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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
二章 最強も望まない
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第百一節 会話と触れ合い





「よくやった!!!それでこそ妾の子じゃ!!!」




「ちょっと!レンは私のです!!!」




たわわな二人に挟まれ、遠い目をするのは私。シアレスはシャルーに囚われ愛でられてるので戦力外。即ちストッパー不在。胸で溺れそう。



夕食後、入浴を済ませ、明日は揃ってお城行きが決定したのに絶望した後、アーシェにまたネックレスを貰おうとノコノコお祈りをしてやって来た訳なのだが……



飛び付いてくるノーチェよりも速く、アーシェにとっ捕まり、その腕の中でいい子にさせられている。あと私はナオのものなのだけど???



「え、なに。ノーチェはいつも通りだとして、アーシェは何。何事?」



「さぁねぇ……それが私にも検討つかないのよねぇ、そもそも私、そんなに繋がりあるわけじゃないし…あ、今日は上手に力が使えてたわねシアレス。流石だわ。」



「そ、そんなこと……跡だって残っちゃいましたし…」



「真正面からあれほど強烈な魔術を喰らえばそんなの当たり前じゃないの。結界も脆かったし……寧ろここまで残らないで治癒出来るのは現状貴女だけの筈よう?」



「そうだよ、シアレス。悲観しないで。それに薬で時間掛かるけど残らないって言ってたもん。」



「でも、もっとシャルー様の力を強く、上手に扱えてたら……」



「うーん……多分、これ以上は無理かしらねぇ……だって貴女の魂が耐えられない。神の力ってそこそこ負担が大きいのよ。私の力を変質させて権能を貸してるようなものだから…現状が限界じゃないかしら?

それに、もし貴女がどんなものでも護れる結界を、いくらでも張れる、って事になったとしたら───世界のバランスが崩れて拒絶される筈よ。そうなれば私もシアレスもお終い。」



「……世界に拒絶される?」



「そ。異物だと認識されて、世界そのものから……創造神様から力を剥奪されるって事。この世界にはこの世界の法則がある。それを越えない範囲の力を貴女達は神から譲渡されてるだけなのよ?例え堕ちた神から与えられた物だとしても、誰も創造神様には適わない。そういうシステムなの。」



中々に物騒な話だ。……行き過ぎた力は身を滅ぼす、なんて言うけど創造神に滅ぼされるなら確実に終了のお知らせだろう。


勿論そんな情報はノーチェから聞いてなかったので、未だ言い争ってたノーチェにアイアンクローをお見舞いする。




「……あ、違うよ。アーシェがなんであんなにテンション高めだったのか聞きたかったんだ。」



「よくぞ聞いてくれた!!妾だけでなく、宝玉のも喜んで居ったぞ!!!自己犠牲を厭わぬ姿も、危機的状況を覆す咄嗟の判断も!!!!妾はお主が誇らしい!!!!」



「………………良かったじゃない、理由聞けたわよ。」



「………………笑い堪えるくらいならいっそ笑ってくんない?」




自身の子供を褒め称えんばかりに両脇に腕を通され、高く掲げられてぐるぐるり。わざとらしく笑いを堪えてるシャルーにジト目を送ったところで役に立つはずも助けてくれるはずも無く。ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる…………いや、回りすぎじゃないかな?!そろそろ吐きそうなんだけど?!



「ア、アーシェ!ストップ!!!レンの顔色がマズイです!!」



「む、妾としたことが……レン、レン。起きよ。気をやるでない。」



「んへ……鬼畜か……」



柔らかなクッションに降ろされ、急に止まるもんだから余計に吐き気が来た。だというのにペシペシと手の甲で頬を軽く叩いてくるアーシェ。三半規管弱々なんかじゃなくて、普通に速度がヤバかった。あと回数。



世界が回る。気持ち悪い。でも精神体だからなのか、なんなのかよく分からないけど、吐くことなんて勿論出来ない。……向こうで吐瀉物塗れなんて嫌だったしね。いいんだけどさ。


ただ、その分不快感を逃がすことが出来ないわけで。



「あ〜あ……可哀想〜。アーシェったら虐めて〜。」



「ち、違う!少し加減を誤っただけで虐めてなど居らぬ!」



「うちの子を虐めないでくださいよ!!ただでさえ元々脆いのですから!!もう!!!」




ノーチェがついに我慢の限界に到達したのか、柔らかなソファに寝転んでた私はその腕の中へと移動させられた。


絶対渡さないという意志を感じるが、今は動かさないで欲しい……



「……あ、そうだ。アーシェからまたネックレス貰おうと思ってたんだ。……ごめんなさい、壊しちゃった。」



「うん?……あぁ。良い良い。あれはお主を守る為に渡したのだからな。壊れても問題はない。ただ……妾も渡してやりたいんだが……」



「…だが?」



「次に渡すのは妾の力だけではなく、宝玉の力も混ぜた物でな……今は宝玉のの所にあって、渡せないのだ。…恐らく近日中には仕上がるだろう。妾よりも宝玉の力の方が守りの観点では強い。」




「え、私なんか色々ズルしてない?大丈夫?他の人めちゃくちゃ努力してるのにサポート手厚くない??」




「今更でしょう?貴女もシアレスも、転生者はそしたら皆ズルしてるってことになるじゃないの。それにねぇ…そもそも私達の力に耐えられる程度の器の方がこの世界じゃ稀なんだから。いいのよ、利用出来るものは利用なさいな。」




