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まぁ、転生したからといって美少女になりたいとは限らない  作者: ゴリラの華
二章 最強も望まない
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第八十二話 ありふれた朝2

大人なジャックちゃん来ました、優勝





「レンーーーー!!!!!!」



「シアレス、廊下は走らない。」



「あ、ごめんなさい。つい……じゃなくて!!」



「朝の挨拶は?」



「おはよう。……だからそうじゃなくて!聞いてってば!」



「はい、おはよう。…とりあえずお水飲んで落ち着きな。ちゃんと話聞くから。」




朝食を終え、シアレスが起きてくるのを待ってる間フロウの毛を整えて居れば丁度一時間経った頃、ドタバタと音を立てて降りてくる物音を捉えた。


神父様は執務、アヴィリオとリムネルは二人とも二度寝すると言って部屋へ戻っていった…ベドは元気そうなのでジュエライト達と遊んで貰ってる最中だ。皆のお兄さん的ポジションだもんね。

アヴィリオの言った通り、リムネルの寝起きはあまり良くはなかった。あまり寝れなかったのか、隈が出来てたのには吃驚した。初めてみたんだもん。



リムネル、本当に寝不足の時めちゃくちゃドスの効いた声出るんだなぁ…漢って感じが物凄くしたのでそっち路線もありだと思う。



で、私もお休みなのでまったりだらだらシアレスを待っていたら息を乱しながらシアレスが寝間着のまま降りてきた。

言われるままコップ一杯の水を飲み干し、一息ついてからまた詰め寄られた。




「レン!!髪!肌!!」



「うん、言いたいこと分かった。…凄いでしょ、リムネルと私特製の美容品。そのうちシアレス専用のも作ってあげるからね。」



「っ~~~~!!ほんっと大好きよ貴女!」



「ん、とりあえずご飯食べて着替えようね。シアレスの取っといてあるから。」




感極まって抱き付いてくるのをそのまま引っ付けてシアレスの分の朝食を温め直す。さりげなく私を吸うんじゃない。

べりっと背中から引き剥がし、椅子に座らせる。温めるのを待たせてる間に目覚めの紅茶を用意しておこう。蜂蜜をたっぷり入れて。


温め終わったオムレツ達を並べれば、またシアレスの瞳が輝く。……昨日の夕食もだったけど、暖かい食事は久しぶりだと言っていた。毒味を終えた頃には料理なんて殆ど冷めているし…只でさえマトモな扱いでは無かったのだ。侍女達も申し訳無さなど存在してないだろう。




「ん~!!美味しい!今日もレンが作ったの?」



「んーん。今日の当番は神父様。基本的に皆で家の事はローテーションでやってるんだけど…シアレスは客人だから気にしなくていいよ。暇だったら手伝って貰うかもだけど。

あとお祈りに来た人に何か聞かれても私と神父様の知人で遊びに来てるって事で通して。根掘り葉掘り聞く不躾な人は少ないと思うけど……不審者とか、居ない訳じゃないから。」



「分かったわ。…教会で不埒な真似をするなんて恥ずべき事なのに…」



「うん、罰当たりだなぁとは思う。…あとは私やリムネルの従魔以外にもスライムとか紛れ込んだりしてるけど、無害だから気にしないで。暴力振るわなきゃ反撃もしてこないし、掃除手伝ってくれるから。」



「凄いわねぇ…スライムって昨日見たあの透明なヤツでしょう?私の地方ではスノースライムって本当に雪玉みたいな子しか見たことなかったから、ちょっと吃驚したわ。各地でスライムって異なるのねぇ。」



「スライムの上位種じゃないかな。環境適応して新しいスキル持ってたりとか。」




そこで会話を一端終え、シアレスは食事に集中し出した。口に物が入ってるときに喋るのは良くないもんね。

シアレスが食べ終わるまでは私も手持ち無沙汰になるので、ソファに腰を降ろしてフロウを手招く。


食器洗いも終わってるし、お洗濯も干すのをクォーツ達が手伝ってくれたので終了。…いい天気だし、お布団も干そうかなぁ。シアレスとお喋りとか明日の予定を組んでもいいし、中庭でお昼寝するのもいいしなぁ…




