第二話 再会と不運
小学高学年に至らなかった。人物紹介もそのうち書けたら書きます……ねこちゃんは大型ねこちゃんが好きです。
ふわふわと、漂うような心地。
かつての私がまだ切る前だった髪を翻し、愛しい彼へと抱き付いていた。
彼が買ってくれたリボンを髪に着けて、女の子らしい、けれど落ち着いたワンピースを着て……幸福を全身から溢れさせていた。
短い髪の女の子が好きと言っていたから、リボンがぎりぎり結べるくらいまで髪をこのあと切ったんだっけ。
優しくて、暖かくて………ああ、もう一度貴方と…
「……………」
不意に目が覚めて夢現のまま体を起こした。
ぐわん、と頭が痛むのは前世から中々抜けなくて…痛む頭を抑えようとした手に、別の手が重なっていることに気付いた。
視線を向ければ、新雪のような長い髪に、伏せられた猫の耳。まぁるい頬をすぴすぴと膨らませながら幸せそうに眠る猫の獣人。
彼こそ、姿は変われど、私が愛した人……葛葉直、張本人である。
なんでこうもあっさり再会してるのかって? 正直こっちもこんなすぐ再開出来るとは思わなかった。
話は私が此方の世界へ来る直前へ戻そう。
願いを告げれば深刻そうな顔をして女神様は一度口を閉ざした。
「…葛葉直を此方へ………ですか。」
「………叶えられませんか?勿論、私がそっちで死んだあとになっても構いませんから。」
叶わないのならば、私は生きる意味がない。例え会えずとも、私は貴方をずっとずっと想っていたのだと知って貰いたいだけなのだから。
女神様には申し訳ないが、叶わないのなら向こうで早々に自害する……じゃなければ、私は悲しみで狂ってしまいそうだ。
その心を読んでか、あるいは私がどういう人物なのか知ってか、慌てて首を振った女神様。
「いえ、無理というわけではなく………その、………そうですね。貴女に始めに言うべきでした………葛葉、直は…
貴女を追って、自害しました。
ああでも、魂は未だ此方で保護された状態でして…けれど、実は彼もまた…貴女と同じように私とは別の神に選ばれ、彼方側への転生を承諾したんです。」
「………まじか。」
これには口をあんぐり。自害するのは正直予想できていた、だって私と感性が似てるからね。次とる行動はある程度お互い理解しあってるつもりだ。まぁ、自害しない可能性もあったけど。…生きててほしいなぁって、思ったりしたし。
「まじです。大まじです。……彼は彼で別の神に見初められ、加護を与えられ、すでに彼方へ付いてる頃でしょう。……貴女の方が遅くなってしまったのは諸々の手続きに私が慣れてなく………ともかく!彼は彼で彼方へ転生しています、時の流れが此方とは異なるものの…変わって数年差…ですかね。」
小声でとんでもないことを言っていた気がするが………そんなこと、どうだっていい。
ぎゅ、う、と心臓の辺りが掴まれ、末端にまで血液が巡り、沸騰する。
生きてる、また生きれる。愛しい貴方と共に。……今度はもっと、もっと長く共に居なきゃ。
涙腺がぐずつきそうなのを懸命に抑え、細く息を吐き出した。彼が彼方側に居るならば願うことは今度はこれだけだ。
「なら、彼の傍で。彼の近くで産まれさせて。」
「喜んで。……これ以上引き止めますと…きっと時間に差が開いてしまいますし……これより転生を行います。諸々の説明はまた向こうで。」
ぼんやりと光だした体。女神様の言葉に頷けば嬉しそうに微笑まれた。……なんだか人間味のある女神様だなぁ……いや、異世界の神様ってこんな感じなのかもしれない。
透けて、ふわりと内臓さえ浮かぶ心地。
さようなら、今まで生きてきた世界。思い出だけを抱き締めて、導かれるまま旅立つと致します。
なんて事を経て、私は此方側……具体的に言うと数ある国の中、《メーヌリ大陸》の南方にある《ベスティード王国》の教会で産まれた。
産まれたというか、拾われたの方が正しいか。産まれてすぐどうやら魔物に襲われて両親は亡くなった……らしい。神父様がそう言ってた。
ちなみに大陸の名前も国の名前も、全部育ての神父様から教えて貰ったのだ。優しいおじいちゃんみたいで大好き。
で、それでだ。……赤子の頃は恥ずかしいからすっ飛ばして、私は今五歳。それで隣に未だ眠ってる彼は八歳。こんなすぐ会えるなんて思わなかった。
心構えもなにも出来なさすぎて子供らしくギャン泣きしたのは記憶に新しい。
私も彼も、この世界で名前は変わらず…容姿は異なれど、魂が彼だと叫んでいたからすぐ分かった。
私はまだ教会からそんな遠くまで行けず……例の神様から授かった神託スキルを使って、せめてこの世界の理解を深めていた。
知ったことその一。
この世界では魔法や魔物が発達していて……電気やガス、水道とかも全部魔力で補われているので生きているものは微量でも必ず魔力を持っている。
知ったことその二。
大まかに人間、獣人、精霊、魔物と居るなかで…個々の種族の特徴がある。その中でも猫の獣人の話をすると……獣人は総じてまず魔力は少なく、その代わりに身体能力が凄まじい。
個人差はあれど遥かに人間を上回るし、太りにくいというおまけ付き。弱点としてあげるならば鋭すぎる感覚が為に大きな音などに弱く……動物としての本質も継いでいるため猫の獣人はマタタビに酔う。
知ったことその三。
猫の獣人で稀少種とされるのが黒猫族と白猫族だ。
魔力が少ない筈の獣人なのに、両者とも膨大な魔力を持ち、黒猫族は攻撃に。白猫族は護りと癒しに特化した種族らしい。
目立ちたくはないんだからそれを何で先に言わなかったんだとキレかけた。
知ったことその四。
この世界には神様が沢山いる。だから色んな人が色んな神様の庇護を持っていることも少なくないが……その中で、庇護を上回る加護を授かって居るのは何らかの都合で異世界から来た者と、神殿に仕え、本当に神が気に入ったものだけらしい。珍しくはあるが取り立てて騒ぐことでもないのは嬉しい限りだ。
もっと色々あるけど、とりあえずこんなもん。……纏める語彙が年齢に引き摺られてロストしてることにしよう。
そんなこんなで、私は彼と再び巡り会った。お互い記憶だってある。なんて素晴らしいことなのか。
………ただ、一つの問題を除いて。
天使のような寝顔を見詰めながら吐息を溢し……つん、とつついてみた。
「ん……はやいね…」
「おはよう、ナオ。……だってそろそろお迎えが来る頃でしょう?」
「あぁ……そっか。…面倒だなぁ、このまま我が儘して残りたい。」
「駄目だよ、一緒に寝るのすら本当は怒られるのに…側近さん達をこれ以上困らせられないし、神父様も困っちゃう。
この国の第二王子様が教会に入り浸るのなんて、噂になったら大変。」
そう、ふわふわの毛並みを持つ白猫族に転生した彼は………この王国の、ベスティード王国の、現国王の第二子。
ナオ・ベスティードとして新たに生を受けていた。
これが彼が望んではいないものだというのだから、彼の強運ぶりに頬が引き攣った。
黒猫は細い尻尾、白猫はふわふわの毛玉的なイメージがずっと根本に。次は側近とか色々人を増やしていきたいところです!