まるで子を褒めるような声色のシャルーに諭され、取り敢えず納得した。

そもそもまぁ、私達って人生二周目だし、最初からアドバンテージが大きいから、それをどうこう言うのも今更な事かぁ。



「まぁ、不満があるわけじゃないからいいや。ナオの傍に行けるようになるならそれに越したことはないし。」



「貴女もシアレスみたいに娶って貰えばいいのに…変に律儀よねぇ。」



「後ろ指指されないように…でしたっけ。レンも加護を得てるんだから、民も納得すると思うのだけど…それに王族の決定に異を唱えるなんて危険じゃないの?」



「んー……北の国は王族が何よりも権力強いんだっけ。この国はね、王族の決定でも民の総意によっては覆される事があるんだよね。何せ強さを第一とする獣国だから。

それに先代の事もあるからさ、婚約者について今面倒なんだってさ。神父様が言ってた。」




ナオやイクス殿下が婚約者を持たずに居られるのはそのおかげでもあるのだが……まぁ、少なくとも候補の令嬢達は居るのだろう。


例え居たところでナオの隣に立つのは私なんだけどね。




「ま、いいんじゃない?それが貴女の生き方なのなら。私はシアレスが幸せならそれでいいし!」



「シ、シャルー様っ…」



「そういうブレないところ嫌いじゃないけど……巻き付くのは止めてあげたら…?」



流石にずっとガッチガチなシアレスが可哀想なので声を掛けてやれば膨れた後に離れて行った。

といっても、人型になって隣を陣取ってるのだけど。…シアレスってば緊張と恐怖で可哀想なことになってたのでシャルーは加減ってものをいい加減学んだ方がいい。



……いや、ノーチェもそういえばスキンシップ過多だな…アーシェもなんだかんだ触れ合ってくるし……ベタベタしてないのレイルくらい?…いや、見えないところで二人でくっついてるのかもしれないけど……それは薄い本になってしまう。よくない。



「レン?何を一人で百面相してるんですか?」



「いや……神様って皆そんなにベタベタ触れ合うんだなぁって…で、レイルはあんまりナオにくっついてなかったから、二人きりじゃないと恥ずかしがって触れ合えないからなのか、元々レイルがそんなにベタベタしないタイプなのか悩んでた。」



「………後者ですよ何考えてるんですか、破廉恥な!」



「触れ合う=破廉恥に繋がるノーチェの方が破廉恥。そんなに真っ赤になることある?…あぁ、夫婦神だから色々思い、むぐぅ!!!」



「ち、が、い、ま、す!」



「ふむ…妾達に触れられるのは嫌だったか?」



ノーチェの手によって口を塞がれてしまったが、問われたので覆われたまま暫く思案する。別に嫌悪感を抱いた事は微塵も無いのだが…強いて言えば何故、が先に来る。


覆っていた手を無理矢理引き剥がし、その手に顎を載せながらアーシェを見る。




「別に、嫌ってわけじゃないよ。そもそも触れられたくなかったら反発しまくってる。…ただ、何でかなぁって思っただけ。特に理由がないならそれでもいいし。」



「ふむ……妾は単純にお主が…人間が愛おしいからだな。人の身は脆い。だからこそ細心の注意を払って触れてはいるが…人間の熱は心地いい。」



「私もアーシェと一緒です…誰彼構わず、という訳ではありませんけど…触れていて、安心するんです。ここに居る、壊れていない…そんな安心が。」



「私は…シアレス限定かしらぁ?…あぁでも、気に入った人間には多少触るわよ?ちょっかい掛けるの楽しいもの。」



「そんなとこだと思ってた…」




三者三様に答えが返ってきたが…シャルーのは予測通りだった。シアレスすら表情に出てるんだから、シャルーの性格は本当に分かりやすい。


そもそも私の“神様はそもそもベタベタしない”というのだって前世の偏見だし、此方の世界がどうなのかは分からない。

というか、私の国は八百万もの神が居るし、外国の最高神は星座の数だけ浮気話があるしで、もうしっちゃかめっちゃかなのだけど。



肩を竦めたところで視界が白んで来た。これが戻る合図。名残惜しそうに触れるノーチェの手を甘んじ、瞬きをすれば…真っ白空間から、巨大な十字架が捧げられた教会の一室に切り替わった。


一気に訪れた静寂に、二人揃って吐息を溢した。…あの賑やかさは嫌いじゃないが何せスキルを使ってるので私の身体は当然疲労感が溜まるし…シアレスも、連れて行ってる形とはいえそれなりに負担が掛かってるのだろう。酷く眠そうだ。




「ん……もう休もうか。明日はお城だし。」



「えぇ…なんていうか、捕縛までがあっという間過ぎて…気持ちが追い付けてないけど……お城…」



「怖い?大丈夫、変な事言う奴居たら黙らせるから。拳で。」



「火力が強いのよ、せめて言葉にして。……ふふ。怖くないわ。貴女もガルシア様も居てくれるもの…不思議ね。本当にちっとも怖くないの。アレフ殿下に会ったとしても、何とかなるんじゃないかって思っちゃう。」



ふわふわと幸せそうに笑うシアレス。……嘘を着いてるわけでは無いのだろう。そうも安心してくれてるのなら、私も嬉しい限りだ。



……明日ガルシアにこっそり教えてあげようかな。




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