「キュウ?」



「ん?…なぁに。ちょっと考え事してただけだよ。君も好きに過ごしてていいからね。」



「フォン。」



「うん。この子があまり私と離れるようなら着いていて上げてね。お祈りに来た人も居るだろうから聖堂には行かせないように…あとは結界の外はダメ。

皆も、少しこの子に気を配って上げてね。末っ子みたいなものだから。」



ぼんやりしてたと思ったのだろう。気を引くために頬杖ついてた袖をはみはみしてくるジュエライトを片手で撫で、膝に顎を乗せて見上げてくるフロウに同意する。


勿論ついでに他の皆にも伝達しておく。…ベドに関しては既にお兄ちゃんムーブなので問題ないし、デューやクォーツ達も私が気に掛けてるのを分かってるから異論はない。既に仲のいい二羽なんかはジュエライトに乗ってるし。




「…ねぇ、ジュエライトの意思は分からないのよね?よくそこまで仲良くなれるわね…」



「まぁ、全部が分からなくてもある程度は行動で察せる。今のところ私が一番気を許されてるけど、フロウの方がやっぱり安心するみたいだし、フロウと一緒に居てくれるなら私も安心する。

フロウなら私が居なくてもその場で最適な判断がつくだろうし、何より実力も長く居た分信頼してる。他の子達も弱い訳じゃないけど…守りの観点で言ったらフロウが一番なんだよね。


それに、フロウは私が到着するまで絶対守りきれるって自信があるもん。従魔を信じるのも主人の役目だよ。」




ジュエライトの警戒はだいぶ緩んだが、それでも植え付けられた恐怖心を取り除くのは簡単じゃない。


切っ掛けさえあれば取り除けるだろうけど…その切っ掛けが今は思い付かないし、わざわざこの子を危険に合わせる必要もない。


フロウも私の考えが分かっているので珍しく私から離れることに不満を洩らさない…それどころか自らジュエライトの守りを買って出てくれるいい子なのである。



他の子達も、能力を比べたい訳じゃないけど、適材適所という言葉があるように、デューやクォーツ達では守りは薄い。


攻撃に出るのならば寧ろ頼りになるんだけど…ジュエライトを守りながら、というのは難しいだろう。フロウ以外の子達の戦闘スタイルは素早く撹乱しながらの攻撃であって、タンクの役割は果たせない。


フロウが特別、というのはその意味もある。


魔術師として動くのならば、フロウの防壁ほど信頼出来るものはないし、回避もフロウが走ってくれるので対象に集中してられる。その相性のよさはリムネルからもお墨付きを頂いてるのでフロウは手放せないし手放すつもりもない。



従魔術師としては勿論他の子達も有能だし、制空権を持ってる以上私が指示を出さずともそこらの相手に負ける事はない。

クォーツ達の目を借りれば探索は捗るし、デューの目を借りれば捜索困難な水場も貴重な水草を探したり、沈んだものを探すことだって出来る。デューの攻撃の威力も凄いしね。クォーツ達は本気の戦闘に至ってないけど、レベルは高いはず。



やはり適材適所という他ない。…でも皆大好きなことには変わりないし、弱いから、なんて理由で手放すことは絶対しない。




「……きゅぅ…」




「ふふ。お腹を満たしたから眠くなったの?成長期なのかな。好きなところで寝ておいで。……ベド、着いてて上げて貰ってもいい?フロウも。」



主人も寝てて暇なベド。ジュエライトの方を気にしてたので声を掛ければ嬉しそうにジュエライトに身をのそのそと寄せた。フロウも一応着いてて貰うけど……ベドだけで足りそうかな。まぁ、二人でのんびりお喋りとかしておいで。



