表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
二章 最強も望まない
119/122

第九十九節 一時休息




結局、神父様に怒られ、私はまだ未成年なのと魔力の回復が芳しくないので拷問は許可を得られず……何でも、神父様のお屋敷で神父様が直々にするらしい。あと何かフロウも着いて行ってしまった。文字通りルシェシラルトは引き摺られて行った。ズボンとかボロボロになりそうだなぁ。可哀想。


他の貴族はガルシアが引き受け、ユア様達も一緒に城へ行ってしまった。勿論、証言者、という事でクリフト達も保護される事になった。ルノーを先頭に魔獣達も連れて行ってしまったが…なぜか、ジュエライトだけはこの教会に残されている。今は部屋の片隅でクォーツ達と遊びながらまったりしている。




「クリフト達、ジュエライトも連れて行ってあげたら良かったのにね。」



「あの子にストレスが掛かってしまうから止めたんじゃないかしら。城で保護されるって事は兵士含め色んな人の視線に触れるし…好奇心から近寄ってくる人も居るでしょうから。」



「そっかぁ……他人に力を使うのは慣れた?」



「えぇ、だいぶね。…ただこれ以上は厳しいかも。私自身なら完治できるのに…明日薬を届けてくださるそうだから、跡は残らないと思うわ。」



「それなら大丈夫。寧ろ短時間でここまで治せるのが凄いんだよ。」



日も落ち、夕食はリムネルが作ってくれるそうだからその後ろ姿を眺めながらシアレスに残りの傷を治してもらっていた。

多少火傷特有の傷跡があるが、寧ろ焼け爛れ、時間の立った状態をここまで治せるのが異常なのだ。…やっぱり神の力って凄いなぁ…もしかしてその力の影響で魔力が分かりにくくなってたりするのかな。


何はともあれ、一番良かったと思ったのは痛覚麻痺が解ける前に治ったことだ。


痛覚麻痺の難点は、常時麻痺を掛けていると体が適応して自然治癒してしまう事。

あくまで痛覚だけをシャットアウトしてる高度な魔術なので、魔力量を増やせばいいとかでは無い。そんな事したら普通に全身が麻痺状態になる。


だから麻痺の時間の目安としては3時間〜半日と言われている。


ここまでの怪我は今まで無かったけど…火傷とかって結構後まで残るし、お風呂で絶叫したのは両手で数えられる回数を越えた。…うん、痛みに慣れるのも訓練のひとつだから仕方ないんだけどさ……



「終わったか?」



「えぇ、これで一通りは大丈夫。」



「ん。……チビ、こっち来い。」



「私チビじゃないんですけどぉ…………うん?いや、四人の中で一番チビ…?」



「いいから、早く。」



何故かソファでぼんやり私を眺めてたアヴィリオに呼ばれ、シアレスと共に首を傾げ…大人しく近寄る。

服も散り散りだから着替えに行きたかったんだけどなぁ…なんだろ。



「…うわっ?!」



「ちょっと暫くここにいろ。」



「まぁ!」



ふわ、と足元が浮いたと思ったらアヴィリオに横抱きにされるように抱えられてしまった。キラキラと目を輝かせて興奮してるシアレスにはジト目を送っておいた。


アヴィリオってば近くで見ても顔がいいな…拒めない…



「何すんの。急に。」



「悪い。………ちょっとだけでいいから、このままで居てくれ。」



ぎゅう、と肩を寄せられ、アヴィリオが顔を下げてしまったからその表情は見えない。アヴィリオの手って案外大きいんだなぁ…


あとそんな甘えた声出すの狡いと思う。シアレスも別に空気読んでリムネルの所に離れなくていいからそのまま居て欲しかった…あ、二人でニヤニヤするんじゃない!



「も〜……なぁに。どうしたの?さっき落ち着いてたじゃん。」



「……改めて、落ち着いたからこそ………やっぱりお前を殺し掛けたっていうのがある。…儘ならないな、こんな感情。」



「んぇ、終わったじゃん、その話……まぁ、こうしてれば落ち着くならいいけど………生きてるよ。こんな事で死ぬはずないでしょ、私が。フロウもその場に居たんだよ?」



「分かってる。…だがそれとこれとは話がな…」



と、話を遮る様に教会の扉がノックされた。


耳を立てた私を見てかアヴィリオも言葉を止め…それから気を抜いたようにまた私にグリグリと頭を寄せてきた。



「兄貴だ。シアレス、悪いが入れてやってくれ。」



「大丈夫?また幻術とかじゃない?」



「精霊から知らせが来たから問題ない。」



なるほど、それだったら確実にアルトゥールだろう。…いいな、目に見えない連絡手段って。いや、エルフ同士なら分かるのかもしれないけど。


シアレスが部屋を去ってほんの数分。ドタドタと走る音が聞こえ……慌てた様に顔を出したのはアルトゥール。服がちょっとズレてる。



「アルトゥー…へぷっ!」



「あぁ、良かった…!貴女にもアヴィリオにも大事がなく…!!」



「ちょ、え、無視?レンちゃん潰れちゃうんだけど…?!」



ぎゅうう、とアヴィリオごと抱えるように、膝を着いて抱き締めてきたアルトゥール。遅れて顔を出したシアレスも苦笑いしている。…助けて欲しい。


城からここまでどうやって来たのかとかは置いといて、隙間から脱出しようとするも、エルフ二人に阻止され、一向に出られない。こういう時ばっかり同じ様な行動して…!!!




