズのその子はフスフスと鼻を鳴らして此方を見ていた……名前はたしか、アースフォクスかなんとか。



「どうした。レン。」



「ん……なんかね。小さい魔物が見てるなぁって。……アースフォクスだっけ?」



「どれ。……ああ。そうだな。それも殆ど生まれたての。大人になるとそれはそれは大きいぞ?上位の魔物だからな。」



「そうなんだ…迷っちゃったのかな。……夜行性の子だし、きっと大丈夫だよね。」




立ち止まっていては作業が進まない。神父様のオムライスとプリンが掛かってるので運搬を再開する。……それにしても、大きなもふもふはいいなぁ………従魔術も覚えたくなる。


ナオのステータスを以前見せてもらったとき、確かナオはレベル3まで獲得していた。この辺りの森の魔物ならば大抵従えられるらしい……この辺りは弱い子ばかりらしい。現世風に言うならば、スライムなどの序盤の敵、くらいだろうか。



ちなみにこの世界のスライムも、勿論弱いが……分裂も早く、毒持ちや、魔法を使ってくる奴も居て……侮ると大怪我の元になるし、他の魔物と出てきたときが厄介なんだそう。



「これで最後。あとは自分の服だから自分で持ってくよ。」




「うむ。………まだ居るのか?」




「うん。此方に来ようとする素振りも見せるけど……なんかそわそわして落ち着いてない。行ったり来たりしてる。」




「怪我をしてる様子もなさそうだしな…とすると、空腹か何かか?」




「林檎あげてみる?」




「あまりよくはないんだが……まだ赤子だしな。一つくらいよかろう。」




お許しが出たので、アースフォクスへ向けて林檎を放る。…無闇矢鱈に近付いて警戒されても仕方ないし、攻撃されたら……うん、神父様が倒しちゃうだろうから、これがお互いのためだ。



何度か此方と林檎を見比べると……かなり勢いよく食べ出した。やっぱりお腹が空いていたらしい。



「可愛いね。」



「可愛くとも魔物は魔物。攻撃の構えを取ったら倒す。」



「分かってる。…だから近付かなかったの。……神父様が心配して倒してくれたんだとしても、きっともやもやしちゃうもん。…理解と心って連動してくれないの。不思議。」



「仕方あるまいて。それが感情というものだからな。……さぁ、おいでレン。少し遅くなったが夕飯にしよう。」



「うんっ。」





服が入った袋を持って、神父様が開いていてくれた扉を潜る。

ただいま、と声を出せば、まだ少しひんやりした手が頬を擽る……此処が我が家。町外れの小さな教会。



前世よりも生きている心地が堪らなくして……今日も神父様のご飯は美味しい。


とろっとろのたまごに、少しだけケチャップを掛けて、しっかりと味がついたチキンライスと一緒に頬張る。

太りにくいからいっぱい食べれる、なんて思っていたけど……誰かと一緒に食べるご飯は、気持ちがいっぱいになっちゃって少しでも満腹に感じる。


……実際はあまりお腹に入ってないから、成長期特有の消化の早さですぐお腹空く。燃費が悪いことこの上ない。



だから、食事の時は半分はしっかり黙々と食べて、半分を越えたらお喋りしていいと神父様に約束した。……お残しは怒られるので勿論完食することが大前提である。




「どうだった、町の雰囲気は。慣れそうか?」



「賑やかで楽しそうだった。休日はもっと人が居そうだし……もっと煩そう…」



「少し離れた村の者もやって来るだろうし、活気は確かに今日以上だろう。……いずれ音に慣れなくては、冒険者としてやっていけない。…これからはたまに町へ降りてみるといい。危ない人には何かをあげると言われても着いて行ってはいかんぞ。

何なら町を探索するならギルドの誰かを連れていくといい。暇なやつくらいいるだろう。」



「ちゃんと悪い人は見分けられるってば。」




神父様は過保護な節があって……そんな子供じゃないと膨れて見せても、穏やかに笑うばかり。


神父様には身内が居ないらしい。だから本当の娘のように心配してくれるし、怒ってくれる。……精神年齢はとっくに肉体年齢の何倍にもなってるので、怒られることは早々ないが。……ワンピースで木から飛び降りたときくらいだったはず。




でもそんな優しい神父様が好きで……この穏やかな時間も好きだ。



………しかし、気になる事があって上手く集中できない。




「………神父様。」




「気付いておる。……見ておるな、物凄く。」




神父様の横、少し離れたところにある窓に……さっきの魔物が張り付いて、此方をみていた。


それはもう、なんなら食事を始めた頃から見ていたので気になって気になって………というか、なんでまだ居たのか不思議だ。





教会のまわりって魔物がいないのってなんでだろう。

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