三匹を見送ったとほぼ同時にシアレスが食べ終わり、汚れた食器を水に浸けておく。昼食の後片付けと一緒に片したらいっか。



「ご馳走さまでした。毎日こんなに美味しいものを食べられるなんて羨ましいわ。」



「シアレスだっていつもはお高い料理食べてるんでしょ?婚約者なんだし。」



「……レン、お高い料理が全部美味しいとは限らないのよ。しかも庶民の味に親しみがあると余計に。」




すん、と冷めた目で虚空を見詰めるシアレス。……そんなに美味しくなかったのか…


確かに前世、高い料理よりもファミレスとかの方がずっと美味しかったりとかしたし、珍味が美味しいとは限らなかったし…



「ガルシアに言って食生活せめて改善して貰いなよ。」



「そんな、恐れ多いわ。それに食べれない訳じゃないし、たまに凄く美味しいのがあるのは本当なのよ。バランスだって考えてくれてるだろうし…」



「食事のバランスがいいのと美味しい不味い問題は別。私が言っとく。

あと今日の予定なんだけど…今日もお休み。シアレス、疲れ取れてないでしょ。無理は駄目。アヴィリオ達も二度寝決めてるし、神父様はお仕事中だし、好きに過ごしてていいよ。二度寝してもいいし、まったり過ごしてもいいし。


お昼寝するなら中庭おすすめだよ。お日様ぽかぽかで幸せになる。」




「そうね……目が覚めてしまったし…どうしようかしら。貴女は何をして過ごすの?」



「んー…魔力が万全じゃないけど、これ以上ダラダラしてたら鈍るし、ジュエライトの事で誰か来るらしいし表で少し体動かしてようかなって。」



「じゃあ私それを眺めてるわ。少し私も体動かしたいし。」



「分かった。じゃあ着替えたら外でね。」




あくまで体が鈍くならない程度の運動に収めて置かないと、後々休みを延長されかねない。体を温めたあとはデュー達と感覚共有の訓練でもしようかな。


ぐーっと体を伸ばし、ソファから立つ。案外私も疲れというか、魔力が不足してる分妙に気だるさが残ってる。普通、魔力がすっからかんになるまで魔術は連発しない。底をつけば咄嗟の時に動けないし、回復も遅くなる。

この土地が回復に特化してるから今こうしてピンピンしてるけど…魔力切れの症状は本当に酷いらしい。起き上がるのも困難な人も出るくらいだ。…そんなときは眠るに限る。あとご飯。



シアレスと合流して外に出て…空の眩しさに目を細める。そろそろ夏が近い。あの空に花火が咲いたら、それはもう絶景なのだろう。…今のところ見たことはないが。




「暑いわねぇ…」



「え?そう?………あぁ。体の基準がまだ北の国なのか。」



「彼方はどこも殆ど雪が積もってるし…私の居た村ですら、年に晴れの日は数えるくらい。曇ってるのが殆ど。…此方は空が蒼くて、緑が多くて落ち着くわ。」



「森に面してるから余計に緑が多いでしょ。…北の国だと森なんかも少ない?」



「向こうの森は氷柱が木の葉の代わり。さわさわ木々が擦れる音はしないし、するのは氷同士がぶつかった少し高い音。」



「それはそれで綺麗だけどなぁ。今度案内してよ。」



「えぇ。貴女が国を訪れた時には必ず。…ガルシア様もお許しになってくれるでしょうし。」




ガルシアの名を呼ぶとき、シアレスは物凄く嬉しそうな顔をする。…誰が見ても好きなんだなぁ、という優しい顔。


気を許してくれたから見せてくれてるのだろう。…そうだといいなぁ。


ぐっ、ぐっ、と体を数回伸ばして、怪我のないよう解す。



シアレスにもちょっと手伝って貰おうかな。




悪役令嬢ものも書こうと思ってますゴリラです

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