「ちょっとアンタ達、レンが出たがってるでしょ?虐めないの!」



「そうだよ!はーなーしーてー!!」



「ふ…ふふ。駄目です。ほら、私の顔好きでしょう?好きなだけ眺めてていいから動かないで下さい。」



「俺のも、まぁ、少し恥ずかしいが…いい。…だからもう少しだけ居てくれ。」



「ぐっ…この美形どもが…!!」



至近距離でこの二人の顔は狡い。普段ツンケンしてるアヴィリオが眉を垂れさせて子犬のような顔してるのがもっと狡い。


リムネルと視線を交わし、諦めた顔をした途端。


私をふわりと風が包み、二人には勢いよく水がぶっかかった。


水も滴るいい男…は、さておき。拘束が緩んだ所で抜け出した。二人は呆然としてるのがちょっと笑える。



「…デュー。クォーツ。ありがとうね。」



肩に止まった二人に声を掛ければ両側から身を寄せられた。



フロウがそういえば神父様に着いていく前に何かこの二人と話してたけど…どうやら、フロウの代わりに私を守る役割を担ってるようだ。

まぁ、確かにフロウが居ればアルトゥールが突っ込んでくる前に私は救出されてたしね。



「頭は冷えたかしら?シアレス、悪いけどタオルを…って、もう持って来てくれたのね。」



「えぇ、少し前から水球があったから……レンは濡れてない?」



「うん。クォーツが風で包んでくれたからびしょ濡れになったのあの二人だけの筈だよ。…器用だねぇ、君。デューもありがとう。二人ともいい子いい子。」



何処か自慢げな顔をびしょ濡れの二人に送るデューとクォーツをめいっぱい撫でてあげ、私を囲いこんでた二人を見る。



「も〜…この過保護!!めっ!!」



「仕方ないじゃないですか、私、城に居て情報が少なかったんですよ?リムネルから簡潔な情報しか流れてこず、ディグラートさんに後を任せて急いで来たんですから、もう少しくらい大目に見ても…」



「アタシ、レンならピンピンしてるって精霊に言ったはずなんだけど。」



「おや、つい焦って聞きそびれてしまったかもしれませんね。」



「うわ、白々しい…見た?シアレス。アルトゥールってば顔は綺麗だけど本当お腹の中真っ黒だからね?気を付けなよ?」



「貴女が愛されてるって事しか伝わってこないのだけど…ふ、ふふっ、良いわね。この空間。とっても優しくて、暖かくて…あら?アナタもつられて来ちゃったの?」



いつの間にか近くに寄ってシアレスの服を食み、気を引こうとしてるジュエライト。どうやら彼女にも気を許したらしい。


アルトゥールも居るのに、珍しい。


でもなんだか角の宝石が輝いてるのでジュエライト的には今のこの空気が好きなのかもしれない。



「兎も角、二人とも無事で良かったです。…一番心配してたのは君なんだけど…うん。レンのおかげで大丈夫ですね。」



「ん。……悪い。兄貴やリムネルにとっても大事な弟子なのに傷付けた。」



「私にとっても、リムネルやアヴィリオにとっても大事で可愛い妹の様な子。だから生半可には鍛えてませんよ。…でも君は弟子との別れは初めてでしょう。それがあんな形にならなかったのは良かったですが…傷付けた、という事実が心の傷にならないか心配だったんです。」



「アタシも止められなかったとはいえ、実際手を出したのとは違う。…でも良かったわ、アンタにとっての初弟子がレンで。アタシやアルトゥールの心配すら跳ね除けてしまうんだもの。」




お兄ちゃんムーブしてるアルトゥールに珍しく素直に撫でられてるアヴィリオを視界に入れつつ、シアレスの背中を押してキッチンの方へ逃げた。


賞賛は嬉しいけど…何せ恥ずかしい。私からしたら師匠を守るのくらい当然の事だし、アレくらいなんて事はないし。…ただ、ちょっと珍しく頬が熱くなったからあの場には居られない。


それに気付いたのか、クスクスと楽しげに小さく笑うシアレスの背を柔く叩いて笑うな、と主張するもそれすら彼女にとっては愉快らしい。



「貴女って、可愛い人なのね?やっぱり貴女と居て退屈なんてしないわ。」



「私は元々可愛いですぅ。…もう!ご飯にしよ!ご飯!アルトゥールの分も今作るから!」



「おや、良いんですか?ではお言葉に甘えて。」



「お星様に人参切ってあげるから恥ずかしがってね!」



誰が見てもご機嫌なアルトゥールにもはや八つ当たりのように人参を星型やらハート型にして提供したが……もう一人の師匠はアヴィリオみたいに突っかかってくるようなタイプなんかでは勿論なく、美味しそうに食べられた挙句、同じものを食べてるのにあーんを強制された。


明日神父様に言い付けてやるしかない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