戦闘終了
刹那彼女が【奴隷】であることを示す 隷属の首輪 が弾け飛ぶ。そして、目の前にいた少女が消えた。
「なっ!!」
あまりのことに驚嘆していると、彼女はいつの間にかゴブリンの目前にまで迫っていた。
次に僕が聞いたのはゴブリンの頭が粉砕されるゴシャッという音だった。それも七回を数えた後には辺りは静寂に包まれ、聞こえるのは彼女の荒々しい吐息のみになる。
「ハーッ ハーッ」
「おい 大丈夫か?」
「はい 落ち着きました ですが、いきなり動かせなかったはずの体が動かせるようになって…」
そこまで言うと彼女は気を失い倒れ込んできた。慌てて体を支えるとご飯は食べさせてもらっているはずなのにやけに体重が軽いことに気づく。仕方がないのでクエストクリアは断念し宿に戻る。結局彼女の目が覚めたのはその日の夕方だった。
「んっ」
「おっ 目が覚めたか」
「ここは? たしかゴブリンの群れに襲われて…」
「ここはカワセミ亭。 僕がお世話になってる宿だよ。さっそくで悪いんだけどちょっとステータス画面を確認してもらえるかな?」
「ステータス画面ですか? はい分かりました。」
彼女が目を閉じ数秒後
「嘘ッッ 職業が【奴隷】じゃなくて【拳闘士】になってる いったいどうしていまれ持った職業は変更不可能なはずなのに」
その言葉で僕の仮定は確信に変わる。間違いない。【職業斡旋師】は他人の職業を変更できる能力を持っている。だが、あのとき聞こえた「職業適性100%」を加味して考えると、どんな職業にも変更可能な訳じゃないらしい。
「なんでここだけ前世と似通ってるんだか」
「なにか言いました?」
「いや なんでもない」
と、ここまで来てまだお互いに自己紹介していないことに気がつく。
「とりあえず自己紹介しようか 僕の名前は若林優斗気軽にユートって呼んでくれ」
「分かりました 私の名前はアーニャです それにしても、なんでいきなり職業が変わったんでしょう?」
彼女は上目遣いで質問してくる。戦闘中は気がつかなかったが、彼女は小動物を連想させる可愛らしい顔をしている。自分の職業のことは伏せ答える。
「さあね 僕にもよく分からないよ えーと、アーニャ?ヘイストン?」
「アーニャと呼んでください」
「分かった」
「ところでなんで私の家名がヘイストンだと分かったのですか?」
!!しまった。職業変更のときにフルネームを知ったのがアダになってしまった。
「いっいや さっき自分で言ってたよな」
思わず声が裏返ってしまった。
「そうでしたか? まあそういうことにしておきましょう」
アーニャは不敵な笑みでこたえた。
こいつ、薄々感ずいてるな。