第一話 転生へ至る
初up、時間が空いてるときにちょこちょこ更新したいところです、、
私は、ごくごく一般的な女の子だった。
いや、それは嘘だわごめん。世の中量産型女子が増えてる中、全く揺らがずオタクの道を行くし、仕事の休憩時間にがんがん漫画読んでる。
それでも、“一般的”な女の子には含まれるだろう。一般的というのが私のものさしでしか測れないけれど。
ごくごく普通に生きて、親と衝突して、友達と遊んで、恋をして……ただの女の子だった。
思春期になれば沢山女の子らしく夢を見た。いつか素敵な王子様が、とまでは行かずとも……誰だって想像くらいしたことあるでしょ?他の世界に呼び出されて、とか。実はどこかの国の王族の血縁で、とか。カッコいい転校生が自分に一目惚れして、とかさ。
大人になったら分かる。なんて痛い妄想なのだと。現実万歳。
黒歴史を量産してしまった過去を経て、仕事につく頃にはそれはそれは落ち着いた。真っ当な恋をしたというのもあるだろう。
元の気質か、生まれた星座か。堕ちるなら共にどこまでも堕ちてしまいたい程愛していた。
そして愛されていた。
それは、誰かが息を吐くのと同じくらいの時間で。
それは、誰かが血を吸う蚊を潰すように呆気なく。
本当に簡単に、それでいて突然、終わった。
原因はなんだっけ。じくじくと熱を持ち、薔薇の様に溢れていく血はなんでだっけ。
熱いのに寒い。痛いと叫ぶことすら億劫で、人が死に近付くと声も出せなくなるのかと頭の片隅が冷静だった。
痛くて苦しくて、涙が止まらない。もっと生きたかった、もっと幸せを感じたかった。もっと………愛しい貴方と、時を重ねたかった。
親より死ぬだなんて三途の川行きだろうか。ああなんて呆気ない。
これが、月嶺蓮の締めくくり
「…る……で……」
なのに微睡む様な心地の中、何かが聞こえる。
痛くも苦しくもなく、ただ真っ暗。目を閉じているからなのかもしれないけど………なんで痛くないんだろう?
「目……るの……」
もう一度、聞こえた。
「目覚めるのです、月嶺蓮。」
今度はハッキリと。名前を呼ばれてしまえば悲しき社畜の性。勢いよく返事せんばかりに両目を抉じ開けた。
目の前にはそれはそれは優美な女性が。……いや、もっと簡単に言おう。
なんか光輪やら羽やら白い軽そうな布やらを纏ってる女神っぽい人が居た。確実に女神様だとは思う。浮いてるし。
柔らかく微笑む様はもはやそれだけで上質な絵画やイラストを見たのと同じくらい満たされた心地になるし……やっぱり女神様だなこれ。
「………自分は、死んだんですか?」
実感は沸かないけれど、意識ある夢の時ともまた感覚が違う。これでも転生系の漫画だって何冊も読んだ。こう聞くのがテンプレ。むしろテンプレに沿わないとちょっと何したらいいかわからない。
「はい。理解が早くて助かります。……わたくしは貴女方が神と崇める存在。人々の営みを見守り導いて来ました。勿論貴女のことも。
ですから、単刀直入に申し上げます。
貴女に、異世界へと転生をして頂き、そこで今度は寿命尽きるまで生きてほしいのです。」
「あ、ハイ。」
余りにもテンプレ通りで、身構えた此方が急にアホらしくなった。
きりっと表情を引き締めている女神様は多分、私がどういう生き方をして、何を嗜み、どういう思考かさえ見抜いて言ってるのだろう……多分。
異世界転生。
それはそれは、ほんの数年前の私が聞けば泣くほど喜んで食い付いただろう。
もう反発できるけど、小さい頃は意思さえ捩じ伏せる親。ぽっちゃり型がゆえに学校で陰口やらを叩かれるストレス……初めてした恋は自然消滅という形で終わり……結果、それらが全部積もりに積もって、心はぼろぼろだった。
何度生を絶とうとしたか、何度己は要らない存在なのだと涙したことか。
けれど、それは過去のこと。
過去を経て、今の私は形成されている。
意思を捩じ伏せられれば、それを上回る言葉で跳ね返し。太っていると馬鹿にされれば胸があるから無い奴の僻みと傷付くこともさほどなく。何より………一度途切れた縁をまた辿って、追い掛けてくれた愛しい人が居る。それだけで幸せだった。
だから、
「異世界転生なんかより、私は今愛してくれる人と共に生きたかった。」
涙したって死は変わらない。けれどポロポロ落ちてくるものだから止まらないし……ああ女神様も困った顔をしてる、ごめんって。
「きっと、あちらの世界にだって素敵な人が見付かります……願うなら、それこそ容姿端麗眉目秀麗、剣も魔法も完璧な美少女にだって出来ます。だから、その、……泣かれると困ります~~!!」
ぴわ、と泣き出した女神にこっちが引いた。
ぐずぐずと子供みたいに泣くもんだから、すん、とヒートアップしてた感情も冷めはじめ……あやすことに専念した。
鼻を鳴らしながら、「ごべんなざ…」とか、「わだじが、もっどしっがりしてれば…」とか聞こえる。神様歴が短いのかもしれない。彼女は赤子。そう考えた方が疲れないことに気付いた。えらいぞ自分。
宥め、励まし、ようやく最初の方の威厳を取り戻したのか……赤い鼻のまま、もう一度説明をくれた。
曰く、異世界へと行くことは変えられない。しかし、輪廻を外れる事は何やら大事らしくその代わりにギフト……神様が何でも願いを叶えるというものらしい。
例えば、剣や魔法がありきたりな世界だから、その能力値をチート級にしたり、王族の娘や息子として生まれたり…不老不死だって、叶えられるそう。
チート級の願いや世界のバランスを崩しかねない願いは一人につき一個。
その代わりどこどこの生まれになりたいとか、静かにもう一度やり直したいとか……その程度の願いならばいくつでも許容できるらしい。
判断基準は担当する神様によるそうだから…結構ガバあったりするみたいだ。しっかりしてくれ。
「不老不死に関しては……そうですね。おすすめはしません。結局願った人も……殺してくれ、と乞うほどまでに衰弱してましたから…」
「そう、ですか………でも、もう願いは決まってるんです。」
魔法や剣が当たり前。魔物や獣人、勿論人間だっている。
そんな世界に飛ばされて、私が願うことなんてたった一つしか存在しない。
まだ赤みの残る瞳をくしくしと擦っていた女神様は驚いた様に瞬くも、すぐにふんわりと微笑んだ。
「それでは異世界へと旅立つ事を承認したとみなします。……願いを。」
「私の願いは、長く生き不死の技術に最も近い獣人……それも黒猫の一族への転生と、
愛しい彼……葛葉直を、死んだときに此方へと転生させること。」
次回はちゃんとほのぼの生活。赤子をすっ飛ばして大体小学高学年くらいかな、